今日は、どこから見てみましょうか。
季節の果物を使った「父の日」プレゼント。 カフェの庭で育ったあんずとびわが、収穫の時期を迎えた。数年前まで数えるほどしか実をつけなくて、美味しいとは言…
秋と呼べる時期はとてつもなく短い。夏の暑さが和らぎ、この間まで夜7時過ぎまで明るかったのに、今では夕方5時を過ぎれば暗い。朝晩は寒いし、ブタクサの花粉で鼻水が止まらない。体調を崩しやすい季節でもあるが、この短い季節を惜しむように、毎日の食卓には秋の食材を使った料理が並ぶ。
先日、隣町勝浦町の産直市「よってね市」に買い物に行くと、モクズガニが生きたまま売られていた。昨年お店で食べた時の美味しさを記憶していたので、食べたい!と思ったのだが、“生きたまま”を、果たして私は調理できるのかと不安になる。躊躇する私を見て、一緒に買い物していた息子が「買おう!僕食べたい!」と猛プッシュ。息子にそう言われると、喜ばせたくなるのが母親というもの。思い切って購入した。
家に戻る車中、後部座席から聞こえてくる「ガサガサ、ブクブク」という音。うごめいている……。カニたちが足を動かし、泡を吹いているのだ。途中立ち寄ったお店の店主さんに、「カニを買ったんです」と話すと、「茹でる時がな~~、大変なんよ。まぁ頑張って」と少しの脅しと励ましをもらう。
野菜やお肉など、普段から料理にはいろんな食材を使うが、その多くは気にも留めずに調理している。でも、生きたままのものを使い、その命の最後を自分が決めてしまうとなると、向き合い方が違ってくる。息子はまだ、怯える様子もない。
さぁ、本番。インターネットで茹で方を検索し、まずは洗うために一匹を掴もうと試みた瞬間、これまで大人しかったカニたちが一斉に動き出す。およそ15匹のカニたちが、台所シンクの中を動き回る。「いやーー!!!きゃーーー!!!」たまらず叫ぶ私。夫は「俺カニとか無理やから」と、早々に別の部屋に避難して我関せず状態。
見かねた息子が、私のスマホを使って、隣町で農業を営む友人にSOSを出す。「早く来て。お願い、早く。今すぐ来て」と、ボイスメッセージで伝えている。すまん息子。そして友人。私じゃ手に負えなかったぜ!
ほどなくして友人が到着。淡々と鍋にカニを投入していく。助かった……。茹で上がったカニは赤く、美味しそう。早速割って食べる。サイズが小さいから、食べられる身はあまりないけれど、かにのミソやたまごなどは絶品。さっきまでの騒動はなんだったのかというくらい、静まりかえってみなカニを食べることに集中している。うまい。
食べ終えた後は、再び殻を茹でて出汁をとり、ヒラタケと合わせたお味噌汁や雑炊を作って食べた。デザートにはぶどう。秋だねぇ。美味しく食べるための格闘は、年に一度くらいならできるかもしれない(自信はない)。
今回のコラムでは、季節の食材で秋の訪れをお伝えしたが、香りで秋を知らせてくれるのは、キンモクセイ。なんとも言えない甘い香り。香水にして付けたい!と思う人もいるのでは。
特徴的な香りに対して、花は可憐で小さく控えめ。そこから、花言葉の「謙遜」が付けられたのだという。一方で「気高い人」という言葉も付けられていて、これは雨の中でも気負わずに潔く花を散らせることから。このコラムで花言葉をいくつかご紹介しているが、今回は、なるほど納得といったものだった。
昔は家の前に大きなキンモクセイの木があった。大好きだった。花は散りやすくて、掃除するのがウンザリすることもあるが、その香りに癒されて、その煩わしさも気にならないほどだった。上勝町に来る際には、ぜひ車の窓を開けてきてほしい。所々で、きっと良い香りが漂ってくるから(ブタクサの花粉も一緒に入ってくるかもだけど……。)
花言葉参考図書:『想いを贈る 花言葉』(国吉純監修/ナツメ社刊)