2023年4月、徳島県の山あいにある町、神山町に開校した「神山まるごと高専」。全国で20年ぶりに新設された、全寮制の高等専門学校として全国から注目を集…
2023年4月、徳島県の山あいにある町、神山町に開校した「神山まるごと高専」。全国で20年ぶりに新設された、全寮制の高等専門学校として全国から注目を集めています。“テクノロジーとデザイン、起業家精神”を学べるユニークな学校には、いったいどんな学生が集まり、どのような勉強や寮生活を送っているのか。気になるあれこれを学生自ら、綴っていただきます。乞うご期待!

【第4回】ここは小さな社会、あなたは大人
書き手:藤條水祈(2年生)
毎月連載の学生まるごと日記。第4回は2年生の藤條水祈(ふじえだみのり)が担当させていただきます!今回の日記では、私たち学生の大事な生活の一部である「寮」について書かせていただきます。

神山まるごと高専では全寮制を取り入れています。「全国から多くの学生が集まってくるから」という理由もありますが、それに加えて、「寮での生活も含めて”まるごと”学びの場である」という考え方があるからです。生活する場であると同時に、学びの場である。この寮を、私たちは”HOME”と呼んでいます。

そんなHOMEでの生活において、私のお気に入りポイントを2つ紹介させてください。
1つ目は、時間に縛られず、いつでも他の学生と話ができること。
全員が同じ寮に住んでいるからこそ、いつでも直接話せる距離に、学生がいます。例えば、私がルームメイトに何気なく話したことを文字に起こしてみました。「今日提出の課題の存在を忘れていて、すごく焦ったの! ギリギリ提出間に合ってよかった!」「3限の授業であったあの話、すごくわくわくした! もしかしたらこういう分野に興味があるのかも……」
大変だったこと、面白かったこと、悩んだこと、楽しかったこと……。どれだけ大したことない内容でも、ふっと思い立った時に、ゆるっと共有できる。そんな距離に仲間がいること。その環境が、とてもお気に入りです。
私はもともと人と過ごすよりも、1人で過ごす時間の方が好きでした。入学直後は「どこにでも人がいる」という環境に、とてもストレスを感じていました。しかし、1年間寮で過ごしてきて、入学前では想像もできない考え方や行動をする自分がいます。1つの例が、「乾燥機を使った後に必ず埃をとる」「シャワーを使った後、必ず髪の毛が残っていないか確認する」などの”小さいけれど、後の人が少し嬉しくなるような行動”が習慣化されました。人と密接に関わるこの環境は、大きく自分を変えてくれました。

寮自体でも、学年間の交流を作るための工夫がされています。1年生と2年生は2人部屋、3年生は1人部屋になっているのですが、各学年2人ずつ、計4つの部屋に隣接する形で、“ユニット”と呼ばれるくつろげるスペースが設けられています。
ユニットは、夜まで話し込んだり、パーティーをしたりするのに最適です。消灯後、真っ暗な中で友達と集まり話す時間、通称”暗闇対話”も私の大好きな時間の1つです。この学校には本当に色々なことを考えている人がいます。今進めているプロジェクトのこと、メンバーとの人間関係、卒業後の進路、やってみたいこと、ワクワクしていること、改善したいこと……。そして、寮のこと。暗闇対話の種も尽きません!

神山まるごと高専のポリシーの1つで、「ここは小さな社会、あなたは大人」という言葉があります。個人的にとても大好きな言葉です。
1人の学生を”大人”として扱い、寮という”小さな社会”を作り上げる。だから、神山まるごと高専の寮は自治寮を目指しています。学生寮長を筆頭に、自治マネージャー、監査などの役割があり、衛生や清掃、点呼などの委員会が置かれています。学生の委員会への所属は、強制ではありません。
私は、「閉寮・開寮委員会」という、長期休暇前後の閉寮・開寮をスムーズにする委員会に所属しています。長期休暇の間は寮が閉まるので、荷物をまとめて部屋を空っぽにする必要があります。しかし私はこの片付けが本当に苦手で、いつも直前にバタバタしてしまいます。そんな自分を戒めるために、また、みんなの退寮を促せるくらい早く片付けをできるようになろうと思い、委員会に入りました。今も、スムーズにするための工夫を考えています。毎週火曜日の夜には学生全員参加の寮ミーティングがあり、全員が寮について考える時間もあります。
まだまだ私たちはより良い寮を目指して模索している最中ですが、私は「時間に縛られず、いつでもみんなと話ができる」という良さを実感しています。

2つ目は、「日本一、美味しい」も嘘じゃない、給食。給食は、神山や徳島の食材を使った“地産地食”の給食で、Food Hub Project(フードハブプロジェクト)さんによって平日毎日3食提供されています。
この給食が本当に美味しいんです!! 私は入学した時から毎日写真をとっています。おかげさまで、給食の写真を撮ることが、とっても上手になりました。
ツヤツヤのお米、湯気の立ち上るお味噌汁、こんがりと焼けた鶏皮、お肉どっさりの丼、鮮やかな赤色のトマトソース、ハンバーグの隣にちょこんと添えられたポテト……。

給食は2種類から選ぶことができるのですが、いつも悩まされます。人気メニューの時は30分前から列ができることも……。私たち学生にとって、給食が毎日頑張れる活力の源であることは間違いありません。
休日は自炊になっています。共有のキッチンで料理をする人もいれば、レトルトで済ます人もいます。私は料理がすごく苦手なので、後者です。入寮する際に、母が自炊できるようにたくさん調味料を持たせてくれたのですが、自炊を諦めてしまい、消費できずじまい。母に少し申し訳ないと思いながら、週末を過ごしています。ときには友達の料理のご相伴に預かったり、町内のお店に外食に行ったりすることもあります。週末のご飯もまた美味しく、幸せな気持ちでいっぱいです。

さてさて、美味しいご飯の話で思わず盛り上がってしまいましたが、ここまでいかがだったでしょうか?
私たちは学生でありながら、「大人」であり、寮という「小さな社会」を作り上げる一員です。そして、今日も美味しい給食を原動力に、寮という社会のあり方を探っています。そんな私たちの寮での姿を少しでも知っていただけたならば嬉しい限りです。最後までお付き合いいただきありがとうございました!