つるつるもちもちが癖になる
ちょっと太めの“そうめん”

つるつるもちもちが癖になる ちょっと太めの“そうめん”

徳島ならではの太めの“そうめん”

“そうめん”と言えば、播州そうめんや箕輪そうめん、小豆島そうめんなど、糸のように細くて白い麺のことを想像すると思いますが、こちら徳島ならではの「半田そうめん」は、ちょっと太めの麺が特徴。

▲ 長径1.7ミリある、ちょっと太めの「半田そうめん」。

強いコシを持ち、もちもちの歯ごたえとつるつるの食感で、しっかり食べ応えのある”そうめん”です。

「ちょっと太いそうめんなら“ひやむぎ”では?」と思うかもしれませんがそのとおり。日本農林企画(JAS)によると、長径1.3ミリ以内の太さのものを「そうめん」、長径1.7ミリ以上の太さを「うどん」、その間くらいの太さを「ひやむぎ」と表記します。

つまり、“ちょっと太めのそうめん”は、規格上は「ひやむぎ」と呼ばれてもおかしくないのですが、実は「半田そうめん」は、江戸時代から続く歴史とその地域独自の伝統が認められ、特別に「そうめん」と表記ができるのだそうです。 今年(2022年)4月には地域ブランドを保護する特許庁の「地域団体商標」に登録されました。

▲ 手前に流れる吉野川の向こう岸に見えるのがつるぎ町・半田地区。

「半田そうめん」がつくられているのは徳島県西部に位置する美馬郡つるぎ町の半田地区。水運が盛んだった江戸時代に、奈良県から四国山脈と吉野川に挟まれたこの小さな地区に製麺の技術が持ち込まれたと言われています。

きれいな水が豊富にあり、冬になると四国山脈から吹き下ろす冷たい風がそうめんづくりに最適な環境だったことから、自家用や副業としてこの地に根付いていったのだそうです。

▲ 「阿波半田手のべ」がつくる「半田手延素麺」。お中元やお歳暮などのギフトとして定番。

“いつでも美味しい”を届けるために

もともと家庭で楽しむものとして天日干しで製造されていた「半田そうめん」でしたが、「天候に左右されず、安定した味と量で製造できないだろうか」と、動きはじめたのが製麺会社「阿波半田手のべ」。創業1979年より“完全熟成方法”で「半田手延べそうめん」づくりを続けています。

「“完全熟成方法”とは、製造工程中に何度も生地を寝かして熟成させること。麺の中で旨味の層が何層も重なり、ぷりっとした喉越しの良い美味しい麺に仕上がります。さらなる“手延素麺の極限”を目指して、歴史と伝統を受け継ぎ、現代製麺技術を極めていっています」。

▲ 製麺は早朝4時半ごろからスタート。10時ごろには練ったあと熟成させた生地を太い紐状にする作業をしていました。
▲ 紐状にしたあともさらに熟成を行います。何度も熟成させることで旨味が増していくのだそう。

手延べ麺をつくるには、数値だけでは測れない、現場の技術者たちの感覚を大切にしていると2代目・永井秀幸さんは話します。

「毎日、毎時間、その時の天候などによって空気の中の水分量が変化し、麺づくりに影響しています。そこで、スタッフたちが長年培ってきた経験による手の感触なども頼りにしながら、生地の塩分量を変えたり、室内の温度や湿度をその都度調整したりしているんです」。

▲ 麺によりを掛けながら、8の字を描くように2本の棒に巻きつけていきます。
▲ 湿度管理された室箱で熟成させた麺を、さらに延ばすために機械へ。
▲ 麺を延ばす機械。約50センチほどの長さの麺が、背丈ほどの長さになって出てきました。
▲ 乾燥用ハタに掛け、手でぐいっとのばしてくぼみに引っ掛けます。ここからさらに麺を延ばしていきます。
▲ 8の字に麺を掛けてあるため交差している部分が引っ付いてしまっています。そのため乾燥する前に手作業で一本一本麺をさばいていきます。
▲ 約2メートルの長さまでゆっくり時間をかけて少しずつ麺を延ばしたあと、ひと晩しっかり乾燥させます。
▲ 「半田手延べそうめん」の完成です!

「いつでも美味しく、いつでも食べられる」商品づくりを実現させた「阿波半田手のべ」。量販店での販売のほか、注文を受けた全国各地の顧客のもとへ「半田そうめん」の美味しさを届けています。

粉へのこだわり

もちろん“美味しさ”にもこだわり、素材を厳選。
塩は鳴門の塩を。油は酸化実験を繰り返して選び抜いたものを。そしてもっともこだわったのは、”粉”でした。

「“半田そうめん”の一番の味の決め手は“粉”。コシが強くモチモチとした食感で小麦の風味が良いそうめんを目指して、県外の工場と一緒に研究したり秋田県の稲庭うどんの製造所と交流して粉の分析を行ったりと、試行錯誤を繰り返して独自のブレンド粉を開発しました。麺が途中で切れたり、練りすぎて硬くなったりしないよう、生地を練る回数も模索したんです」。

