人、自然、地域が喜ぶ
「阿波尾鶏」の生まれる場所

人、自然、地域が喜ぶ 「阿波尾鶏」の生まれる場所

もうひとつの“あわおどり”

「踊る阿呆、見る阿呆」が大集結する徳島きっての夏の祭典・阿波おどり。実はもうひとつ、徳島が日本に誇る“あわおどり”が存在します。徳島県内の焼鳥店や居酒屋、スーパーの精肉コーナーでおなじみの地鶏「阿波尾鶏」です。近年では県内にとどまらず、全国にもファンを広げています。焼鳥や唐揚げに調理すれば、ぷりっとした心地よい弾力を堪能でき、鍋や煮物に調理すれば、噛めば噛むほどに濃厚な旨味を楽しむことができます。

海陽町に本社を置く食品メーカー「丸本」では、「阿波尾鶏」の生産から加工、商品開発を一貫して行っています。主な販売先は飲食店やコンビニ、お弁当屋さんなど。顧客のオーダーに応じてカットのサイズを変え、ボイルやロースト、串打ちといった加工を行い、全国各地に送りだしています。

▲1964年、初代の丸本昌男さんが精肉店として創立したことが歴史のはじまり。本社はおよそ13万坪の広大な敷地に7つの工場を構えています。

創業時から企業や事業者との取引が多かった「丸本」ですが、2020年から一般消費者に向けて、自社ブランド「けい樂亭」を立ち上げ、インターネットショップでの販売をスタート。阿波尾鶏ももステーキや手羽先など、部位ごとに丁寧に下処理された精肉から、チキンカレーやスモークチキンなどの加工食品、しゃぶしゃぶや水炊きといった鍋のセットにいたるまで、オリジナル商品を開発。どれも家庭で簡単に調理でき、阿波尾鶏のおいしさを存分に味わえるのが特徴です。

▲阿波尾鶏もも肉、つみれ、スープ、ポン酢が入った水炊きセット(ゆず胡椒は別売り)はリピーターも多い人気の品。
▲阿波尾鶏ももステーキ。肉の旨味をダイレクトに感じたい人は塩焼きがオススメ。

全国にファンを持つ日本一の地鶏

そもそも「阿波尾鶏」は徳島県畜産研究課で10年間の改良を重ねて生まれました。開発には創業者の丸本さんも携わっています。当時、目指したのは高級地鶏ではなく、日常的に味わえる手頃な価格の地鶏。父親には古くから徳島で飼育していたコクがあり肉質のいい「赤笹系軍鶏(シャモ)」、母親には発育と産卵数に優れた「白色プリマスロック」が選ばれ、交配が繰り返し行われました。

安定して生産できるようになるまで仕上げ、1990年、徳島県独自の地鶏「阿波尾鶏」が誕生。リーズナブルでおいしい“新しい地鶏”として、平成のはじまりとともに華々しいデビューを飾りました。着々と認知度を高めていき、1998年には地鶏の出荷量日本一に! 現在もトップブランドとして全国にその名をとどろかせています。

▲徳島の一大イベント「阿波おどり」にちなみ命名された「阿波尾鶏」。他の地鶏よりも先陣を切って日本農林規格のJAS認定を受けています。

2倍の月日をかけて丁寧に育てる

鶏の飼育は5つの自社農場「だんだんファーム」と15軒の委託農場で行っています。今回訪れたのは、自社農場のひとつ、吉宇(よしう)農場。取材時には5万3千羽の「阿波尾鶏」が育てられていました。

「阿波尾鶏」のおいしさの秘密は、飼育期間の長さとエサにあります。通常、ブロイラーは40日ほどで出荷となりますが、阿波尾鶏は生後1日目のひよこから入れて約80日間、じっくり成長させます。だんだんファームの管理責任者である中野実さんは次のように話します。

