炎を見ているような安らぎに
海陽町の自然×アート“竹あかり”

炎を見ているような安らぎに 海陽町の自然×アート“竹あかり”


城満寺との縁で海陽町へ

徳島県の最南端にあるまち、海陽(かいよう)町。南東に位置する太平洋の沿岸にはサーフスポットが点在し、季節を問わずサーフィンを楽しむ人の姿が見られます。そんな海陽町に大阪から2018年に移住して、サーフィンを楽しみながら“竹あかり”のアーティストとして活動するのが、檜垣健(ひがき・たけし)さんと、妻のフローレンスさんです。「たけの花」の屋号で、竹あかりを使ったイベント演出や、ランプシェード制作を行っています。

海陽町
▲海陽町を訪れると、水平線の広がる太平洋が出迎えてくれます。
右から檜垣健さんと、フローレンスさん、次女の月海(るみ)ちゃん
▲右から檜垣健さんと、フローレンスさん、次女の月海(るみ)ちゃん。5歳の長女の美空(みら)ちゃん、そして愛犬チャコの、4人と1匹で暮らしています。

竹あかりとは、竹に穴をあけて模様を描いた竹に、ろうそくやライトを入れて明かりを灯すもの。インテリア用途のものから、2メートルを超える竹を組む屋外作品まで、さまざまな種類があります。

竹あかり
▲竹の穴から漏れ出る光が、暗闇の中で幻想的に浮かび上がります。  

お二人が初めて竹あかりを作ったのは、2016年、自身の結婚式のとき。演出も舞台も、すべて手づくりで結婚式をしようと考えていたところ、ある音楽イベントで目にした竹あかりに心を惹かれ、自分たちも作ってみようと思い立ったことがきっかけでした。二次会でキャンプファイヤーをした際に、ゲストと一緒に手づくりの竹あかりにろうそくで火を灯した時間が特別なものになったと振り返ります。その頃から竹あかりの制作が趣味になった健さんは、友人のプレゼント用に竹あかりを作るようになりました。 

転機は、移住前の2017年10月30日。友人が海陽町にある「城満寺」の石庭のお披露目会で、献花奉納のパフォーマンスを行うことになり、照明の演出を依頼されて20本ほどの竹あかりを手がけました。

「真っ暗なお寺で、ろうそくの火が揺れる竹あかりはすごく幻想的でした。感動して涙するお客さんを目にして、その空間の一部を僕たちが作れたことを誇りに思ったんです。そんなふうに人の心を動かせる仕事がしたいと思い、竹あかりを生業にすることに決めました」

城満寺の「ゆく年くる年 竹灯り」の様子
▲年末年始に恒例で行われている城満寺の「ゆく年くる年 竹灯り」の様子。2018年より毎年手がけています。

そこで健さんは、フローレンスさんに一緒に竹あかり制作を仕事にしようと誘い、夫婦で海陽町に移住しました。

「宍喰(ししくい)駅」1階の休憩所
▲海陽町内にある阿佐海岸鉄道「宍喰(ししくい)駅」1階の休憩所。「たけの花」制作による竹あかりが飾られています。

竹あかりに宿る、二人の感性

竹あかりの制作にはまず、伐採した竹を半年ほど乾燥させたあと、耐久性を高めるためにバーナーを使って油抜きをします。次に竹の表面にデザインの型紙を貼り付けて、専用のドリルで穴をあけていきます。最後に、やすりで表面を滑らかに磨いて完成です。

▲工房には、乾燥中の竹が高く積まれていました。
油抜きの様子
▲油抜きをする様子。バーナーで炙るそばから油分が浮き出てくるので素早く拭き取っていきます。夏場の工房は灼熱です。
油抜きで白っぽくなった竹
▲油抜きをした後の竹は、表面が白っぽくなります。

デザインの考案はフローレンスさん、竹の処理や穴あけなどの加工は健さんが担当しています。アーティスト肌で夢を大きく描くフローレンスさんと、職人気質で堅実な健さんの二人のバランスが、思いもよらない表現を生み出すのだそうです。

「彼女は僕にない感性を持っているので、いつも驚かされますね。一般的には竹あかりと聞くと、和風の柄をイメージされるかもしれませんが、フローレンスはフランス人なので、ヨーロッパや北アフリカのデザインを取り入れているのが、僕たちの作品の特徴です」と健さん。

フローレンスさんの初期の作品は、海陽町の自然がモチーフになったものが多く、最近は、海外の旅先で見たものなど、より自分自身の経験と結びついたデザインを表現するようになったと言います。これに加え、幾何学模様や曼荼羅をモチーフにしたものなど、現在たけの花には、40種類ほどのデザインコレクションがあるのだとか。フローレンスさんに、素材としての竹の魅力を聞いてみました。  

