目次 鉄板の差し入れ いい香りのするジェラート 「食べられるモノはすべてジェラートにします」 素材のポテンシャルを引き出す甘さの微調整 現地…
先代の“ポンダリン”栽培が始まり
「この市場町で約40年前に不知火(しらぬい)の栽培が始まったんです。私の両親を含め、10軒ほどの農家がつくっていましたが、今は3軒くらいでしょうか。当時は“ポンダリン”という愛称でした。近くの産直市場では今でもポンダリンとして売られているものもあります」

まだまだ空気の冷たい2月頭。「サトウ農園」を訪ねると、ソフトボールくらいの大きさに実った不知火の収穫が始まっていました。手を休めながら質問に答えてくれる佐藤孝行さんの奥には妻の幸代(ゆきよ)さんの姿が。二人とも上へ下へと体勢を変えながら黙々と手摘みで収穫していきます。


徳島県中央部に位置する阿波市。吉野川北岸の平野部は県内でも有数の農業地帯です。「サトウ農園」は市場町内の見晴らしのいい開けた地域にあり、佐藤家はタバコに始まり、トマト、温州みかん、そして40年前からは不知火など、代々農業を営んできました。
昔ながらの大きな屋敷を囲むような形でビニールハウスが立ち並び、その数はなんと18棟。面積にして約40アール。学校の体育館に換算すると、4館分もの広さです。1か月かけてビニールハウス全体で収穫する不知火はコンテナ1200ケース(1ケースにつき20~25個)ほどにもなるのだとか。
「親がやっていることをなんとなくは見ていましたが、繁忙期に手伝う程度で継ぐつもりはありませんでした。でも、コロナを機に仕事の環境が変わったり、『今年はまだですか?』とうちの不知火を求めてくれる声が耳に入ってくるようになったりして、これからは跡を継いで自然の中で働くのもいいかなという気持ちになったんです」
孝行さんは高齢の両親に代わり、33年間勤めていた会社を2020年に早期退職、本格的に不知火づくりに携わるようになりました。
エコファーマー認定を取得
今年(2026年)で不知火と向き合って6年。ちなみに不知火とは清見とポンカンの交配品種。生産を始めた地域(熊本県宇城市不知火町)にちなんでその名前がつけられています。よく耳にする「デコポン」はJA熊本果実連によって商標登録されている不知火のブランド名のこと。

跡を継いだ当初は不知火栽培の1、2割程度のことしかわかってなかったと振り返ります。長雨の影響で茶色い柄のようなものが入ったり、猛暑の影響でかたくなったり。自然落下が多かった年もありました。
「想像していた以上に大変でしたね。50~60年も作物をつくっているベテラン農家さんが『毎年勉強じゃ』と言っていた言葉をずっと謙遜だと思って聞いていたんですが、今はその意味がよくわかります。雨、風、それに暑さ。確かに毎年条件が違うから、本当に毎年毎年勉強なんですよね」と孝行さん。

果肉の粒が大きく食べごたえもあり、ジューシーかつ濃厚な味わいと評される「サトウ農園」の不知火。その品質を維持するために、孝行さんは奔走しています。農業支援センターに土壌や肥料の相談に通い、近隣の産直市場で開催される勉強会にも参加をしました。2023年には「エコファーマー(県が認定する、土づくりと化学肥料・化学農薬の使用の低減を一体的に行う“環境にやさしい農業”の実践者のこと)」も取得。今年は天然わかめや魚粉を用いた肥料を試してみたり、水やりのタイミングを変えてみたりと、すべてはおいしさのための試行錯誤です。
「『農作物は子どもと一緒』って言葉もよく聞きますけど、実際にそう思いますね。一人でできることはたかが知れているので周りの力を借りつつ、不知火の成長具合を日々確かめながら育てています」
夫婦で収穫して夫婦で出荷する
収穫された不知火は幸代さんの目と手によって小さなキズも見逃されることなくはじかれ、さらに大きさごとに選別されます。その後、劣化を防ぐためにひとつひとつポリ袋に入れてから貯蔵庫へ。


