土産店が作る干物は飯がうまい
目次 輝く魚、見惚れる手さばき、昔ながらの天日干し 薄すぎない塩加減は、酒よりも米がすすむ 青果の行商からはじめて50年 輝く魚、見惚れる手さば…
「ハモがとれ始めました」と、「徳島魚類」代表取締役・一新(いっしん)太郎さんより連絡をいただいたのは5月下旬。夜明け前に車を走らせ、徳島市の東端、沖洲(おきのす)にある徳島市中央卸売市場へと向かいました。すでに大小のトラックが到着し、県内各地の漁港で水揚げされたばかりの地魚がせり場に次々と運び込まれ、全国の産地名の札がついた海産物も並べられています。午前5時半から始まる競(せ)りに向けて、活気づく市場。
「徳島ってね、魚の種類が豊富なんです。地理的なことと関係しているんですが、北は瀬戸内海、東は紀伊水道、南は太平洋と3つの海に囲まれているでしょう。つまり、それぞれの海でとれる魚が違う。水揚げ量はどこもそう多くはないけれど、3つの海域の魚が全部ここに集まってくるんでおもしろいですよ。それに、ここは中央卸売市場なので全国各地から水産物の入荷があるハブ機能を持ちながらも、漁港に近い産地市場の側面もあるんです。軽トラで直接魚を持ち込んでくる漁師さんもいたりして、全国的に見ても珍しいタイプの中央卸売市場だと思いますよ」と、一新さん。この道、20年の魚のプロです。
「徳島魚類」はこの市場内で、徳島の地魚を中心とした水産物の仲卸から、活魚運送や水産物の配送、さらには水産物の加工販売まで手がけています。創業は1959年ですが、現在のように事業を拡大したのは先代である一新さんの父、一新實(みのる)さん。また、今でこそ、ハモは徳島県のブランド水産物として知られていますが、県のバックアップなどを得ながら県産ハモのブランド化にいち早く取り組んだのも先代だったそう。
「昔からハモは徳島の海でとれてはいたものの、淡路島の仲卸業者を介してそこから繋がりのある関西圏にほぼすべて出荷されていたんです。その際に“淡路のハモ”として認識され、質の良さがもてはやされていたのですが、先代はそれにもどかしさを感じ、実際は徳島でとれたハモなんだから徳島ブランドとして有名にしたいと、ハモに力を入れ始めました」。
当時、関東ではハモってナニ?状態だったものの、取引実績のある築地市場にも本来なら京都や大阪の有名料亭に出すような、とびっきりいいハモを出荷したり、キリンビールが企画していた<全国うまいものキャンペーン>の賞品として「ハモ鍋」を提供したり。一方で、まだまだなじみの薄かった県内のスーパーなどにもハモの商品を積極的に展開。
徳島産ハモのおいしさを県内外に広める活動を精力的に行った功績が称えられ、2009年には地元の徳島新聞社より「徳島新聞賞 産業賞」が贈られています。
「徳島魚類」では、2006年より一定のランク以上のハモを、“きらびきハモ”と称して本格的に展開、全国各地に出荷しています。
「“きらびき”は造語なんです。キラキラ輝くの<きら>と、湯引きの<びき>からきています。もともと上質な徳島のハモの中でも私たちがさらに厳選したハモは、丁寧に骨切りをすると身がキラキラと輝いて見えます。見た目にも美しく、味もいい最高ランクのハモのイメージにピッタリで気に入っています」。
また、ハモに限らず、徳島のおいしい地魚をもっと食べてもらいたいという思いから、鮮魚加工のノウハウを活かした一般向けのギフト商品の開発、生産販売する事業組織を『きらびき工房』と名付け、2011年に立ち上げました。
現在の商品ラインナップは、きらびきハモと天然鳴門鯛を用いた数種類。中でも、今が旬、9月までの夏季限定のイチオシが「きらびき工房 冷凍湯引きハモ」です。 「ギフトとして贈られた方がおいしかったからということで今度は贈り主になってまたほかの方に贈ってくれたりする。喜んでもらえたんだなあと思うと、うれしいですね」。
卸売市場内で手際よく活きじめされる、きらびきハモ。同じ敷地内に設けられた自社の加工場に運ばれ、ベテラン職人の腕によって手際よく加工されていきます。
「きらびき工房では活きじめのハモしか使いません。じゃないと、味も違ってくるし、見た目にも美しくないからです。県内有名料亭出身の料理人を迎え入れて『徳島の地魚を原料にいい商品を作りたい』という気持ちでやっているので鮮度とクオリティにはこだわりがあります。市場内で仕入れから加工、出荷まで一貫してできるというロケーションのメリットも最大限に生かせますしね」。
食べ方は簡単。冷蔵庫で一晩解凍したら、さっと湯通しするだけ。歯ごたえもあり、上品な甘みやうまみが感じられます。 オリジナルの梅肉や辛子酢味噌も風味豊かで箸が進みます。また、ハモはウナギやアナゴに比べて低カロリーながらもたんぱく質が豊富なので食欲の落ちる夏場にはピッタリ。体のことも考えた、粋な贈りものにもなりますよね。
「普段からおいしい魚が食べられてうらやましいです……」と、思わず心の声が漏れてしまったのですが、一新さんは笑って教えてくれました。
「仕事柄よく言われるんですが、そうでもないんですよ。市場あるあるなんだけれど、仲卸人にとったらどれも売り物だから、よう食べんのです。一番いいものはお客さんに渡したいっていう思いがやっぱりある。『この魚いいから持って行き!』って売ってしまうんですよね。だから、ハモも魚も……じつはそれほど食べてません(笑)」。
徳島の海、地魚を愛する鮮魚のプロがこだわってつくる、“きらびき”ブランド。今しか味わえない本場のハモ、最高ランクの味わいを産地からお届けします。
徳島魚類 きらびき工房
徳島県徳島市北沖洲4丁目1―38
tel.088-628-2622
http://www.t-gyorui.com/top.html
徳島魚類 きらびき工房の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
徳島産天然鱧から厳選したブランド鱧である「きらびき鱧」のみを使用。 関西、特に京都で食べられている高級料理をご家庭で簡単にお楽しみいただけます。 5月~9月の夏季限定商品。