「神山まるごと高専」学生まるごと日記
【第5回】
“やってみたい”が、どこまでも広がる場所

「神山まるごと高専」学生まるごと日記 【第5回】 “やってみたい”が、どこまでも広がる場所
2023年4月、徳島県の山あいにある町、神山町に開校した「神山まるごと高専」。全国で20年ぶりに新設された、全寮制の高等専門学校として全国から注目を集めています。“テクノロジーとデザイン、起業家精神”を学べるユニークな学校には、いったいどんな学生が集まり、どのような勉強や寮生活を送っているのか。気になるあれこれを学生自ら、綴っていただきます。乞うご期待!

【第5回】“やってみたい”が、どこまでも広がる場所

書き手:瀨川理楽(2年生)


今月の「学生まるごと日記」は、2年生の瀨川理楽(せがわ りら)が担当します! 神山まるごと高専での日々は、授業や寮生活にとどまらず、「課外活動」にも大きな魅力があります。私が感じている課外活動の面白さについてご紹介します。

みなさんにとって、「課外活動」ってどんなイメージでしょうか? 運動部や文化部のような、放課後にやるもの、と思っている方も多いかもしれません。でも、私たちの神山まるごと高専では、いわゆる「部活動」のような枠には収まりきらない活動が、日々あちこちで生まれています。

▲ロボットを制作するチーム「Hanabi」の活動風景。

名前があるものもあれば、名前のないまま動いているものもあって、そのどれもが、誰かのやりたい!という想いからできています。その数も数えきれないほど! 今、私は片手では収まりきらないほどのプロジェクトに参加しているのですが、このようにあらゆる活動を掛け持ちしている子もたくさんいます。

まず、私が取り組んでいる「紙屋書店」。地域の方からいらなくなった本をいただいて、別の誰かにもらってもらうという本屋です。普段は、神山町の寄居商店街の一角である若者が気軽に集える居場所「バンビ」に場所をお借りして本を並べています。それ以外にも、ワークショップを開いたり、本棚を作ったり、イベントに参加してみたり。本との出会いが、その人の中での旅の始まりになるように。そんな気持ちで、一冊一冊を届けています。

▲書店員3人で手作りした自慢の本棚! 扉部分のデザインは、紙屋書店のモチーフとなっている雲をもとにモコモコした形にしました。


▲神山町の「クリーニングデイ」というイベントで、出店した時の様子です。

たとえば、先日神山町で行われた、「クリーニングデイ」というイベント。地域交流とモノの再生がテーマだったため、地域に根差した、古本の循環する書店を目指して参加しました。古紙を使って“栞の服づくり”ワークショップを行ったのですが、思い思いにちぎった紙を、栞の人型に貼り付けて服にしていく。想像以上に子どもたちが夢中になってくれて、とても嬉しかったです。

▲町の女の子たちが栞作りWSを楽しんでくれました! 切ったり、貼ったり、色を塗ったり、思い思いの素敵な服が出来上がりました。


紙屋書店で使われているポスターやロゴは、デザインの授業で習ったことをもとに、自分たちでデザインしました。

▲手書き風の書体で、ぬくもりと親しみを。


ロゴのやさしいブルーは、静かな空気のなかにふと広がる想像の余白を表しています。文字のすみに浮かべた雲は、「自分の世界の雲を広げる」という紙屋書店のMissionから取り上げました。タイトルの上で本を抱え、星を追いかけている女の子は、まだ見ぬ物語へ一歩踏み出す姿を描いています。

授業で学んだことをこうして現実の場面で使っていくことで、学びは実際に誰かに届いていくものなのだと、あらためて感じました。

また、他の学校ではあまり見られない個性的な活動もたくさんあります。

たとえば、ロボットコンテストの世界大会FRC(FIRST® Robotics Competition)に出場するチーム「Hanabi」。1年を通して活動していて、春休みには合宿を行いながらロボットの製作を進めています。体育館での試作や調整に始まり、海外で開催される大会に向けた渡航費を集めるための企業への営業活動、さらにはSTEAM教育を広めるイベントの企画・運営まで。その活動範囲は驚くほど多岐にわたります!

▲普段は体育館でロボットの制作を行っています。

「ポッドキャスト部」(ポッドキャストとはインターネット上で配信されている音声コンテンツ。ラジオのようなもの)は、なんと11もの番組を持つ日本初!の部活動。定期的に収録・編集を行い、実際にサブスク配信されています。神山まるごと高専生の日常やリアルな声を等身大で届ける「まるごと放送室」や、リスナーから寄せられた恋愛相談に、学生目線で答える「真夜中に想うこと」など番組の内容はさまざまです。

▲ポッドキャスト部の収録風景です。

私のお気に入りは、「夢みる朗読」という童話を読み聞かせる朗読番組です。朗読後にアフタートークがあり、童話の背景や解釈について深掘りされていて、物語について読むだけでなく考えられるところが、お気に入りポイントです!

また、私は、植物由来のエナジードリンクを開発するプロジェクトにも関わっています。自然素材を使ったドリンクの開発をされている方が、東京から神山まるごと高専を視察に訪れたときのこと。野草が好きな私のことを知っていたスタッフさんが、その方と私をつないでくださったのが、このプロジェクトの始まりでした。

▲野草を収穫している様子です!この時は、オオバコという野草を取っていました。

実際に校内でバスボムを一緒に作ったり、神山の野草を探しに出かけたりと、さまざまな活動をご一緒させていただきました。私が趣味で育てているガーデンも見ていただき、その中で「次に作ってみたいもの」や「この植物が使えるかもしれないね」といったアイデアが自然と湧いてきて、活動がより具体的に広がっていく感覚がありました。自分の「好き」が人との出会いによって交わって、育っていく体験ができるのは、神山まるごと高専ならではだと思っています。

▲バスボム作りの写真です!一番左が私。カスタマイズ性があって楽しかったです。


そして今、私がいちばん熱を注いでいるのが「まるごと祭」の実行委員としての活動です。10月に行われるまるごと祭に向けて、全体のコンテンツクオリティを高めることに取り組んでいます。実行委員約50人と、スタッフさん、外部の方など関わる人数が多い分、意見のすり合わせやモチベーションの維持など、難しさもたくさんあります。だからこそ「まずは自分からワクワクする」ことを心がけるようにしています!

正直、時間が足りないと感じることもしょっちゅうあります。やりたいことがたくさんあって、どれも諦めたくなくて、ひとつひとつに本気で向き合っていると、気づけば一日があっという間に過ぎていきます。でも、それだけ夢中になれることが身の回りにあるというのは、すごく幸せなことだとも思っています。だからこそ、ただ忙しさに流されるのではなく、自分がなぜこれをやりたいのかをちゃんと考えながら、向き合い続けたいです。

神山まるごと高専では、誰かのひと言がプロジェクトの種になり、そこに仲間が集まり、大きな動きになっていくことがよくあります。誰かの挑戦が、自分の背中をそっと押してくれることもあります。

▲課外活動にも情熱を燃やす仲間たち。

「やってみたい」と言える空気があって、「一緒にやろう」と手を差し伸べてくれる仲間がいて、「面白いじゃん」と応援してくれる大人がいる。そんな環境の中で、私はこれからも、“やってみたい”と思った気持ちにちゃんと気づいて、それをかたちにしていける自分でいたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回の学生まるごと日記もどうぞお楽しみに!

<書き手:瀨川理楽(2年生)>