徳島平野「きた阿波」に広がる、美味しい恵みを求めて【第1回前編】
生産量全国No.1の野菜から生まれたもの~藍住町~

徳島平野「きた阿波」に広がる、美味しい恵みを求めて【第1回前編】 生産量全国No.1の野菜から生まれたもの~藍住町~

はじめに

今回注目するのは、鳴門市から板野郡の吉野川北岸東部にあたる徳島県北東部エリアです。徳島県を東西に横切るように流れる吉野川は、かつて暴れ川と呼ばれ数々の大氾濫を起こした歴史を持つ川ですが、それにより肥沃な土壌を運び、吉野川中下流域に広がる徳島平野ではその恵みを受けてさまざまな農業が発展してきました。一方で、県最北東部の鳴門市から四国の中央部へ向かって阿讃(あさん)山脈のふもとを走る撫養(むや)街道は、四国の東玄関口として人や物資などの往来で重要な役割を担ってきました。昨今では、大型ショッピングモールが進出しにぎわいを見せる板野郡藍住(あいずみ)町周辺は県内でもっとも人口増加率の高い地域になっており、郊外型都市と農業地帯が混在する二面性を持ったエリアです。

今回、私たちはこの徳島県北東部を“きた阿波”と名付け、豊かな“きた阿波”の土壌から生まれた美味しいものをご紹介します。第1回でご紹介するのは、実は生産量が全国No.1の農作物から誕生した商品たちです。

<第1回>前編
生産量全国No.1の野菜から生まれたもの


じつは奈良漬の白うりはほぼ徳島産

「藍住町は農業が盛んなのに人口増加率の高い郊外型都市が発展している珍しい町なんじゃないかと思います」と話すのは、辰巳屋食品の代表・田中民夫さん。

▲辰巳屋食品の代表・田中民夫さん。自社の白うり畑の前で。

辰巳屋食品は、自社栽培のほか、板野郡内の40軒の契約農家から白うりをはじめとする漬物用の野菜を仕入れ、国産奈良漬や千枚漬けなどを製造販売する昭和10年創業の漬物会社です。大型ショッピングモールや大型チェーン店が建ち並ぶ県道からほど近い住宅街の一角に、自社の畑を併設する本社があります。

この辺りは「藍住町」という名前にも残っているとおり、かつては藍染めの原料になる「藍」の栽培が盛んに行われてきました。明治以降の藍の衰退につれて、たくあん用の大根や奈良漬用の白うりの栽培へと畑の姿を変えていったと言います。代々この地で藍栽培を行ってきた田中家でしたが、その時代の流れに合わせて先々代がたくあん製造を開始、先代が辰巳屋食品株式会社を設立して国産奈良漬の製造をはじめました。現代表の田中さんは11代目だそうです。

「高品質の白うりが栽培できると需要が伸びて、1955年(昭和30年)ごろには徳島県下3万トンの収量のうち、2万トンが藍住町とその周辺地域のものだったんですよ」と田中さん。現在でも、この白うりの生産量はなんと徳島県が全国トップ! その国内シェア率は8割近くにおよび、全国で流通している国産奈良漬のほとんどに徳島県産の白うりが使われているのです。


暑い夏が旬の白うり

白うりの収穫がはじまったと聞きつけたのは6月の初旬。
8時に辰巳屋食品へと向かうと、この時期はまだ白うりの成長が遅く、収穫量はまだ少なめ。いつもより早めに収穫作業が終わっていました。早朝5時ごろから収穫作業をはじめ、通常は約3〜4時間で作業を終えます。

「暑い時期だから少しでも涼しい時間じゃないと作業ができないんですよ」
収穫は6月から8月頃まで続きます。

▲本社に隣接する白うり畑。冬は千枚漬け用のかぶら栽培を行っており、その残渣(ざんさ)を肥料として活用しているそうです。
▲もうすぐ収穫できるサイズに成長した手のひらよりも大きな白うり。
▲水洗いし、専用のカッターで縦半分にカットした後、種を取り除きます。

収穫後は水洗いし、縦半分にカット。
年季の入った専用の道具を使ってスタッフさんたちが慣れた手付きで素早く種を取り除いていきます。

▲白うりの種を取り除く様子。

その日のうちに塩漬けを行い、さらに翌日に本漬け。しっかりと漬け込んで、最低2ヶ月間熟成させた後、酒粕へ漬け替え作業を繰り返すことで、甘みと旨みが加わった深い味わいに仕上がるそうです。


ニーズに合わせた奈良漬を展開

濃く深い味わいを楽しめる昔ながらの味「極上奈良漬」を守りながらも、あっさりとした味わいに仕上げた現代の定番「すっきり奈良漬」など、多種多様な商品ラインナップを展開する辰巳屋食品。「老舗料亭やホテル、飲食店など全国各地にある得意先ごとに希望に沿った奈良漬もつくっています」と田中さん。

▲ 手前が「すっきり奈良漬」、奥は「きゅうり奈良漬」。

ラシクルモールでは、この比較的誰もが食べやすい味わいに仕上げた「すっきり奈良漬」3本と、パリッとした食感が楽しめる「きゅうり奈良漬」2本の食べ比べセットも販売中(ほか、5種食べ比べもあり)なので、好きな味を探してみるのもおすすめです。

「シンプルにごはんのお供として食べるはもちろんですが、細かく刻んで、チャーハンに入れたり、ピクルスのようにポテトサラダやタルタルソースに混ぜ込んだりするのも美味しいですよ」と、田中さんが奈良漬のおすすめの食べ方を教えてくれました。


辰巳屋食品の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
奈良漬2種食べ比べセット


地域の名産品をつないでいくために

時代のニーズに合わせた取り組みは奈良漬以外にも。
2024年から藍住町の特産物である春にんじんを広めたいと「にんじんスナック」の販売をスタート。また、2025年には後継者不足に悩む鳴門市の大毛島のらっきょうの製造を担い、「姫らっきょう」も自社商品として販売開始。「魅力ある地域の特産品が途絶えないように」と、田中さんは地域の農業の問題解決にも積極的に取り組んでいます。

▲藍住町産を用いた「にんじんスナック」と、鳴門市大毛島産の「姫らっきょう」。


癒しは地元の憩いの公園

そんな田中さんの憩いのスポットのひとつが、徳島自動車道「藍住IC」より車で5分ほどのところにある「桜づつみ公園」。春にはその名称どおり桜を楽しめ、夏には子どもたちが水遊びできる池もあり、カラフルな遊具がたくさんある広大な公園です。子ども連れにもぴったりなスポット。2024年にはバーベキューエリアもオープンし、よりいっそう家族団らんでのんびりできる場所になったそうです。

▲「桜づつみ公園」の多目的芝生広場。3800㎡もある。
▲春の「桜づつみ公園」。(画像提供:藍住町)

ほかにも整備された広い公園があちこちに点在するのも、都市部と広大な農業地域のハイブリット「きた阿波」らしい風景かもしれません。

後編は藍住町に隣接する板野町へ。
全国1位の生産量を誇る春にんじんを使った新たな美味しさに出合いました。


辰巳屋食品
徳島県板野郡藍住町奥野乾187
tel.-088-692-2103
https://naraduke.shop/



辰巳屋食品の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

奈良漬5種詰め合わせセット

野菜王国徳島で昔から栽培されている伝統野菜の「しろ瓜」と「四葉きゅうり」をベテランの職人が伝統製法で漬けあげた奈良漬の5種類詰め合わせ。さまざまなお食事場面に彩を添えます。