吉野川水系・鮎喰川の名水で造る
徳島の地酒「御殿桜」

吉野川水系・鮎喰川の名水で造る 徳島の地酒「御殿桜」


伊予街道の醸造のまちに残る一軒の蔵元

かつて「伊予街道」と呼ばれ、徳島城の正門「鷲の門」を起点に伊予(愛媛)へと向かう街道だった国道192号線。徳島県を東西に、ほぼ吉野川に沿う形で走り、昔も今も主要な町への往来に利用される交通量の多い道です。特に、徳島市中心部にほど近い佐古〜蔵本地区は、この国道沿いに大学病院やオフィスビル、チェーン店などが密集するにぎやかなエリアになっていて、今ではこの道が歴史ある街道だった面影は感じられないほど。ただ一軒、その名残をとどめる趣ある建物がチェーン店の隣にぽつんと佇んでいます。ここは蔵元、「齋藤酒造場」です。

齋藤酒造場
▲1945年の徳島大空襲を免れた建物だそうです。

吉野川水系の一級河川・鮎喰(あくい)川が近くに流れる佐古〜蔵本地区では、JR蔵本駅のロータリーにある井戸水「蔵清水(くらしみず)」が名水スポットとして知られているように、実は、豊かな地下水が流れるエリアなのです。この恵まれた鮎喰川水系の伏流水を使って、かつて辺り一帯では味噌や醤油、酒などの醸造が盛んに行われていたそうですが、現在では齋藤酒造場が残るのみになりました。

JR蔵本駅前にある「蔵清水」
▲JR蔵本駅前にある「蔵清水」。齋藤酒造場からは徒歩9分ほどの位置にあります。

「東京で働いていた祖父母が、関東大震災(1923年)を機に遠い親戚を頼って移り住んだのが徳島県の那賀川町でした。そこで酒造を学んで独立し、廃業していたこの酒蔵を買い取って創業したのがはじまり。昭和14年(1939年)に創業した、徳島県内で一番若い酒蔵なんです」とは、齋藤酒造場三代目の齋藤智彦さん。初代蔵元の祖父が亡くなったことを機に、当時勤めていた食品メーカーを辞めてUターン。2015年に三代目に就任しました。

三代目の齋藤智彦さん
▲三代目の齋藤智彦さん。

齋藤酒造場が造る日本酒の銘柄は「御殿桜(ごてんさくら)」。徳島城を築城した阿波国の領主・蜂須賀家政の御殿に咲く満開の桜が由来だそうです。


冬になるとはじまる昔ながらの醸造

気温が下がりはじめた11月頃から3月頃までが醸造の時期。齋藤酒造場の奥の建物からは、朝早くにもくもくと湯気が立ち上っています。国道沿いの店構えからはまったく想像できなかったほど奥へ奥へと長い酒蔵を進んでいくと、湯気の正体である大きな蒸し器を発見しました。精米した酒米を蒸しているところだそうです。

酒米を蒸している様子
▲精米した酒米を蒸している様子。煙突に向かって勢いよく蒸気が上がっています。

さらに奥にあるのは背丈以上ある大きなタンクが並ぶ蔵。一時間蒸したあとの酒米を急冷させると、酵母や麹、そして地下30メートルから汲み上げる伏流水と混ぜ込み、このタンクの中で20〜30日間かけて発酵を促します。

攪拌の様子
▲攪拌している様子。ゆるやかに温度を上げ、ゆるやかに下げていく温度管理が重要だそうです。

出来上がったもろみを酒袋に入れて、圧搾機の中に積み重ね、ゆっくり2日間かけて圧をかけ、搾ります。こうしてすっきりとした口当たりが好評の日本酒「御殿桜」の完成です。

「お酒づくりは自然任せなところもあります。気温や雨量などでお米の味が微妙に違ってくるように、お酒の出来にも表れます」

毎年12月上旬に登場する一番搾り「しぼりたて」は、火入れも濾過もしていないため、その年のお酒の味が一番よくわかると、毎年楽しみにしている常連さんもいるそうです。



徳島の米と水にこだわった「御殿桜」も

齋藤酒造場の銘柄「御殿桜」を背負う清酒は大きく分けて「純米大吟醸」「純米吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」の4種類。

