[連載コラム][第20回]
今日は、どこから見てみましょうか。

[連載コラム][第20回]<br>今日は、どこから見てみましょうか。

何度も作ってしまう、鶏肉と大根の組み合わせメニュー。

 2023年1月7日は今年最初となるカフェの営業日だった。数日前から、何を作ろうかと考えていた。年末年始はお腹が空く暇がないくらい何かしら食べていたから、少し胃に優しいものがいいな。そういえば、七草の日だ。じゃあ七草を使うのは決定だな。でも、七草粥って一口くらいでよくって、あまりたくさん食べられないんだよな……。そんなことを一通り考えて、迷った末に決めた初ランチはこの時期の定番メニュー「大根と鶏肉の角煮風煮込み」をメインにし、七草を副菜として添えたものだった。

▲2023年の初ランチ。中央の皿上にある右端の小鉢が七草の副菜。
▲七草を覚えようと努力してみるも、いつも5つくらいしか出てこない……。

 この時期の主役といえば圧倒的に大根だ。とにかく瑞々しくて美味しい。
 皮をむき、スティック状に長細く切って、味噌とマヨネーズを混ぜたソースにつけて食べるだけで美味い。大根の皮も、棒状に切ってポン酢に付けておけば、ポン酢漬けの一品ができる。

 そして、この時期カフェでよく作るのが、「大根と鶏肉の角煮風煮込み」と「鶏肉のみぞれ煮」である。簡単で、美味しく、大根をたくさん食べられるので本当に頻繁に登場している。

▲カフェの冬の定番メニュー「大根と鶏肉の角煮風煮込み」。

 角煮風煮込みは、中村正明さん(『和洋遊膳 中村』店主)のレシピを参考にして作っている。本家のレシピに興味がある方は「みんなのきょうの料理」内、「鶏もも肉の角煮風」として掲載されているのでそちらを参考にして欲しいが、私の作り方をざっくりと紹介したいと思う。調味料などの分量はあえて入れていない。味を見ながら自分好みに仕上げてもらいたい。

 大根を太めの輪切りに切ってまた半分に切り、米の研ぎ汁で茹でる。研ぎ汁がなければ、水にお米を入れて、一緒にゆでる。その間に、鶏肉を皮目からフライパンで焼く。ちなみに、鶏肉は煮込んでいる間に柔らかくなって溶けてしまうので、少し大きめに切っている。鍋に白だし、酒、砂糖、醤油を入れて鶏肉と大根を入れて煮込む。このくらいから、別の鍋で茹で卵を準備しておく。20分ほど煮込んだら、このレシピのポイント、たまり醤油にカレー粉少々を混ぜたものを加える。これによって、コクが増し、豚の角煮のようによく煮込まれた、テリッとした色に仕上げることができる。そしてまた少し煮て、茹で卵を加えてから、最後に片栗粉を水で溶いたものを入れてトロみをつける。
 本来のレシピには、みりんも書いてあるが、私はあまり使っていない。あとはお客様を待ちながら煮込むだけ。最後にネギを乗せて、お好みで辛子をつけて食べてもらう。

 煮込めば煮込むほどに美味しいし、大根を2、3本すぐに使い切ることができる。しかも、日増しに美味しくなっていくので、たくさん作っておいて、もし飽きてきたらカレールーを入れれば、コクのあるカレーのできあがり! 最後まで美味しく味わい尽くすことができるのだ。

 もう一つのみぞれ煮は、とても簡単。大根1本分の大根おろしに酒、砂糖、ポン酢を加えて煮立てて、焼き色をつけた鶏肉を加えて一緒に煮込むだけ。大根おろしの手間さえクリアできれば、これも角煮風煮込みと同様、大根まるごと1本を瞬く間に美味しく消費できるメニューとなる。

 カフェでは、上勝で採れた旬の野菜をたっぷり使いたいと常々思っている。時には余ってしまうほどたくさんできる食材。2年前には、もらいすぎて持て余していた大根を「フリー大根」としてお客様に配ったりもした。美味しい食べ方を知っていると、カフェでたっぷり作って、使い切ることができる。カフェでご飯を食べてもらうことが、地域の食材を「食べ切ってもらう」ことに繋がっていたらうれしい。

 皆さんのご家庭でも今が旬の大根を持て余していたら、ぜひポールスターメニューも作ってみてください。これらが大根を美味しく「使い切ってもらう」手段のひとつに加われば、それもまたうれしい。

▲「鶏肉のみぞれ煮(里芋入りバージョン)」をメインにしたいつかの定食。

 さて、七草はというと、今年は全て細かく切ってさっと塩茹でした後、ごま油で炒めて醤油で味付けし、釜揚げしらすと和えた副菜を作った。「ご飯のお供」になった七草はご飯がすすむ一品で、お粥ほど胃に優しくないけれど、美味しい副菜ができた。来年もこれかな。無病息災を願いながら、また今年一年、健康に美味しく過ごしたいと思う。