土産店が作る干物は飯がうまい
目次 輝く魚、見惚れる手さばき、昔ながらの天日干し 薄すぎない塩加減は、酒よりも米がすすむ 青果の行商からはじめて50年 輝く魚、見惚れる手さば…
「これが土?!」
見慣れた土とはまったく異なり、まるで綿のよう。その名は、「超軽量リサイクル・ポリエステル繊維媒地・生産革命」。……と言われても、ピンと来ないですよね。
詳しく説明すると、古着(衣類)や繊維くずなどのポリエステル繊維を主体として作られた人工培土(培養土)なんです。本来なら廃棄されてしまうような繊維素材がリサイクルされ、「生産革命」として生まれ変わっています。この画期的な商品の生産販売を手掛けるのは、徳島市内に本社を構える「アースコンシャス株式会社」。
2001年に商品開発され、農業の植え付け用培地や、ビルやマンションの屋上や壁面、家庭のベランダなどの緑化にすでに採用されていますが、一般向けに販売を始めたのはここ数年のことだそう。
「以前から繊維シートによる植栽の技術を用いて屋上緑化の事業を行っていました。2000年に旧県立農業試験場を通じて洋ラン農家さんからミズゴケの代わりになるものはないか、という相談を受けたことが商品誕生のきっかけです。その後、試験場との共同研究による栽培試験などを経て、現在の形になりました。生産者さんなどプロの方はまず、生産革命の排水性のよさに着目します。というのも、排水性が悪いと作物は根腐れを起こしやすくなり、根腐れによって病気が蔓延してしまうからです。土壌栽培や水耕栽培などあらゆる培地を試しても作物がうまく育たず、苦労されてきた方がここに辿り着き、取引が始まることが多いですね。気が付けば北海道から沖縄まで、全国制覇を果たしました(笑)。」と話してくれたのは、代表取締役の青山恭久(やすひさ)さん。
加えて、学校教材として使いたいと声がかかることも増えてきました。
「最近では熊本県の高校のSDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいるグループから依頼がありました。彼らの着古した体操服やジャージを送ってもらい繊維にしたあと、生産革命と混ぜてオリジナルの人工培土を作って送りました。それを用いてプランターで花や野菜を育て、全国都市緑化フェアが開催された際にブースを構えて展示してくれたんです。付属の幼稚園でも生産革命に種を蒔いて発芽をさせるワークショップを行ったところ反響があったようで、今後は園児たちの家庭から古着を集めて同じことができたらと考えています。自分の服が土になり、それを使って植物を育てる。リサイクルという学びも加わるし、何よりも愛着が持てるから楽しさも増しますよね」。
「時折、『どこで買えますか?』と一般の方から問い合わせが来るのですが、〈環境にいい〉〈リサイクル〉などといったSDGsに関する言葉で検索されているのかなと。社会の流れを感じますね」と、本部長の山本一也さん。
家庭でも使いやすい容量入り(10ℓ・40ℓサイズ)の生産革命は今のところ、小売店などでの一般販売はしておらず、ラシクルモール通販のみでの取り扱いだそうです。
では、どのように作られているのでしょうか。
まず、古着や縫製工場などから出る裁断くずを回収(画像①)、素材の選別や分別を行い、ボタンやファスナーなどを除去します(②)。その後、生地を裁断機で細かく破砕します(③④)。
破砕した繊維を綿状にし(⑤⑥)、シート状に加工します(⑦⑧)。
再び細かくチップ状に粉砕。これが主原料となるリサイクル・ポリエステル繊維です(⑨)。より自然に近い機能性を持たせるために黒曜石パーライトなどの副資材(⑩)をブレンドしたら、生産革命の完成です(⑪⑫)。
会社の敷地には大小さまざまな植物が所狭しと並んでいます。
「ポリエステル繊維が主体なので、とにかく軽い。従来の土の10分の1程度の重さです。だから、子どもや年配の方も運びやすいし、扱いやすいですよ」と、ハランが植わった大きな鉢をひょいと持ち上げてくれました。
駐車スペースの一角には蘇鉄やブラックベリー、ブドウ、桜、そして花のつぼみが膨らんだレモンの木が密着するように配置され、赤い実をつけたイチゴ、栽培の難しそうなミニバラなどもわさわさと茂り……。ぐるりと見渡せば、あちらこちらで植物が精気を放っていてなんとも気持ちがいい。
「根腐れの心配はないのでしっかり水やりをして、花や観葉植物には粒状の緩効性肥料を、実のなるものには液肥を使っています。あとは従来の土で育てる場合と同じで植える時期やその植物が好む環境を気にしてあげるくらい」。
ほかにも、うれしいポイントを教えてくれました。
まず、綿状なので手が汚れません。水に濡れても泥のようにはならずに掴めます。散らかりにくく、作業も後片付けもラクチン。
また、普通の土とは違って無機物なので、内部に病原菌の栄養や害虫のエサになるようなものがありません。微生物に分解されることもないため、“土がやせる”といったことも起こりません。つまり、病気や虫が発生しづらく経年劣化も生じにくいため、繰り返し使えるのです。
「もしも捨てる、となっても燃えるゴミとして出せます」と、青山さん。
これはかなり魅力的!