1か月以上貯蔵庫で寝かせて熟成させた後、3月に一旦ポリ袋から取り出します。再び品質をチェックして二度目の選別。もう一度ポリ袋に入れてから、ようやく出荷用の箱や袋に詰めていくのです。この手間のかかった一連の品質管理と最終段階の箱詰め、袋詰めの作業は幸代さんの担当。
「厳しい目でチェックしてくれるし、主婦目線で美しく梱包してくれるので助かります」と、幸代さんの後ろで作業を進める孝行さん。
ちなみに幸代さんは昨年(2025年)まで会社に勤めながら農園の仕事にも従事してきました。全ハウスのビニールを張ったり外したり、真夏に草刈りをしたりと、ほぼすべての作業を孝行さんとともにこなしてきたスーパーウーマンです。
毎日出荷して2か月で完売する
こうして夫婦二人が育て上げた不知火は、毎年3月から4月の終わりごろまでが販売シーズン。約2か月間という短い期間を心待ちにしているリピーターによって毎年完売しています。加工にも回らず、すべてが果実として人の手に渡っているのです。
販路は近隣の産直市場や道の駅がメインで、並べるとすぐに売り切れるためほぼ毎日納品しているのだそう。一方、通販では「ラシクルモール」と「ふるさと納税」のみ! 超レア!

「産直で指名買いをしてくれていると聞いています。県外に引っ越したけど忘れられないからと電話をかけてきてくれる方や、贈られた箱の住所を見てうちに来られた方もいました。うれしいし、頑張ろうって思いますよね」と幸代さん。
「『ホームページを作りませんか?』『検索で上がってくるようにできますよ』という営業の電話もかかってくるんですが、おかげさまで完売するのでまだいいかなと(笑)。SNSなどもできればいいんでしょうけれど……手が回りません」
包丁で切ったほうがおいしい
ところで、つねづね気になるのが大きい柑橘類の食べ方。不知火は手でむくのがいいのでしょうか、包丁で切ったほうがいいのでしょうか。生産者のお二人に尋ねてみたところ、「うちは包丁で切っていますね。食べやすいし、おいしく食べられますよ」とのこと。
せっかくなので佐藤家のスタイルを教えてもらいました。
1.こぶの部分を包丁で落とす。
2.横半分に切る。
3.半分を4等分のくし切りにする。



もちろん、手でむいてもOK。内皮もやわらかいため袋ごと食べられますが、包丁を使ったほうが手軽で手が汚れにくいように感じます。しかも、この切り方だと果肉がむき出しになるため、口に入れた瞬間からジューシー!
また、時期(貯蔵期間の長さ)によって味わいが変化することも教えてくれました。出回り始めのうちは酸味が強め、終わりに向かうほど甘みが強くなります。味の好みで購入時期を決めている通もいるようです。

「長く勤めていた会社は“お客様のために”をモットーに掲げていました。仕事は変わっても今もその想いは染みついているような気がします。それに、不知火はどうしても手がかかるので決して安くはありません。だからこそ、ご褒美や贈答に選んでもらえるようにこれからも励みたいと思っています。食卓を彩ることができる不知火をつくり続けたいですね」
終始穏やかな口調で言葉を選ぶ孝行さんと、傍らで朗らかにうなずく幸代さん。思わず「仲良しですね」と伝えると、「夫婦ゲンカはしょっちゅうですよ」と笑い合います。さあ、今年も二人の不知火が味わえる春がやってきました。

サトウ農園
徳島県阿波市市場町香美郷社本38
tel.090-2824-7305

サトウ農園の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
外皮は、剥きやすく、果肉を包む内皮も柔らかく、袋のまま食べられます。 甘さと酸味の絶妙なバランスが特徴で豊かな香りが広がり果肉の食感と濃厚な味わいが楽しめます。
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