一杯のクラフトビールをきっかけに!
ビールは故郷を発信するためのトリガー

一杯のクラフトビールをきっかけに!<br>ビールは故郷を発信するためのトリガー

一度は断念したビール作りを故郷で再び

1994年の酒税法改正により少量でのビール生産が可能となった日本では、ベルギービールのブームが重なったことも追い風となり、地方を中心に小さなブリュワリー(ビール醸造所)が誕生し続けています。これまで「ご当地のお酒」といえば、日本酒や焼酎が主でしたが、30年経った現在ではビールこそ地域の特色を色濃く反映するお酒の筆頭かもしれません。基本的な材料の水・麦芽・ホップのほかに、ハーブや果物などさまざまな素材を自由に掛け合わせることのできるクラフトビールは、ローカルとの相性がとても良いのです。

豊かな土壌と美しい水を有する徳島県は、米や野菜、柑橘、果物を中心に全国へ出荷する素材の豊富な場所です。県内にもその強みに魅せられた醸造家たちによるブリュワリーが多く誕生しており、県南部に位置する阿南市に拠点を置く「JouZo BEER BASE(ジョウゾ ビア ベース)」は、最も素材へのリスペクトを込めたビールを作るブリュワリーのひとつです。

▲代表を務める住友正伯さん。阿南市出身。起業家セミナーなどで講師も務めています。

代表を務めるのは阿南市出身の住友正伯(まさのり)さん。県外でサラリーマン勤めをしながら経営大学院でMBAを取得後、ローカルの課題解決をソーシャルビジネスで起業したいという夢を抱くようになり、勤めていた会社を退職。縁もゆかりも無い土地で挑戦したいという理由から広島県呉市の大崎下島で地域おこし協力隊となります。大崎下島は島全体が黄金に色づくほどのレモンの一大産地で、当初はこの場所でのビールづくりを画策していました。

根っからのお酒好き。サラリーマン時代、転勤などで訪れた各地でブリュワリーにまで足を運ぶほどクラフトビール好きだったことと、地元の人々の応援と期待も後押しとなり、レモンを使った地ビール作りのために奮闘していましたが、島の環境に関わる設備の都合で断念することとなります。その後、2020年に地域おこし協力隊の任期を終え一度故郷に戻りますが、そのタイミングで今の物件と出会いました。

「ここは元々製材所だったんです。横に広く、ビール作りのスペースとしても十分で、何より子供の頃によく遊びに来ていた思い出のある場所で。阿南市にレモンはありませんが、すだちや柚香(ゆこう)があると思うと、すぐに醸造所の許可申請へと動き始めていました」。

▲製材所ならではの特徴的な造形はロゴマークの基になっています。

旬素材や企業とのコラボの数々。定番ラベルのない醸造所

物件との出会いから約1年後の2021年9月「JouZo BEER BASE」はオープンします。ホップを多く使うことから苦味が特徴のIPA(インディア・ペール・エールの略。世界中で愛されているクラフトビールの一種)ベースに馴染み深いすだちの香りが際立つラベルも完成。ただ、このすだちを使用した徳島を象徴するIPAはレギュラー商品ではなく、年中楽しめるというわけではありません。

多くの醸造所は代名詞となるようなラベルを通年作り続けることが多いですが、「JouZo BEER BASE」は、素材の旬を優先するため、1〜2か月毎に内容が大きく変わります。春はイチゴやキウイ。夏はすだちや生姜。秋は梨や栗。冬はみかんや古代米など、味や香りだけでなくビジュアルで魅せる一杯など、振り幅が特徴です。レギュラー商品はありませんが、フレキシブルな性格から繰り出される攻めたラインナップが「JouZo BEER BASE」の魂であり代名詞となります。

取材に訪れた7月中旬。真夏を直前に迎える時期は、カシスの色味が美しい「パープルヘイズ」。現地での醸造は叶わなかった大崎下島のレモンを使った「レモンドロップ」。吉野川市産の唐辛子を使った変わり種「ファントムブラッド」など5〜6種を用意。

8月には恒例のすだちや旬の桃が登場予定。ほかにも、瀬戸内の海水を蒸留した水を使ったという、仕上がりが気になる一杯や、店奥のタンクには発酵製品を扱う地元の会社「いかわ発酵」の阿波晩茶を使用した阿南市コラボの商品も熟成中で、今年の夏も賑やかになりそうです。

▲店奥にある大きなタンクにて3〜4種を醸造中。
▲注いだ瞬間に広がるレモンの香りと奥行きのある酸味。大崎下島のレモンを使用した「LEMON DROP Hazy IPA」。
▲後味でほのかにやってくる辛味がクセになりそうな「ファントムブラッド Chili Infused IPA」。唐辛子は吉野川市産の「山辛唐辛子」。

▲カシスによるくすんだ紫色が特徴の「パープルヘイズ KUROSUGURI Sour Ale」。口内で急速に酸味が広がってゆく疾走感のある一本。

「美味しかった」で終わらせない

「JouZo BEER BASE」は製造だけではなく、ブリュワリーとしては珍しい飲食スペースを併設しています。普段、缶や瓶で飲むことの多いクラフトビールを生で、しかも醸造家自らが注いでくれるという贅沢な空間ですが、住友さんは地域の未来を見通してこのスペースを作りました。

▲フードは置いていませんが、地元のお客さんがおつまみを持ち寄り盛り上がります。猟師さんが自家製ジビエジャーキー(絶品!)を持ってくる日も。

「通販やほかのお店で飲んでもらった人たちに、“美味しかった”で終わって欲しくなかったんです。この美味しかったビールはどこで作っているのか? 一杯のビールから阿南市に興味を持ってもらい、実際に来てほしいなと。醸造所だけでは行ってみようという気にはなかなかなれないかもしれませんが、この空間があるだけで訪れたくなるのではないかと思ったんです。私の中でビールというのは手段。阿南市に来てもらうためのトリガー(きっかけ)なんです」。

▲タップの並んだ様子は世の全ビールラヴァーが興奮する景色。

オープンから3年。住友さんのその思惑通り、県外からお客さんは日々増えています。が、それ以上に地元の方の来店も多く、酒場としても日々賑わっているようです。旅の始まりの場所として、隣り合った地元のお客さんに魅力的なスポットやグルメ情報をここで仕入れるのも楽しいかもしれませんね。


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Jouzo BEER BASE
阿南市那賀川町手島榎瀬42
tel.050-7115-2045
https://jouzo.co.jp/


JouZo BEER BASEの商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

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