今日は、どこから見てみましょうか。
何度も作ってしまう、鶏肉と大根の組み合わせメニュー。 2023年1月7日は今年最初となるカフェの営業日だった。数日前から、何を作ろうかと考えていた。…
3月に入って早々、息子がインフルエンザにかかった。学年閉鎖になるまで広がった感染症は、私にも容赦無く襲いかかる。高熱と関節痛に耐えながら過ごしていると、出張中の夫からビデオ電話が。つらいよー、痛いよー、と夫に訴えかけてみても、彼はそんな私の言葉を気にもせず、次から次へとビデオ通話のフィルター機能を使って、変顔を見せてくる。「なんでやねん、このしんどい時に」とツッこむ私。笑っている自分。いつもこうだ。ふとした笑いを作ってくれる夫。彼がいない人生は、無味乾燥で面白味がないな。寝ながらふと、そんな言葉が頭をよぎる。
夫とは大学時代に知り合った。学年が2つ上の彼は卒業後、東京で就職しサラリーマンとして働いていた。私が大学4年生の時、就職せずに上勝町へ戻ると伝えると、彼は仕事を辞めて上勝に移住すると言った。まさか、と私も周りの友人たちも驚いた。休日ともなれば友人たちとお酒を飲んだり、遊びに出かけたりと、都会の暮らしをエンジョイしていた彼が、田舎の暮らしに馴染めると思わなかったのだ。
彼が移住することを決めた背景には、東日本大震災の体験があった。地震発生当時、彼は会社のオフィスにいた。地震がおさまり家に帰ろうと思っても、電車やバスが動かない。しかたなく、家まで4時間かけて歩いて帰ったという。その時、自身の生き方や暮らし方を考えたそうだ。彼のタイミングと町内の企業が求人を出していたことが重なり、2011年の11月、上勝町へと移住することとなった。
彼と結婚して、今年で10年目になる。最近では、年下の子たちと話す機会が増えて「結婚ってなんですか?」「夫婦はどんな存在ですか?」という質問を受けることも多くなった。それに上手く答えられているようには思えないが、私たちは上手に、互いに依存し合って生きていると思う。
旅行に出れば、彼と私の違い、それぞれの強みと弱みが分かりやすい。私は旅行前からしっかり調べたいタイプ。ネット記事、雑誌、動画などを見てリサーチし、何度も頭の中でシミュレーションして、予約なども確認しつつスケジュールを組んでいく。片や夫は、ノープランタイプ。航空券だけ持っていれば、準備も前日かその日の朝に済ませて出て行くくらいで、その時の流れに身を任せるように行動する。でも、現地で何か起こった時に機転が効くのは彼の方だ。ケンカしながらも、持ちつ持たれつの関係。それが心地よくて、10年一緒にいるんだと思う。
カフェをオープンした2013年当初は、毎日のようにケンカしつつ、2人でお店に立っていた。今はそれぞれ別の仕事をしていて、一定の距離があるからか、ケンカは一時期よりも減っている。犬の散歩や、買い物へ行く車内で、私たちはよく話をする。読んだ本の話、こどものこと、仕事のこと、これからのこと……。特にまちづくりについては、お互い興味があるからか、時にヒートアップすることがある。すると息子が「父ちゃん、母ちゃんケンカするな」と割って入る。「ケンカじゃなくて、これはディスカッション」そう諭す夫。でも息子には、よくケンカする両親に写っているかもしれない。
二人ともコーヒー好き。時計や服など、互いの持ち物をよく交換する(私が勝手に夫の服を着て怒られることが大半)。本も嗜好が似ていて、同じものを買って帰ってくるなんてことも……。なんやかんや、私たちは根っこがとてもよく似ている。
一方で夫はスポーツが好きだが、私は大の苦手。テーブルの上に何も置きたくない私に対して、夫はコップを置きっぱなしでも寝られる人。でも、掃除を始めれば夫の方が細かく丁寧に掃除する。真面目に考えすぎる私と、楽観的な夫。そうやって私たちは、互いの凹凸を少しずつ補い合い、できないことは、できる方に任せる依存し合うような関係性。それを夫婦と呼ぶ人もいるだろうし、同志と言ったり、パートナーと言ったりする人もいるかもしれない。