生しいたけ王国・徳島
木材屋がつくる“侍”の味

生しいたけ王国・徳島 木材屋がつくる“侍”の味


開けてビックリ! しいたけの玉手箱

贈り物を選ぶのって難しいですよね。ありきたりでは嫌だし、インパクトだけでもだめ。贈る相手に喜んでもらいたいし、驚いてももらいたい。そんな気持ちはありませんか?

それなら「しいたけ侍」はいかがでしょう。“拙者は阿波の国のしいたけ侍と申す。煮るなり焼くなりお任せ致し候”と、キャッチコピーもユニークな生しいたけでござる。

サプライズは届いたときから始まります。包装紙をほどいて現れるのは立派な木箱。表には<阿波の舌鼓 しいたけ侍>というインパクト大な文字。「箱入りのしいたけ?」と期待感が高まったところでふたを開けてみると……、まるでお手本のようなビッグサイズの生しいたけがドーン!

木箱にギッシリに詰まった生しいたけ
▲美しい生しいたけがミチミチギッシリに詰まっています。

「すごい!」「本物?!」その見た目に思わず声が上がります。直径はおよそ8センチ大。手にしてみると、ますますテンションが上がります。

子どもの両手サイズのしいたけ
▲普段見慣れないビッグサイズの生しいたけに子どもも大喜び。

この圧倒的存在感を放つ「しいたけ侍」を生産しているのは、「新野(しんの)木材」。徳島県の南部、桑野川が流れ、四方を山に囲まれた阿南市新野(あらたの)町で30年以上に渡り、菌床しいたけを育てています。

「しいたけ部門のスタッフは45名います。1日約1トン収穫して、年間の収穫量は350~400トン程度でしょうか」と教えてくれたのは、代表取締役の新野(しんの)哲朗さん。

新野哲朗さん
▲「収穫も箱詰めもすべて手作業です」と新野哲朗さん。

太陽の日差しがまぶしい朝、「新野木材」ではスタッフの人たちの賑やかな声とともに高く積み上がったコンテナが次々と作業場に運び込まれていました。覗き込むと、収穫されたばかりの新鮮で大ぶりな生しいたけがゴロゴロ。

コンテナいっぱいのしいたけ
▲収穫は毎朝。お盆も正月も休みはありません。

傷をつけないようにひとつひとつ丁寧に収穫された生しいたけ。作業場ではさらに大きさや形ごとにひとつひとつ選別。袋や箱に詰められた後、県内外へと出荷されます。

手作業による選別作業
箱詰めされた「しいたけ侍」
▲スタッフの手作業によって選別、箱詰めされた「しいたけ侍」。

木材くずがつないだ新たな縁

「新野木材」はもともと1950年創業の木材会社です。県南や高知から仕入れたシイ、カシ、ナラ、クヌギなどの広葉樹をもとに、紙の原料となる木材チップを製造、製紙会社に納めていました。しかし、安価な外国産のチップが出回るようになり需要は減少。

「製紙会社に木材チップが売れなくなってきてどうしようかと考えていた頃、しいたけ業界との出会いがありました」

広葉樹の原木を分別中
▲集荷した広葉樹の原木をリフトで分別しているところ。

1980年代までしいたけ業界は原木栽培が主流でしたが、原木の高騰により1980年代後半に県内でも一部の人がおが粉(木の細かなくず、おがくずとも呼ばれる)を使った菌床栽培を始めました。おが粉の需要が高まる中、木材チップを製造する過程で生じる“ダスト(木材のくず)”もおが粉と同じようなものと目をつけられたのです。

「これまでロスだったものに価値が生まれました。これが新たな事業のきっかけとなり、1986年に菌床栽培用『おが粉』の製造を始めました。同じく菌床栽培用『ザラメチップ』はうちが他社に先駆けて開発した製品です。どちらも県内外に出荷しています」

おが粉
▲広葉樹の原木を粉末状にした『おが粉』。(画像提供:新野木材)
ザラメチップ
▲広葉樹の原木を1cm角に加工した『ザラメチップ』。(画像提供:新野木材)

菌床しいたけを盛り上げたい

そして1991年、ついに生しいたけの菌床栽培に着手。 「原料(自社のおが粉)から仕込み機械、ハウスの空調設備、栽培プログラムまでの菌床栽培システムをまるごと一式販売する仕組みを整えました。当初は菌床栽培を始めたい業者向けに、ショーウインドーのようなものとして見てもらえたらと考え、生しいたけの栽培を始めたんです」

