家庭菜園でも美味しい野菜がとれる
国内屈指の育苗技術

家庭菜園でも美味しい野菜がとれる 国内屈指の育苗技術

強くて美味しいヒミツは「接木苗」

「私たちは食べている野菜や果物のことについて知らなすぎる!」
取材を経て感じたのは驚きや感動ではなく、恥ずかしさでした。
農家が苗を植えて成長を管理し、実ったタイミングを見計らい収穫して出荷する。これまで農家をクローズアップした記事や映像を目にすることはありましたが、農家が使用する「苗」の背景についてはあまり知られていないように思います。畑になる瑞々しい野菜や果物がたくさん実をつけるためには、苗の力が重要です。苗には農家が安心して育てるための技術と努力が現在進行で注ぎ込まれているのです。

『竹内園芸』は育苗専門の会社です。徳島県板野郡に本社を置き、平成20年には群馬県、平成27年には熊本県にも農場を拡大し、日本で2番目の出荷数を誇ります。取り扱うのは野菜苗や花苗など、その数およそ60品目2000品種。同社がもっとも注力しているのが「接木(つぎき)」と呼ばれる技術です。接木とは2種類の植物を接ぎ合わせ、双方の長所を兼ね備えた苗を作ること。例えば、病気や環境に強い品種を土台(台木)に据え、その茎を途中でカット。その部分から上半分には美味しく、収穫量の多い品種(穂木)をくっつけることで、丈夫かつ美味しい実が多く収穫できる苗が実現できるというわけです。

▲透明のクリップに挟まれた部分が繋ぎ合わせた箇所。

均一に発芽させ、成長させる難しさ

接木苗は土づくりから始まります。吉野川沿いに生えた雑草を刈り取り約3年間かけて発酵させた養分たっぷりの堆肥に肥料を混ぜたオリジナル培土です。その培土に機械を用いて効率よく種を蒔き、水分を与えた後は環境を整えた発芽室へ移し、均一に芽が出るようにコントロールします。

▲毎年新しい品種が登場します。トマトだけでも数えきれない品種だそう。

発芽した苗はハウスへ移動し、接木ができる大きさにまで成長を管理してゆくのですが、ここがもっとも重要な工程になります。土台となる台木と実を付ける穂木を均一に成長させなければなりません。
接木は茎と茎をつなぐ作業のため、上下で太さが違っていてはくっつくことができません。同じハウス内でも、苗を配置する場所が少し違うだけで成長スピードは異なり、その差異を水量調整や、天候とも向き合いながら細かな管理を徹底します。

▲写真では分かりづらいですが、同じ列でも成長速度の差から高低差が生まれます。

接木作業は別室で熟練のスタッフたちがひとつひとつ手作業で行います。茎を斜めにカットし、ギプスの役割を果たすクリップで素早く止め、その後は養生室へ。切断面がくっつくまではここで過ごします。病院で例えるなら集中治療室のような場所です。

▲接木を行うプロ集団は1日1000個以上を素早く仕上げていきます。
▲養生室の苗は全体的にぐったり。切断部分が安定するまでここで過ごします。

その後は再びハウスへと移動し、温度・湿度・日照量を調節しながら徐々に栽培環境に慣れさせます。最後は出荷用のポットへ移植し、水分量などでストレスを与えながら一般的な環境変化にも耐えられる強い苗へと仕上げて、やっと出荷へと至ります(トマトであれば合計50日ほど)。

▲養生室からハウスへ向かう苗たち。

もっとも大切なことは観察力

「育苗は子育てのようなもの」と広報の方は話します。人間の乳児期・幼児期も目が離せないように、小さな苗にもトラブルはつきものです。虫がついたり、傾いて隣の苗に支障をきたしたり。元気がなければすぐに手当てを施します。数千もある苗を常に障害から回避・回復できるよう、“観察すること”がどの工程においても重要な作業となります。


今後は生産量を上げるための機械化やICTの導入も視野に入れています。まだまだ実用段階ではないものの、効率と確実性を向上させるための開発にも同社は前向きに取り組んでおり、“安心して育てられる苗を多くの農家へ”をスローガンに、『竹内園芸』の試行錯誤はこれからも続きます。

▲スタッフは子どもを見守るような目で日々苗をチェックします。
▲成長した苗は倒れやすいため、専用器具で支えます。人の目で観察し、手作業で行います。

マンションのベランダでできちゃった!

同社はおもに農家を対象に接木苗を販売していますが、『ラシクルモール』では一般消費者向けにミニトマト、キュウリ、ナス、ピーマンから10本選べる接木苗セットを販売しています。昨夏(2021年)の内容ではありますが、『ラシクルモール』のスタッフが子供と一緒に育て、夏野菜を美味しく食べたので振り返ります。栽培環境を紹介しておくと、土いじりのできる庭ではなく、マンションのベランダ。一般的なプランターを用いて栽培しました。

▲シールをくっつけて顔遊びできるほど、長くて太い立派なナスが成りました。苗から実がなるまで約30日ほど。
▲収穫後は子どもと一緒に料理。味噌を塗って田楽に。
▲こんなに小さなキュウリが……
▲およそ4〜5日後、一気に子供の顔より長く! どんどん実をつけ何度も収穫しました。
▲トマトもたくさん実り、美しい朱色がいくつも獲れました。

「決して日当たりが良い場所ではありませんでしたし、小さなプランターでも立派な野菜が育ったのは丈夫な接木苗だからだと思います。種からだとハードルが高いですが、苗であれば成長を実感しやすいので小さな子どもも飽きずに楽しめました。登園前に水をあげるという日課ができたのも良かったし、普段は積極的に食べない野菜も自分で育てると、自ら口にして美味しく感じるようです。子どもも野菜と一緒に成長しているようで楽しかったですね。もちろん今年もチャレンジ中です!」と、教えてくれたのは、『ラシクルモール』スタッフの山田さん。


『竹内園芸』からのアドバイスによると、最低限の日当たりと、根が張る前は埋めた苗を軽く土から上げて乾いていたら水をやること。表面は濡れていても中は乾いていることがあるのだとか。また、プロでも素人の家庭菜園でも、大切なのはやっぱり観察とのことでした。

ちなみに、ホームセンターではここで紹介したような接木苗はあまり販売していないようです。この機会に接木苗による家庭菜園を体験してみませんか。日々成長を観察しながら待ちに待った収穫、そして美味しくいただくまでの時間をまるごと楽しむことができます。夏休みの自由研究やお子様との思い出づくりにもぜひ。


有限会社竹内園芸(ベジ苗)
徳島県板野郡板野町大寺字大向北88-1
tel.088-672-3690
http://www.takeuchi-yasainae.com/



ベジ苗の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

選べる接木苗セット(10本)

組み合わせ自由。ミニトマト・キュウリ・ナス・ピーマンの中から合計10本セットでお届け。人気のミニトマト・キュウリ・ナス・ピーマンの苗の中から計10本を自由に選べるお得なセットです。