今日は、どこから見てみましょうか。
夫と私の関係性。 3月に入って早々、息子がインフルエンザにかかった。学年閉鎖になるまで広がった感染症は、私にも容赦無く襲いかかる。高熱と関節痛に耐え…
新しい春がやって来て、早くも去ろうとしている。ピンクや赤、黄色で鮮やかだった山や野原は、花びらを落として若葉をグイッと出し始めた。日によっては降る雨も強く、雹が降ったり雷の音が聞こえたりする日がある。あぁ、次の季節に移ろうとしているんだね。町を包む色や匂いが教えてくれる。
こごみ、ウド、セリ、タラ芽、木の芽、パセリなど、いま上勝町の産直市「いっきゅう茶屋」に行けば山菜と筍祭りである。どれもこの時期だけだと思ったら惜しくて、衝動買いしてしまう。筍ご飯、天ぷら、おひたし……。独特の香りと苦味を味わえる大人に、私もなったんだな。
この時期、私の特にお気に入りレシピは「パセリと釜揚げしらすのパスタ」。フライパンにオリーブオイル、ニンニクのスライス、鷹の爪を加えて熱し、しらすとパセリを入れて塩で味付け。そこにパスタを加えて混ぜ合わせ、最後にまた刻んだパセリをのせる。パセリは苦手だったけれど、このパスタに出会ってから、春の楽しみがひとつ増えた。
4月から新しい体制でカフェが動きはじめた。店内のレイアウトやメニュー、定休日を変えてのリスタート。同じタイミングで他にも新しいプロジェクトが始まろうとしているから、何かと報告・申請・準備に慌ただしい日々。1日が終わった頃には、ふぅーと深いため息がでる。
自然も仕事も家も、変化が激しいこの時期。毎日忙しいと、こなす技術が向上して、じっくり見るとか浸るとか、そういったことを疎かにしてしまいがち。あれ、昨日のご飯何食べたっけ? から始まって、なんでこんなに忙しいんだっけ? というように。
ある日、町内にお住まいのNさん宅を訪れたときに「行(こう)」というタイトルがついた冊子を見つけた。昔インドやネパールを旅行していた時に書いていた「ネパール行」「インド行」。上勝に住んで40年近くになり、定住して「行」だけが残ったのだという。許可を得て中身を読んだら、そこには日々起こった事柄だけが書かれていた。誰が訪ねてきた。何を食べた。野菜が育った、というように。驚くほど、そこに感情は含まれていない。
毎日をそのまま記録する。Nさんに触発されて、私も書いてみている。変化が激しいからこそ、毎日コツコツと続ける習慣を大事にする。変えることと、変えないこと。そのバランスをとろうと意識して日々を過ごせれば、自分を見失わなくて良さそうだ。
上勝に暮らしていると、目にする草花によって季節の移ろいを感じることが多い。コラムの文中でも季節の変化について書いているが、より深く自然の流れを感じてもらえるよう、今年一年間は、旬の草花を1つだけ私がチョイスしてご紹介していきたい。
毎年、両手で持つほど太い束にしてシャガの花束を近所の方からいただく。カフェで生けてよ、と。ある年、根つきのシャガをもらってカフェに植えた。そこから毎年、4月後半頃になったら咲いている。シャガって変わった名前だな、と常々思っていた。「射干」を音読みした「しゃかん」から来ているそうだ。射干というのは淡い色をしたアヤメの仲間を指す。サンスクリット語の「シュリガーラ」(शृगाल śṛgāla)が漢訳されたものとも言われているようで、シュリガーラは恐ろしい魔獣を意味する言葉だそう。独特の色合いが不気味だと言われたら、そんな風にも見えてくる。シャガの不思議は奥深そうだ。