「神山まるごと高専」学生まるごと日記【第6回】
私たちの思いをまるごと表現する「高専祭」

「神山まるごと高専」学生まるごと日記【第6回】 私たちの思いをまるごと表現する「高専祭」
2023年4月、徳島県の山あいにある町、神山町に開校した「神山まるごと高専」。全国で20年ぶりに新設された、全寮制の高等専門学校として全国から注目を集めています。“テクノロジーとデザイン、起業家精神”を学べるユニークな学校には、いったいどんな学生が集まり、どのような勉強や寮生活を送っているのか。気になるあれこれを学生自ら、綴っていただきます。乞うご期待!

【第6回】私たちの思いをまるごと表現する「高専祭」

書き手:下島夏(2年生)


毎月連載している「学生まるごと日記」。第6回を担当するのは、2年生の下島夏(しもじまなつ)です。9月は学生の夏休みでお休みをいただきましたが、10月より再開します!今回紹介するのは、学校生活の一大イベントである高専祭「まるごと祭」。開校3年目を迎え、さらにパワーアップした「まるごと祭2025」について、書いていきます!

▲昨年の会場風景。木のゲートも学生が作ったものでいよいよ「まるごと祭」が始まるんだ…!とワクワクしたのを覚えています。

▲昨年の「まるごと祭」。最後に全員で合唱をしたのが思い出に残っています。

神山まるごと高専では毎年10月に「まるごと祭」を開催しています。3回目の開催となる今年は、前回が終わった直後から実行委員会が結成され、実行委員を中心に準備が進められてきました。4月には1年生なども加入し、現在では50人を超える大きな組織になっています。

▲実行委員会の活動の様子。来てくださった方に最高の体験を届けるため、毎日深夜まで話し合う姿を密かに尊敬しています。

そんな今年のコンセプトは、『Soul of Tech つくることは、いきること。』です。考え、悩み抜いた先の思考や私たちの中にある思いを、テクノロジーという媒体を使って表現し、まだ誰も見たことのないような化学反応を起こす。そんな意味が込められています。この「Soul」という言葉を調べてみると、「魂」以外にも「精神の深み」や「本質」という意味もあるそうで、それらを表現した先でどんな景色が見えるのか、私も楽しみにしています。

▲「まるごと祭2025」のキービジュアル。カラフルな6種類の図形で、まるごと祭2025を構成する「爆発」「パワー」「勢い」「衝動」「未完成」「揺らぎ」の要素を表しています。

そんな「まるごと祭2025」のコンテンツは、大きく分けて「テック展示」「まるごと高専生体験」「インスタレーション」「飲食」「物販」「授業成果物」「ステージ」「地域の伝統芸能」の8つ。その中に、授業などを通して身につけたスキルでそれぞれの「思考」を表現する、全部で62もの企画・グループがあります。

私が取り組んでいるのは、「チャチャイのチャイ」「紙屋書店」の2つです。5月頃からコンテンツの審査に向けて話し合いを始め、夏休みもそれぞれの帰省先をオンラインで繋ぎ、準備を重ねました。

▲「紙屋書店」のメンバーと夏休み中に行った準備のためのオンライン会議。バリ、フィンランド、三重と時間も場所もバラバラでしたが、いつも通り盛り上がりました!

「チャチャイのチャイ」は、2年生授業の「アントレプレナーシップ概論」から生まれた企画で、学生7人で活動しています。きっかけは、今年の春休みに海外研修でインドに行ったことです。暑い中でも周辺まで香るスパイス。吸い寄せられるようにお店に近づくと、昔ながらの土で作られたカップでチャイを売るおじさんがいました。熱々のチャイは本当に美味しく、歩き疲れた身体に染み渡りました。その体験をぜひ来場者の方にも味わってほしいと、準備を進めています。より異国感を全身で味わってもらうために、ただチャイを飲むだけではない様々な仕組みも考えています。例えば、授業で学んだテクノロジー(ウェブページ制作など)を活用することです。

▲インドで実際に飲んだチャイ。

また、今年の新たな見どころとして、「テック展示」があります。コンセプトは、「ものを作る力で、自己を表現せよ」。高専の3つの学びの柱の一つである「テクノロジー」を使って、自分の関心や情熱、未来への思いを表現します。

その一つが、「私の自慢の隣人展」です。昨年も行っていた企画で、「授業終わり、ホワイトボードを消してくれる人」「テスト前にテスト対策ノートを写真に撮ってみんなに送ってくれる人」などのたくさんの「自慢の隣人」に触れ、心があたたかくなったのを覚えています。

「優しさを可視化し、普段から誰かのためにと動いている人が報われる社会を作りたい」という思いから構想されたこの企画。今年はそこにテクノロジーの力が加わってよりパワーアップし、AR(拡張現実)やAI(人工知能)も活用した展示が行われます。「隣人くんさがし」では、OFFICE内のあちこちに設置されるARマーカーを読み込み、身近な優しい人を見つけてコレクションすることができます。普段は目立たず、感謝も見返りも求めない彼ら彼女ら。自分もそんな「自慢の隣人」の一人に少しでもなれたら、と思います。

▲この隣人は「ゴミがいっぱいになったら黙って捨てにいってくれる人」です。些細なことだけれど誰もやりたがらないことを進んでやってくれる人がいるおかげで寮生活が成り立っていると、いつも感じます。

そして、1日目と2日目、それぞれの夕方に行われるのは、「祭」です。少子高齢化や過疎化、コロナ禍での空白などにより、消えていってしまう文化が多くある今。「文化祭」、つまり文化のお祭りとして、それをどう未来に残していくのか、私たちの考えを表現します。

神山町では、地盤を固める作業から祭として発展した「棒搗き(ぼうづき)」が披露されてきましたが、高齢化や人口減少に伴い、現在は形を変えて行われています。「まるごと祭2025」では、本物の棒搗きを継承し、地域の一員として未来に紡ぎます。また、徳島県で400年以上行われてきた「阿波踊り」を全員で踊る「輪踊り」も行います。

私は昨年、阿波踊りに参加したのですが、いつでもどこでも踊りが始まる熱気と祭の高揚感に圧倒されました。神山町のお年寄りの方から棒搗きの思い出について聞いた時も、その風景を想像してワクワクしました。強烈な非日常感、その場に集まった人との一体感。そんな空間を「まるごと祭2025」でも作り出せることを、とても楽しみにしています。

▲一昨年の高専祭のラストで阿波踊りをした時の様子。輪になって踊るとやっぱり盛り上がりますね!
▲8月に行われた地域の祭で学生が棒搗きを体験した時の様子。「まるごと祭2025」では高さ2m以上の櫓を組み、本物の棒搗きを披露します!

まるごと祭は、一年に一度の、高専の中でも大きな行事です。それぞれの学生が、授業、各企画、実行委員などを通して、まるごと祭に関わっています。全ての学生が、自分の興味や情熱を表現して活躍し、たくさんの来場者の方も含めて、みんなで楽しめる祭にしたいと思っています!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

まるごと祭2025の詳細は以下の通りです。ご家族、ご友人などとお誘い合わせの上、ぜひご来場ください。学生・スタッフ一同、お待ちしております!

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まるごと祭2025
日時:2025年10月25日(土)、26日(日) 10:00~20:00
入場料:無料(神山町民以外の方は事前にチケット予約が必要です)
会場:神山まるごと高専OFFICE・HOME
コンテンツ、チケットなどの詳細は特設サイトをご覧ください!

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<書き手:下島 夏(2年生)>