徳島生まれの「阿波しじら織」は、でこぼことした独特の縮みを持つ木綿の織物。肌触りはさらりとしていて、なんとも言えない風合いが魅力的です。特に阿波藍を使…
はじめに
“四国の右下”とも呼ばれて親しまれてきた「みなみ阿波」。徳島県の人口、第2の都市「阿南市」を含む徳島県南部エリアを指す総称です。阿南市から高知県境に向かって西に進めば、町の9割が森林という山深い「那賀町」へ。一方で、阿南市から国道55号を南下し、太平洋に向かって車を走らせれば、四国最東端の蒲生田岬(かもだみさき)や、ウミガメが産卵に訪れることで知られる大浜海岸、断崖絶壁の千羽海崖(せんばかいがい)など、太平洋沿岸の雄大な自然が残る「美波(みなみ)町」、「牟岐(むぎ)町」、「海陽(かいよう)町」に訪れることができます。
これら1市4町からなる「みなみ阿波」は、山間部では木頭ゆずや相生晩茶など、太平洋側の町では伊勢エビやアワビなど、山の幸にも海の幸にも恵まれた食材も豊かなエリアです。
第2回は、「みなみ阿波」の中でも四国八十八ケ所第23番霊場「薬王寺」の門前町としてにぎわう美波町を歩いて、この町ならではのお土産をご紹介します。

第2回
厄除けの寺とウミガメのまち、美波町を歩く

県南の海産をぎゅっと詰め込んだ一品
徳島市から南下し、美波町まで車で走ること約1時間。
美波町の中心地である日和佐地区に入ると、厄除けの寺として全国的にも有名な四国八十八ケ所霊場第23番札所「薬王寺」が出迎えてくれます。

この薬王寺から“ウミガメが産卵に来る浜”として知られる大浜海岸までは徒歩で約20分。街歩きを楽しむのにおすすめの小さな町です。
薬王寺の長い石段を登った先にある展望台から町を見下ろしてみると、日和佐川を挟むように建ち並ぶ昔ながらの町並みから大浜海岸まで一望できて、この町のコンパクトさが一目でわかります。

「恵比須洞やホテル白い灯台がある、海沿いの県道25号を車で走っているときに見える大浜海岸がきれいですね」と、おすすめの景色を教えてくれたのは「江本水産」の江本達哉さん。

大阪の調理師学校を卒業し居酒屋やイタリアンなどの料理店で働いた後、家業である漁業を継ぐため美波町へUターンした江本さん。元料理人の漁師です。
「2005年に町内に道の駅日和佐ができたとき、お土産品になるものをとつくったのがこのタコやイカを使った沖漬けなんです」
ご自身で調理したというその味は「オーソドックスでシンプルな味付け」と言いますが、そのシンプルさが人気の秘密。素材の味を存分に活かしつつも、甘辛い味わいがごはんのお供にぴったりです。

その他、試行錯誤を重ねながら県内産の海の幸を使ったさまざまな加工品づくりを手がけています。現在の商品ラインナップはタコ・イカの沖漬けのほか、町の名物「うつぼ」を使った「うつぼチップス」や、阿南市の「一(はじめ)水産」の養殖牡蠣「阿波はじめ牡蠣」をにんにくと唐辛子を効かせた特製オイルに漬けた「真牡蠣オイル漬け」など、全6種類。
「鮮度の良さが一番のこだわり」と話します。

醤油ベースの特製ダレで味付けし、やわらかく煮込んだ「タコのうま煮」は、そのまま食べてもよし、大根などと一緒に煮てアレンジしてもよし。手軽におかずを増やせて大助かりしそうな一品です。
「『タコのうま煮』を入れて米を炊くだけで炊き込みごはんができますよ。1缶がちょうど1合分なので、2合炊くときはその分だけだし汁を足してもらえればOKです」と、元料理人ならではのアドバイスをいただきました!
ごろごろとした大きな県産タコが楽しめる贅沢な炊き込みごはんが完成。 甘めの出汁が効いて何杯でも食べられそうです。

江本水産の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
タコのうま煮 2個セット
江戸時代の建物が残る町並み
古くから黒潮の恵みを受け、回遊魚やタコ、イカなどが獲れてきた漁師町でもある美波町。温暖化などの影響もあり漁場が年々変わってきているといいますが、日和佐川の河口近くにある日和佐港では、毎年12月のイセエビ漁やウツボ漁の繁忙期には一番のにぎわいをみせるといいます。