フローレンスさん
▲フローレンスさんは、フランスで街づくりや景観に関わる資格を取得して働いた経験もあります。

「竹はしなやかで力強いですが、とても脆く壊れやすい素材でもあります。それこそが面白さであり、私が竹に惹かれる理由です。自然素材には必ず制限があるので、それを受け入れ、尊重しながら扱っています」

自然のものだからこそ、思い通りにはなりません。竹ごとに水分量や節の長さも違うため、その都度、状態を見極めながら作り方を変える必要があります。完成まであと一歩というところで、竹あかりが割れてしまうこともめずらしくないのだそう。

▲インテリア用の竹あかりにインパクトで穴をあける健さん。手前にあるのは、竹専用のドリル。繊細なデザインを表現するためにサイズ違いで20本近くも。
▲左はインテリア用に皮を剥いだ「剥き竹」。薄くすることで竹の割れを防ぐことができます。

放置された竹に命を灯す

竹あかりの素材となる竹は、海陽町内の放置竹林から伐採したもの。全国的に問題となっている竹害の解消にもつながっています。

「ただ竹を切るだけではむしろ竹林が荒れてしまうので、伐採するときには竹林の整備も一緒に行っています。竹は養分の少ない9〜12月が伐採シーズンで、この時期に1年分の竹のほとんどを調達しています」と健さん。

▲放置竹林で作業する様子。このときは美空ちゃん(当時2歳)も一緒に。

地域環境の問題になってしまう放置された竹を美しく温かなアート作品として生まれ変わらせることで、人と自然のより良い寄り添い方を提案しています。


やさしい“竹あかり”を暮らしの中に

竹あかりの魅力は「竹の肌の色にある」と、健さんは話します。

「竹あかりは、竹の肌の色を通して光が漏れ出る、自然の間接照明なんです。竹の内側のベージュは、僕たちにとって身近な、人の肌色のようなやさしい色合いだから、安心感があるんですよね。そして、自然素材から跳ね返る明かりは、もとの光源より柔らかく感じられて、まるで火を見ているかのような……。いつまでも眺めていたくなる存在感があります」

藍染の竹あかり
▲同じ海陽町にある藍染めスタジオ「in Between Blues(インビトウイーンブルース)」とのコラボで生まれた藍染めの竹あかり。

また、フローレンスさんの祖国であるフランスに行った際に、多くの家がダウンライトなどではなく、間接照明を用いている光景を見たときにも、竹あかりに通じるものを感じて、その魅力を再確認したと言います。外が暗いときには、室内の明かりも落としてリラックスする。空間の心地よさをさりげなく叶えてくれるのが、柔らかな明かりを放つ竹あかりなのです。

健さんとフローレンスさんの自宅には、いくつもの竹あかりがあるのだそう。

「寝室に竹あかりがあることで、娘たちは、自然と眠りに落ちていきます。特に長女は夜遅くまで目が覚めていることも多いのですが、竹あかりを見ていると、うとうとし始めます。日頃、テレビやタブレットなどの眩しいスクリーンに囲まれている子どもたちにとって、竹あかりのある空間は平穏を取り戻す時間になっているんです」とフローレンスさんは話します。

インテリア用の竹あかり
▲屋外や演出用の大きな竹あかりに比べて、インテリア用の竹あかりには小さい穴があけられています。より繊細な光が漏れてリラックス効果抜群。

まさに暮らしに溶け込み、日常に寄り添ってくれる竹あかり。二人がすすめる竹あかりの置き場所は、やはり寝室か、リビングです。
「玄関に置きたいというリクエストも伺うのですが、もったいないと思ってしまいます。ゆっくりとくつろげる場所に置き、時間を忘れて“見る”時間を味わってほしいです。ちなみに、竹あかりを見ながら飲むお酒は格別においしいですよ(笑)」と健さん。

最後に二人の目標をお伺いしたところ、“フランスにも拠点を持つこと”でした。お子さんたちのルーツにつながるフランスの文化を伝えながら、竹あかりの魅力を海外にも発信していきたい。これからも自然豊かな海陽町に根ざし、家族の時間を大切にしながら、自分たちらしい表現を追求していきたいと教えてくれました。


たけの花 

徳島県海部郡海陽町吉野字コカロト144
tel.0884-70-1615
Instagram @takenohana_


竹あかりマンダラ

たけの花の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

竹灯り Mandala(マンダラ)

徳島海陽町産の竹に穴を開けてデザインしたランプシェード竹灯りです。大小さまざまな穴からこぼれる柔らかな光が暗闇を幻想的に照らし出します。寝室やリビングなどの雰囲気を変えてくれる一品です。