「神山まるごと高専」学生まるごと日記【第12回】
自然からも“まるごと”学ぶ
~地域と関わりながらの、米づくり~

「神山まるごと高専」学生まるごと日記【第12回】 自然からも“まるごと”学ぶ ~地域と関わりながらの、米づくり~
2023年4月、徳島県の山あいにある町、神山町に開校した「神山まるごと高専」。全国で20年ぶりに新設された、全寮制の高校専門学校として全国から注目を集めています。“テクノロジーとデザイン、起業家精神”を学べるユニークな学校には、いったいどんな学生が集まり、どのような勉強や寮生活を送っているのでしょうか。気になるあれこれを学生自らが綴る、人気連載です。

“神山まるごと高専生”の今がわかります。お楽しみください!
下島夏さん

【第12回】自然からも“まるごと”学ぶ
~地域と関わりながらの、米づくり~

書き手:下島夏さん(2年生)


第12回を担当するのは、2年生の下島夏(しもじまなつ)です。今回ご紹介するのは、有志が今年一年かけて行った「米づくり」。野菜やお米を育てて食べるだけでなく、町や地域の方とも関わりながら活動しているプロジェクトです。その中でも、昨年、私と後輩が取り組んだ「米づくり」について、書いていきます!

田んぼ
▲寮から自転車で15分かけて、毎日通った田んぼ。大地の恵みに感謝です。

地域の方に教えていただきながら、開校一年目から毎年続けてきた米づくり。しかし、今まで先頭に立って活動してきた先輩が今年はサポート役に回ることになり、「誰か中心になってやりたい人はいませんか?」という募集がLINEに届いていました。

私の実家は農家なのですが、米ではなく野菜をメインに栽培しており、米づくりの経験はあまりありませんでした。しかし、春休みに原田マハさんの『生きるぼくら』という本を読み、今年は米づくりに挑戦したい、と思っていたため、同じく手を挙げた一年生のメンバーと二人で、米づくりに挑戦することになりました。

籾(もみ)の浸種(しんしゅ)、籾まき、田起こし、代かき、田植え、その後の水の管理や草取り、稲刈り、脱穀、籾摺(もみす)りと、ひととおりの経験をした中で、特に印象に残ったことが三つあります。

水管理の様子
▲水管理の様子。どのくらいの量の水を入れれば田んぼがいっぱいになるのかわからず、最初は苦戦しました。

一つ目は、田植えまでの準備です。田植えで植える苗を育てるために、数週間をかけて、籾を水につけ、それを土にまかなければなりません。また、田起こしや代かきなど、田んぼの準備も重要です。

寮の駐車場の一角で育てていた苗
▲寮の駐車場の一角で育てていた苗。今年の春はとても暑く、油断するとすぐに土が高温になってしまうため、授業の合間を縫って水やりをしました。

そんな大切な時期だったのですが、「どんな段取りで進めていくか」「何を準備しないといけないのか」について自ら考えられておらず、協力してくださる地域の大人に提案されたことをただやる、という状態になってしまっていました。

協力してくださっていた方がそのことを指摘してくれ、「『忙しい』『他のことで時間がない』というのは、『米』や『野菜』には関係ない。植物は生きてる」とも伝えてくださいました。そこから、心構えを少しずつ変えられた気がしますし、この時の言葉がなかったら、中途半端な気持ちで続けてしまい、達成感も悔しさも得られなかったと思います。

田植え
▲田植えの様子。泥の中を動き回っているうちにプロレスが始まったり、歌を歌ったり。青空の下で田植えをする時間が、本当に幸せでした。

集合写真
▲田植えの最後に撮った集合写真。一つずつ手で植えていくのは大変でしたが、終わったときには大きな達成感がありました。

二つ目は、田んぼの草取りです。一年間米づくりをしてきた中で、これが一番大変でした。それには様々な原因がありますが、一番大きいのは、<農薬を使わなかったこと>だと思います。

まだ籾まきをしたばかりの頃、農薬を使うかを決めなければならなかった時に相談した地域の方が「農薬は、病気や虫を防ぐことで少しでも多くのお米を穫るためにあるもの」と言っていたことがありました。であれば、ただの学生で、農業で食べているわけでもない自分たちは、自然に負荷をかけてまで、「少しでも多く、少しでも効率的に」米づくりをしようとしなくてもいいのではないか。後輩とそう話し合い、農薬を使わずに米を育てていくことを決めました。

しかし、夏の暑い中での草取りは想像以上に大変でした。素人目には稲と同じようにしか見えないヒエが、次から次へと生えてきます。たくさん抜いていくうちに少しわかってくるのですが、それでも間違えて稲を抜いてしまうこともしばしばでした。私たちの手だけでは除草が追いつかず、他の学生やスタッフさん、地域の方に何度も手伝ってもらいながら、草を抜きました。

水路で頭から水を被る友人
▲草刈りは朝早くから始めてもすぐに暑くなってきてしまい……。最後には水路で頭から水を被る友人。

田んぼに太陽が反射している様子
▲早起きは大変でしたが、朝の田んぼに太陽が反射している様子は本当に美しくて、何もかもを忘れられるようでした。

三つ目は、稲刈りと収穫祭です。いっぱいに実った稲を収穫し、稲架(はざ)にかけていきます。稲架とは、刈り取った稲の束を乾燥させるための木の棚です。最初は2時間程度で終わるだろうと思っていたのですが、いざ始めてみるとなかなか終わらず、結局休憩も含めて5時間ほどかかってしまいました。

稲刈りの様子
▲稲刈りの様子。お手伝いに来てくださった地域の方が私たちの数倍の早さでお米を刈っていて、熟練した技の凄さを感じました。

体力的にもハードでしたが、手を動かしながら「おにぎりにしよう」「味噌をつけて食べよう」とまだ見ぬお米について話す時間は、とても満ち足りたものでした。

そして12月、育てたお米を使って、収穫祭をしました。お世話になった方を呼んで、みんなで鍋を囲みながらご飯を食べました。自分たちが籾から作ったものが何倍もの量になったこと。それを食べた人が、「おいしい」と言ってくれること。そのことが、すごく嬉しかったです。

ご飯が炊いた様子
▲収穫祭でご飯が炊けた時に喜ぶ私(左)。炊飯器の蓋を開けると、周囲から「おお〜」と歓声が上がりました。

炊き上がったご飯
▲炊き上がったご飯。先輩が手作りしたという味噌が、ご飯によく合いました。

多めに炊いたつもりだったお米はすぐになくなり、〆のうどんを食べながら来年の米づくりについて話し合いました。来年もこうやって美味しいお米を育てるために、もっとたくさんの学生を巻き込みながら活動していきたい。以前から持っていた思いですが、それがより強くなりました。

以上、学生有志による米づくりの紹介でした。

神山まるごと高専では、学校の中だけでなく、町に出て、地域の人と関わりながらの学びも大切にしています。私たちの他にも、町のお祭りの運営に関わったり、わたあめ屋さんとして活動したり、猟師さんに猟を教えてもらったりしている学生がいます。

今は受け取ってばかりですが、いつも私たちを見守り、応援してくださる町と町民の皆さんに、いつかお返しができればいいなと思います。最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

<書き手:下島夏(2年生)>