“にし阿波”の山へ、町へ。文化と暮らしを探る旅。
【第4回前編】山深い“にし阿波”の四季折々の風景~つるぎ町・東みよし町~

“にし阿波”の山へ、町へ。文化と暮らしを探る旅。<br>【第4回前編】山深い“にし阿波”の四季折々の風景~つるぎ町・東みよし町~

はじめに

“日本の原風景”を感じる風景や文化に出合うことができる場所として、近年、徳島県内で注目のエリアというのが“にし阿波”。県西部に位置する「三好市」、「美馬市」、「つるぎ町」、「東みよし町」の2市2町の総称で、吉野川を挟んで、北岸には標高1060メートルの竜王山を含む讃岐山脈、南岸には徳島県最高峰の標高1955メートルの剣山を含む四国山地という険しい山々が連なっています。海外でも知名度の高い三好市の祖谷地区をはじめ、山間部を中心に独自の食文化や伝統が色濃く残る、徳島の“桃源郷”です。

徳島市内から高速道路で西に向かって2時間弱。“にし阿波”を訪れ、その山や町の暮らしを知り、そこから見えてくる魅力をシリーズでご紹介します。

最終回となる第4回は、にし阿波の奥深い山々の風土に根差した暮らしをご紹介します。前編はつるぎ町、東みよし町の山あいへ車を走らせました。



第4回<前編> 山深い“にし阿波”の四季折々の風景〜つるぎ町・東みよし町〜


あたご柿の産地、つるぎ町

にし阿波では、険しい傾斜地ならではの食文化が発展してきました。第1回でご紹介した「そば米」などの雑穀類が代表的ですが、他にも干し芋や干し大根などの乾物は、冬の山暮らしを乗り越えるための貴重な食糧のひとつです。標高1955メートルの剣山から吹き下ろす風は乾燥に適し、風味豊かな乾物に仕上がると言います。

▲ 柿畑から見下ろしたつるぎ町半田地区。

剣山のふもとに広がるつるぎ町半田地区は、干し柿用の渋柿「あたご柿」が特産品。徳島県や愛媛県などの限られた地域で生産されている希少な渋柿で、かつて盛んに行われていた葉タバコや養蚕の衰退に代わって、あたご柿の栽培がはじまったと言われています。

柿畑があちこちに見られるこの町では、軒先に吊るされた干し柿が冬のはじまりを教えてくれます。

▲ 手のひらほどの大きさのあたご柿。

11月、つるぎ町半田地区の柿農家「三誠」であたご柿の収穫がはじまったと聞きつけ、伺いました。


約一年かけて完成する柿酢

にし阿波ならではの傾斜の厳しい柿畑。収穫作業はひと苦労です。

代々柿農家を営む「三誠」では、2007年からあたご柿の生産だけでなく、加工と販売をスタート。あたご柿の干し柿のほか、柿酢づくりを手がけています。

▲ あたご柿の収穫の様子。除草剤は使用せず、カルシウムやマグネシウムなどの成分を含んだ牡蠣の殻を撒いた有機肥料の畑で育てています。

特に、柿酢は熟成させたあたご柿を「静置発酵法」と呼ばれる伝統的製法で仕上げるこだわりの一品です。時間と手間、職人の勘が必要な、昔ながらのゆっくりと時間をかける発酵法で、まろやかで旨味の多い柿酢をつくることができます。

約3ヶ月の熟成保存のあと、皮ごと樽に漬け込み、2回の発酵と3回のろ過を繰り返して約1年。じっくり時間をかけてつくることで、まろやかな酸味の柿酢になるそうです。

▲ 発酵中の樽を6月頃までなんと毎日かき混ぜます。
▲ 酒蔵でも酒粕を搾るために使われている圧搾機で搾っていきます。
▲ 発酵させたものを一滴一滴ゆっくりと搾り出していきます。


口コミで広がる柿酢での健康づくり

「あたご柿は、血圧を下げる効果も期待できると言われているタンニンや、抗酸化作用のあるポリフェノールやビタミンCも多い。希釈して気軽に飲める柿酢は健康づくりにぴったりだと口コミで広がって、リピーターが増えとるんよ」と、「三誠」の三好誠二さん。