▲ 乾燥麺を断裁している様子。
▲ 棒に吊るしていたため湾曲した部分、“ふし”が残った半端丈の麺。

「再生粉を使用しない」というのも「阿波半田手のべ」のこだわりのひとつ。“再生粉”とは、乾燥した麺を袋詰めするために断裁すると出てしまう端っこの半端な部分を、粉砕し、新しい粉にまた混ぜて再利用すること。「再生粉を使うと味が落ちてしまう」ということから、「阿波半田手のべ」ではすべての商品を新しい粉から製麺しています。

また、断裁時に出た半端な部分も捨てることはありません。半端丈の乾燥麺だけを集めて「わけあり」として販売しています。ほかにも、麺を棒に吊るす時に引っ掛けてできたU字状の部分だけを集めて「ふしめん」として販売。“ふし”と呼ばれるこの湾曲した部分は「平べったくてコリっとした食感が残っていて好きだという方もいるんです」と意外と好評なのだとか。

「手延べ」の麺いろいろ

「阿波半田手のべ」では、半田そうめん「半田手延素麺」のほかにも、その技術を活かしてうどんやラーメンなど、さまざまな手延べ麺を製造しています。

▲ 稲庭うどんにヒントを得てつくった「極細うどん ささめ」。平たく潰した細めのうどんです。
▲ つるつるとした滑らかな極細うどん。パスタと似た太さなので、焼いたり煮込んだりのアレンジがしやすく万能です。
▲ 「半田手延べ中華麺」。徳島ラーメンらしい濃厚なとんこつ醤油スープ付きで販売しています。

昨年(2021年)には「手延べ中華麺」を発売。
熟成を重ねた手延べ製法でつくった中華麺は、もちもちとした弾力がありながら喉越しの良さを感じます。「時間を置いても伸びにくく、コシが強いのが特徴です」と、おすすめの一品。

風味抜群の「もどし生」

なかには、約2メートルの麺がそのまま折りたたまれて袋詰めされている商品も。これは「もどし生」という製法でつくられた半生麺です。

▲ 茹でるときは20センチほどに切ってから鍋に入れます。

「もどし生」とは、一度乾燥させた麺を細かな霧が充満した専用の空間に入れ、半日かけてゆっくりと生に戻して再熟成させたもの。そうすることで、さらにコシが強くなり、つるつる滑らかで、よりいっそう風味が増した麺が出来上がります。

「半田そうめん」でこの手間暇のかかる製法を取り入れているのは「阿波半田手のべ」だけなのだそう。

「美味しい」を求めて

「自分たちが“美味しい”と思うものを提案していきたい」と、代表の永井秀幸さん。

2021年には専務の永井智司さんが中心となって、徳島県三好市にある天真醤油と共同で「めんつゆ」を開発しました。「そうめん、うどん、煮込み料理など、幅広くいろんな料理に使ってもらえたら」。

手延べ麺を中心に、食卓が豊かになる提案を続けています。

▲ 代表の永井秀幸さん(右)と専務の永井智司さん(左)。
▲ しっかりかつお風味が効いた出汁を使用。「だし醤油」「めんつゆ」「ぽん酢」の3種類。

一年中楽しめる「半田そうめん」

さて、”そうめん”の季節と言えば夏。冷やしてめんつゆでいただくのが定番ではありますが、ちょっと太めの「半田そうめん」なら、実は季節を問わず、秋にも冬にもおすすめなのです。

▲ 徳島生まれの「半田そうめん」は、やっぱり徳島県産すだちと相性抜群!

シンプルにスダチと一緒にめんつゆで楽しむのも良いのですが、トマトとツナなどと和える冷静パスタ風の味付けとも相性良し。ペペロンチーノ風やカルボナーラ風などのアレンジでパスタ代わりにも。しかも、パスタにはない風味と喉越しの良さが「半田そうめん」の魅力です。

煮崩れしにくいので、にゅうめんにしたり鍋に入れたりするのもぴったり。また、そうめんチャンプルーをしても、ちょっと太めなので具材が絡みやすく食べ応えがあるのも高ポイント。私はオイスターソースやナンプラーの味付けで炒めてパッタイ風にして食べるのにハマっています。

とにかく幅広いアレンジに対応してくれる万能選手なんです! 保存が効く乾燥麺なので、常備しておくと何かと重宝しますよ。
ぜひ「半田そうめん」を一年中楽しんでみてくださいね。


阿波半田手のべ株式会社
徳島県美馬郡つるぎ町半田字松生131-1
tel.0883-64-2125
http://handatenobe.com/


阿波半田手のべの商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

阿波半田手延べそうめん〜もどし生〜 NS-6

時間をかけて乾麺を造った後に、霧の充満した部屋に半日入れて、ゆっくりと半生に戻した麺です。麺が再熟成され、さらにコシが強く、表面がつるつるで滑らかです。