日和佐港の裏手には、江戸時代、黒潮の流れを活かして京阪神へ物資を輸送するさまざまな業務の拠点となった廻船(かいせん)問屋を中心に栄えた町並みが残っています。

また、日和佐川に架かる厄除け橋を渡って薬王寺に向かう参道へ入ると、「桜町通り」と呼ばれる門前町らしい商店街があります。周辺には、明治・大正期に建てられた建物が数多く残されていて、「美波遺産」に認定された家屋を巡りながらの散策もおすすめです。
昭和5年から愛される名店
そんな風情ある桜町通り商店街に「昭吾堂」が創業したのは、店名の由来にもなっている昭和5年(1930年)のこと。町のお菓子屋さんとして当時は和菓子の販売が中心でしたが、現在は洋菓子や焼菓子などを取り扱っています。
2016年には、桜町通り商店街を出てすぐ、旧店舗からおよそ500メートル離れた薬王寺前に移転。カフェスペースを併設した「アジュール昭吾堂」としてリニューアルオープンしました。


「当時、まだ町にお茶をゆっくり飲める場所が少なかったので、そんな場所が欲しいというお客さんからの声を聞いて移転リニューアルをすることに決めたんです」と、3代目の庄野直樹さん。

大阪の洋菓子店で6年間修行したのち地元・美波町へUターンした庄野さん。「ひわさプリン」や「海がめマカロン」などの看板商品を生み出しました。
「最初は貝殻の形をしたマカロンをつくっていたんです。そうしたらお客さんが『ウミガメの形もつくってみたら?』とアドバイスをしてくださって。その声をきっかけにこの海がめマカロンが誕生しました」
その後、子ガメを模したマカロンや、和三盆糖を使用した「カメたま」も誕生し、ウミガメファミリーが楽しめるお土産品として人気に。

親がめはココナッツの味わい。
6色の子ガメマカロンは、ゴマ、抹茶、オレンジやレモンの皮など自然由来の風味を生かしてつくられています。

アジュール昭吾堂の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
海がめマカロン たまて箱

一番のロングセラーはロールケーキ「ルラージ」。修行先のオーナー直伝のロールケーキで、メレンゲ生地に3種類のチョコレートを加えてふんわりと焼き上げています。
「ひわさプリン」は、徳島県産の阿波和三盆糖を使ったなめらかで口溶けのよい一品。キャラメルの代わりに使われた黒蜜糖もあわさって、上品でやさしい味わいです。
「もともとこの町の名前は日和佐町。2006年に隣町の由岐町と合併して美波町になるとき、どこかに“ひわさ”の名前を残したかったんです」
生まれ育った町への想いを込めたプリンは、店の一番人気商品になりました。

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濃厚ひわさプリンとロールケーキ「ルラージ」
日和佐を見守り続けてきた“大岩”
庄野さんにこの町の好きな景色を尋ねてみると「小さい頃によく登って遊んでいた思い出の場所」を教えてくれました。「おいわ」という、小高い山の上にある大きな岩だそうです。
美波町役場裏にある階段(津波避難経路としても整備)を登ると金比羅神社へ。そのまま、「四国のみち」のハイキングコースに選ばれているという、木々に包まれた気持ちの良い山道を進みます。

20分ほど歩くと、突如目の前に大きな岩が!

この山の上の大きな岩が、「大岩(おいわ)」と呼ばれ、地元の方々に昔から親しまれているスポット。足場を見つけながら慎重に岩の上まで登ると、薬王寺から見る景色とはまた違った絶景が広がっていました。

ちょうど大岩の下に置かれたベンチで休憩していた地元の方から「昔は木がもっと少なくて、町並みももっと見えとったんやけどなあ」と教えていただきました。眼下の町側からも大岩が見えるほどだったそうです。
里山を復活させる樵木(こりき)林業
「この町の山には昔からウバメガシやカシという燃料に使われる照葉樹がたくさん生えていたことから、薪や炭の製造が一大産業だった歴史があるんです。江戸時代、廻船問屋が京阪神に一番多く輸出していたのが薪炭でした」
そんな話を聞かせてくれたのは「四国の右下木の会社」代表の吉田基晴さん。