左から「純米大吟醸」「純米吟醸酒」「純米酒」
▲左から「純米大吟醸」「純米吟醸酒」「純米酒」。

2026年新酒では兵庫県から仕入れた酒米を使用した「純米酒」は、米が持つ芳醇な香りと旨味を楽しめ、すっきりとしていて和食によく合います。

一番人気の「純米吟醸酒」は、徳島県美馬町産の酒米「吟のさと」で醸造したフルーティーで華やかな香りが楽しめる一品。毎日嗜むのにおすすめだそうです。

「純米大吟醸」は、徳島県阿波町産の酒米「阿波山田錦」を40パーセントまで磨き上げ、じっくりと長期低温発酵させて醸造した一品です。精米歩合を上げるほど雑味がなく、口当たりがよいお酒に仕上がるのだとか。華やかな香りとやわらかな口当たりが好評で、「とくしま特選ブランド」(徳島を代表する優れた県産品)に選ばれたほか、国際的なお酒の品評会である「ロンドン酒チャレンジ」では、2020年に金賞を受賞しました。

100パーセント徳島産の地酒であるこの「純米大吟醸酒」は、徳島県酒造組合が認定するブランド「阿波十割」にも選出されています。

「今年は米不足で、酒米も入手するのが大変でした」と厳しい表情を見せる齋藤さん。食用米の価格があがることで、酒米の作付けが減少している背景があるとのこと。徳島県産素材を積極的に使うことにこだわっていますが、地酒づくりの将来的な難しさについても語ってくれました。

瓶に貼られた「LED夢酵母」のシール
▲「LED夢酵母」のシール。

この「純米大吟醸」と「純米吟醸酒」の瓶をよく見ると、「LED夢酵母」というシールが貼られています。LED夢酵母とは、徳島県立工業技術センターが地元の日本酒のために開発したというご当地酵母です。徳島県の地域資源であるLEDを清酒酵母に照射し、フルーティーな香りと発酵力の強さをもったものを選び抜いて生まれた新酵母で、この酵母を使って醸造すると果物のような華やかな香りとスッキリとした味を持つ日本酒になるそうです。


THE 御殿桜 SET

齋藤酒造場の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
THE 御殿桜 SET


どぶろく、梅酒、甘酒も

また、「醸すのは、楽しいお酒生活♪」をモットーに、日本酒以外にも力を入れています。どぶろくやリキュールの製造免許も取得しました。

阿波番茶由来の乳酸菌を使った、少し酸味のあるどぶろくは愛飲家から好評を得ています。

梅酒「阿波黒蜜梅酒」には、名西郡神山町産「蔦宿梅(おうしゅくばい)」と、徳島が誇る「阿波和三盆黒蜜」を使用しており、こちらも徳島県産の原料にこだわっています。酸味と甘味とコクが絶妙な一品で、「ロンドン酒チャレンジ」において、2018年・2019年に金賞を受賞、2020年はプラチナ賞を受賞し、名実ともにファンの多い逸品です。

右:ノンアルコールの甘酒。左:古代米を使って紫色の甘酒。
▲ノンアルコールの甘酒(右)。黒米を使った甘酒(左)も人気。

最後に、ノンアルコールにも看板商品があることを忘れてはいけません。それは、甘酒。祖父の代にはお祭りの時期に製造していたという甘酒でしたが、扱いやすいパウチ入りの甘酒として販売再開。原材料は米・米麴のみで、砂糖や甘味料は不使用。ポリフェノールで紫色になっている古代米(黒米)を使った珍しい甘酒もあり、健康志向の方に注目されています。すっきりとした甘さでさらっと飲みやすい甘酒は、指名買いされるほど。ネット販売をはじめ、県内の産直市でも人気です。

鮎喰川の名水を使った昔ながらの醸造を守り続ける齋藤酒造場。こだわりの香りと味わいをぜひお楽しみください。


齋藤酒造場
徳島県徳島市佐古七番町7-1
https://www.gotensakura.com/



酒屋がつくった御殿桜あまざけ 飲み比べ3種6本セット

齋藤酒造場の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

酒屋がつくった御殿桜あまざけ 飲み比べ3種6本セット

酒蔵仕込みの白米を使ったあまざけ、発芽玄米を加えたよりヘルシーなあまざけ、古代米(黒米)を使ったアントシアニンたっぷりの珍しいあまざけの3種詰め合わせ。さらりと飲めて、スッキリとした甘さが特徴です。