「一般的には、いかに短い期間で効率的に鶏を大きくするかが重要視されます。しかし、ここでは一気に太らせるのではなく、時間をかけ、なるべくストレスのないように丁寧に育てています。また、エサにも気を配り、通常、エサに入っていることが多い抗生物質や合成抗菌剤を使っていません。ただその分、病気にかかりやすくなるので飼育環境の衛生管理を徹底しています。朝一番から、1日に何度も鶏舎を見回っていると、鶏が元気かどうか、快適に過ごせているかどうかがわかってきました。その様子を確認しながら、鶏舎の温度管理や換気などはその都度調整しています」。

▲出荷後はおよそ1か月をかけて鶏舎を清掃し消毒。鶏が直接口をつけるエサ皿(全鶏舎分1210枚も!)などは必ず手洗いするほどの徹底ぶり。

一般的なブロイラーに比べ、「阿波尾鶏」は倍近くの飼育期間を要するため稼働率は決していいとはいえません。しかし、「効率よりも品質を。安心安全、おいしさ重視」という社のポリシーが随所に感じられ、日々、丹念に「阿波尾鶏」を育てあげていることがわかりました。

▲「片田舎で日本一の地鶏といわれる阿波尾鶏の飼育に携われていることが誇り」と中野さん。

廃棄物は肥料にリサイクル

また、生産から加工まで一貫しているからこそ、できる取り組みがあります。それは廃棄物を新たな資源に変えること。鶏舎では鶏糞、加工場では人が食べられない鶏の部位(血、骨、内臓、羽など)が大量に出てしまいます。これらを捨てるのではなく、農産物の有機肥料の原料として再活用しているのです。敷地内にあるオンダン農業協同組合の肥料工場でその様子を見せてもらいました。

「加工処理で出てしまう鶏の端材も優秀なタンパク源」と話すのは肥料部課長・工場長の雑賀睦(さいか・あつし)さん。肥料工場では、加熱処理した鶏の端材と鶏糞と混ぜ合わせ、積みあげていきます。十分な空気を送り発酵を促進。「堆積」「撹拌(かくはん)」を繰り返し約2~3カ月発酵熟成させることで、微生物により栄養成分が細かく分解され、農産物に吸収されやすい肥料になるそう。

▲廃棄物を活用しリサイクル肥料を生みだす工場。原料を山盛りに積みあげて発酵を促しているところ。

こうして生まれた有機質の肥料は県内で栽培される米やキュウリ、ニンジン、ユズの畑で使用されています。良質な栄養分をたっぷり吸いあげた野菜はすくすく成長。100%鶏由来の原料であるため、農薬や化学肥料に頼らない食品として認証されている「有機JAS」の作物にも使用できる秀逸な肥料です。

▲畑にまきやすいように粒状に加工した「なっとく有機肥料 ペレットタイプ」。土が持つ力を引きだします。
▲こちらは食品加工場の排水処理で出る汚泥と鶏糞を活用したリサイクル肥料「ナンチク」。原料が鶏由来の「なっとく有機肥料」に比べてリーズナブル。

この取り組みによって、昨年(2020年)は、「なっとく有機肥料」は2400トン、「ナンチク」は3400トンを出荷。合わせて6000トン近い肥料を廃棄物のリサイクルによって生みだしたことになります。

すべての行動の源は「人に、自然に、地域に、すべてに喜んでもらいたい」という思いから。

こうした安心安全に対するこだわりと自然への配慮が、地域の発展や「阿波尾鶏」の豊かな未来につながっています。

▲目に優しい緑の芝生が広がる本社敷地内。(右より)商品開発を行う䒳原(しだはら)克彦さんと宮繁扶実さん。

(掲載している情報は、2021年11月取材時点のものです。)


丸本(けい樂亭)
徳島県海部郡海陽町大井字大谷41
https://www.malmoto.co.jp/


けい樂亭の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

けい樂亭 阿波尾鶏水炊きセット

心と体を温める冬の定番。 冬の定番である水炊き鍋をいつもより贅沢に楽しめる、徳島の地鶏「阿波尾鶏」の水炊き鍋セットです。まさに阿波尾鶏尽くしのこだわりの水炊き鍋セットを是非ご賞味ください。