「四国の右下木の会社」では、山の作業道づくりから伐採、炭づくり、薪炭の販売までを一貫して行い、この地で350年以上続いてきた林業システム「樵木(こりき)林業」の復活に取り組んでいます。
「この町では薪や炭のことを“樵木”と呼んでいたことから樵木林業といわれています。樵木林業では、適切に伐採することで伐採後の切り株から新芽が生じ、それが成長することで、循環型の森林へと再生していくことができるんです」
この持続可能な「みなみ阿波の樵木林業システム」は、2025年1月、農林水産省により日本農業遺産に認定されました。

「1960年代になって薪炭産業が衰退し、伐採されることがなくなって放置された森林は巨木化していっています。そうすると虫の被害によるナラ枯れも拡大し、山の防災力が低下してしまいます。ナラ枯れした木は炭にすることもできません」
そこで、余りある町の資源に再び価値をつくり出すことで、山の機能を取り戻し、里山の再生を目指しているのが「四国の右下木の会社」です。

およそ30年ぶりにこの町で事業として復活した炭焼き。3週間かけて1000度以上まで温度を上げた窯で炭をつくります。6トンの原木からは700キログラムの貴重な炭が出来上がるそうです。

じっくりと水分を飛ばし雑味が無くなるよう丁寧に焼かれた「樵木備長炭」は、燃焼時に匂いや煙が少ない高品質な高級備長炭。遠赤外線の量が多く、肉や魚を焼けば、内側ふんわり外側はカリッと焼き上がり、繊細な調理を要求される県内外の高級料理店に支持されています。
「私たちは、炭屋を目指しているわけではないんです。まずはみなみ阿波で、樵木林業の復興と備長炭づくりを通して、里山の価値と健康を取り戻します。そして、そのモデルを、同じような森林問題で悩む各地にも拡げることで、全国の里山の復興に繋げたいと思っています」

四国の右下木の会社の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
樵木(こりき)備長炭 1㎏
美波町が誇る秋祭り「ちょうさ」
2012年、生まれ育った美波町にサテライトオフィスを開設したことを機に、Uターン移住してきた吉田さん。
「日和佐川上流にある大きな岩“くじら岩”ではよく遊びましたし、恵比須洞から大浜海岸へと向かう海沿いの道は好きな散歩コースですね」
そんな吉田さんが何よりも「美波町の誇り」だと話すのは毎年10月に開催される「日和佐八幡神社秋まつり」。「ちょうさ」と呼ばれるいかだのような形状をした太鼓屋台が町内を巡り、クライマックスには大浜海岸を練り歩き、担いだまま海に入ります。町内会ごとに8台ある「ちょうさ」が波しぶきを受ける様子は圧巻!

「かつて薪炭を運んでいた廻船問屋が大阪の祭りの文化を持ち帰ってきたのが『ちょうさ』のはじまりだと言われているんです。子どもの頃から自分の体に染み付いている『ちょうさ』の太鼓のリズム。薪炭のルーツとも繋がっていたのにはハッとしました」と吉田さん。


海、山、町…美波町の風土や歴史を感じるお土産を探しに町歩きをしてみてはいかがでしょう。地域の人々に愛され、伝統ある祭りが今なお地域に息づく町。迫力ある「ちょうさ」も必見です!
江本水産
tel.090-8977-6739
https://fisherman-tatsuni.com/
アジュール昭吾堂
徳島県海部郡美波町奥河内寺前237-4
tel.0884-77-0126
https://www.instagram.com/shogodo02/
四国の右下木の会社
徳島県海部郡美波町奥河内弁才天54-5
tel.0884-70-1779
https://treecompany.jp/
美波町観光協会
https://www.minamikankou.jp/

江本水産の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
徳島県美波町(日和佐地区)出身。かつて大阪の厨房で腕を振るった経験を持つ、40代の元料理人で現役漁師が作るアオリイカの沖漬け。地元の海で獲れた新鮮なアオリイカを使用し、料理人としての技と感性を活かして、一つ一つ手作りしています。

アジュール昭吾堂の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
当店は1930年の創業以来90年、徳島県南部の「うみがめの町」美波町でSweetsを販売。 四国八十八か所23番札所薬王寺の門前町に位置し、地元の食材を使用したイートインやオリジナルスイーツが楽しめるカフェも併設。地域のみなさまをはじめ、お遍路巡礼の方々にもご利用いただいております。

四国の右下木の会社の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
ウミガメの町 徳島県美波町で、江戸時代から続く地域伝統の循環型里山林業「樵木(こりき)林業」の復興と、備長炭づくりを行う株式会社四国の右下木の会社。 太平洋の潮風が育てた里山のウバメガシを原料にした「樵木備長炭」を是非ご活用ください。