培地をつくる機械
▲生しいたけを育てる培地をつくる機械。
栽培しているハウス
▲温度や湿度などをコンピューターで一元管理したハウス。

すると、一年を通じて品質の安定した生しいたけが育ちました。

「おが粉の営業で各地の生産者へ出向き、栽培方法の知識を自然と身に着けてはいたのですが、何がよかったのかはっきりとわかりません(笑)」と、新野さん。

市場に出荷した際に高値がついたことをきっかけに、“菌床しいたけをもっと普及させたい”という想いも相まって、本格的に栽培をスタート。最終的には約50棟のハウスを設け、ピーク時には年間500トンもの生しいたけを出荷するようになりました。

ちなみに、徳島県は菌床生しいたけの生産量が全国日本一です。この理由を伺ってみると、 「特許であるしいたけの種菌以外、必要なものがまるごと徳島で揃うからでしょうね。おが粉製造業者も機械屋も県内に数社ありますから。菌床栽培を始めやすい環境が整っているので生産者が多いんだと思いますよ」とのこと。新野木材はいわば、その草分け的存在です。


食のプロたちが選ぶ「しいたけ侍」

転機となったのは2005年。上面栽培(水分を控えた菌床ブロックの上面だけに菌を植え付け成長させる方法)という新しい栽培方法を試してみたところ、肉厚で形もよく、味の濃い生しいたけができました。「この方法でもっと質の高いしいたけをつくろう」と決め、当時としては珍しい、生しいたけのブランド化に乗り出したのです。

たくさんの栽培されているしいたけ
▲水分控えめで育てることでうまみが強くなります。

異業種交流会で知り合った広告会社の人とともに、手塩にかけて育てた生しいたけを「しいたけ侍」と名付け、キャラクターやキャッチコピーなども考えました。 「私が中学時代から30代まで剣道をしていたことにちなんで、“侍”をつけました」と、少しはにかみながら語る新野さん。

「しいたけ侍」のシャツ
▲「しいたけ侍」のキャラクター。しいたけ愛に溢れています。

市場では重量での取引が主流でしたが、水分控えめで軽い「しいたけ侍」にとっては不利。そこで市場価格に振り回されないよう、大きさや形を揃えて箱詰めする枚数での販売スタイルに切り替え、直接販売にも力を入れました。

こだわりの品質は評判を呼び、プロからの仕入れも増加。「とくしま特選ブランド(徳島を代表する優れた県産品)」に認定され、今では「ミシュランガイド東京」に選ばれた三ツ星店「かんだ」ほか、東西の老舗料亭や高級ホテル、デパートまで味に厳しい名店が得意先として名を連ねるように。名実ともに、徳島が誇るブランドしいたけとして成長しました。

「個人のお客さんも多いですよ。贈られた方が別の方に贈ってくれたり、自宅用にリピートしてくれたりすると、喜んでもらえたんだなあと思ってうれしくなりますね」


食べてビックリ! 味のサプライズ

そんな「しいたけ侍」がもたらす最大のサプライズは、味わい。口に入れたとき、生しいたけ本来の風味やうまみが際立ちます。加えて、肉のような歯ごたえ。まずはぜひ、シンプルな調理方法でその驚きを存分にお楽しみください。

焼きしいたけ
しいたけの天ぷら
▲焼くだけ、揚げるだけで主役級。お酒との相性も言わずもがな。

もちろん軸も立派! 薄切りにしてピザの具にしたり、炊き込みご飯やスープに入れたり。おいしさを無駄なく味わい尽くすことができます。

しいたけをスライスしてピザの具に
▲軸をスライスしてピザの具に。チーズとの相性も抜群!
しいたけを混ぜた炊き込みご飯
▲ツナやにんじんと炊き込みご飯に。

「家では規格外のものを調理していますが、夫は天ぷら、私は野菜とのチーズ焼きが好きです。チーズ焼きは季節の野菜としいたけを一緒に炒めたら味付けは塩こしょうだけ。最後にチーズを乗せて2分ぐらい蒸し焼きにしたらできあがりです。94歳の母も好きでよく食べます。しいたけのみそ汁も我が家の定番ですね」と教えてくれたのは、妻の友子さん。

どう調理しても「おいしい!」と弾んだ声が飛び交うため、まるで自分が料理上手になったかと錯覚しそうになりますが、それは食材のおかげ。

届いたときから食べるときまで、ずっと楽しいサプライズをもたらしてくれる「しいたけ侍」。贈ってうれしい、もらってうれしい、徳島の名産品です。

しいたけに乗った「しいたけ侍」

新野木材株式会社
徳島県阿南市新野町入田14―1
tel.0884-36-3333
http://www.shinno.co.jp



しいたけ侍 木箱大

しいたけ侍の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

しいたけ侍 木箱 大

市場にあまり出回らない直径約8cmの肉厚の「しいたけ侍」が15枚。大きさと形がそろった贈答用木箱は開けた時の迫力満点。脇役ではなく主役になれる椎茸です。