▲ 柿酢は、調理用として使うのはもちろん、水や牛乳で5倍程度に薄めていただく健康飲料としてもおすすめです。

調理用としておすすめの「丸ごと柿酢」の他、てんさいグラニュー糖や国産百花蜜などを使用して飲みやすく仕上げた「飲む柿酢」は、手軽な健康飲料としておすすめです。


標高1000メートルで育つイチゴ

夏の終わり、吉野川沿いの平地にある東みよし町の役場から南へ約40分走った標高約1000メートルの山中へ。イチゴと言えば冬から春にかけてが旬ですが、実は、夏でもイチゴが採れる場所がそこにあります。

▲ 「うえだ農園」から見た景色。天候が良ければ、直線距離で約60キロメートル離れた紀伊水道が見えることもあるそうです。

雨が降った翌朝など条件が揃えば雲海が見られるというこの高地は「水の丸地区」と呼ばれ、夏場でも涼しい気候を活かしてかつては大根栽培が盛んに行われていたそうです。現在では、6月頃から11月頃にかけて収穫する「夏秋イチゴ」の産地として町をあげて取り組んでいます。


一年中イチゴが採れる町

上田岳志(たけし)さんが営む「うえだ農園」を伺いました。

▲ 「うえだ農園」では、水の丸地区に6棟のハウスを建てて夏秋いちごの栽培をしています。

2014年に大阪から移住した上田さん。
田舎暮らしに憧れて移住先を探していたところ、知人を伝手に訪れた徳島で「一年中イチゴの収穫ができる」と誘われ移住を決め、新規就農することになったと教えてくれました。

▲ 夏秋イチゴの収穫は6月中旬から。気温が氷点下3度になるまでは収穫できるそうです。

「夏から秋はこの水の丸地区のハウスで、冬から春は平地にある昼間地区のハウスでイチゴづくりをしています。同じ町内でイチゴの周年栽培ができるのは全国的にも珍しいんですよ」。

同一町内で平地から高地へ1時間以内で行き来できる東みよし町は、イチゴの周年栽培を全国に先駆けてはじめた町だそうです。

▲ 水の丸地区で栽培されている夏秋いちご「サマーアミーゴ」。徳島ならではの品種です。

夏秋イチゴは小ぶりで酸味が強いため、そのまま食べるよりもショートケーキやいちご大福などの菓子製造用のいちごとして好まれているそう。

一方、12月中旬頃から平地の昼間地区のハウスで収穫がはじまる冬イチゴは、大ぶりで甘く、そのまま食べるのがおすすめ。

▲ 上田岳志さん。「周年イチゴの栽培方法をマニュアル化するなど、誰もが新規就農しやすい環境づくりを仲間たちと整えていっています」。


360度パノラマビュースポット

「近くに景色の良いところがありますよ」と聞いて帰り道に向かったのは、農園から車で3分程度走ったところにある「水の丸ふれあい公園」へ。

▲水の丸ふれあい公園の頂上への道。整備された階段を数分ほど登って頂上に着くとびっくり!
▲ 頂上から見える風景。剣山系から讃岐山脈まで徳島県内一帯の山々が見渡せます。

駐車場に車を停めて山頂に向かって歩くことほんの数分で、何も遮ることなくにし阿波の山々が眼下に見渡せる、標高1000メートルの絶景が! しかも360度のパノラマビューに気分は爽快!

実はここは2010年にパラグライダーのアジア選手権が開かれたこともあるという、徳島県内有数のパラグライダーのフライングスポットだそう。国道192号線からも車でおよそ30分程度。天気の良い日には標高1000メートルの絶景を求めてドライブをしてみてはいかがでしょう。パラグライダーにもぜひ挑戦してみてくださいね。


三誠
徳島県美馬郡つるぎ町半田字平良石510
tel. 090-1574-3922
https://tsurugi-sansei.com/

うえだ農園
徳島県三好郡東みよし町中庄1382-1
tel. 070-2442-7117
https://ueda-15farm.com/



三誠の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

丸ごと柿酢・飲む柿酢 箱入り2本セット

徳島県つるぎ町産のあたご柿を使用したまろやかな酸味の「丸ごと柿酢」とハチミツなどを加えて飲みやすくした「飲む柿酢」の2種類箱入りセットです。タンニンの豊富なあたご柿から作る柿栖をぜひお試しください。

うえだ農園の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

【恋みのり】超特大いちご12〔化粧箱(大)入り 〕

酸味がほとんどなく、爽やかな甘味の超大粒いちごです。酸味の苦手な方にお勧め!特にお子様に好評です。ゆっくりとイチゴが成長するため、実が大きくなり、甘くて美味しいイチゴになります。