というのも、ベランダ菜園や室内インテリアとして植物を育てる際について回るのが、「土の後処理問題」。じつはこれが結構ストレスな方は多いのではないでしょうか。ちなみに徳島市の場合は、“市で処理できない”モノとして分類され、不要な土は庭やプランターの土に混ぜる、との備考が。庭もプランターもない(そもそもプランターを処分したいのに)場合はどうしたらいいの……と頭を悩ませてしまう環境面での心配も見事クリア!
このように、生産革命は家庭菜園やグリーンライフ初心者から、あらゆる問題によって植物を育てることをためらわれていた方まで、始めやすいメリットがたくさん。
「生産革命で植物を育てるのが楽しい」と語るのは、「カットハウスSHIKI」の山本博之さん。いたるところに植物が飾られています。 「セッコクを育てるのにミズゴケの代わりになるのでは?とピンと来て使い始めたのが始まりです。その後は観葉植物のカット苗を入れてみたり種から育ててみたり、いろいろと実験中です。先日、いとこがアジアンタムを今まで3,4度育てたけれど失敗して……というので、株を買って2つの鉢に分けて育ててみたらしっかり育ちました。1つプレゼントしたら喜んで」。
「軽いから大きい鉢モノは持ち運びが楽ですし、ハンギングしても重さが気になりません。それに、以前は外に置いていたものを室内に入れるとアリがついてきていたけれど、そういうことがなくなりました。こぼれても土じゃないから拾う程度で掃除がしやすいし、衛生面でも安心。都合のいいことが多くて増殖中です(笑)」。
ラシクルモールの事務局にもハーブやネギ、観葉植物が日当たりのいい窓辺に並んでいます。 「ネギは撮影用に余ったものをそのまま植えたらぐんぐん育って。切っても切っても伸びてくるのでもう買わなくてよさそうです(笑)。ミントもかなり増えてきました。生ハーブティを楽しみたいですね」と、スタッフの井上さん。
筆者も生産革命を手にしてからその手軽さに魅了されている一人。 もともと出窓を大好きな観葉植物でいっぱいにしていたのですが、ポトスとホヤ、ハツユキカズラほか半分くらいは植え替えのタイミングで従来の土から生産革命にお引越し。個体差などもあるせいか、うまく育たない子もいますが試行錯誤を繰り返しながら気長に植物を育てるのも楽しみのひとつ。順次、植え替えていく予定です。また、虫との闘いが果てしなく続いていましたが、娘曰く、「小さい虫があんまりおらんようになったなあ」と。あ、言われてみればそうかも!
では、使い方を紹介します。
1.まず、生産革命を水で濡らします。
2.鉢に水で濡らした生産革命を上からギュッギュと押さえながら詰めていきます。
※通常の土は土の流出軽減と排水性向上のために、あらかじめ鉢底にメッシュネットや軽石を敷き詰めますが、生産革命は排水性の面では問題がないためネットや軽石は不要です。ただし、素焼き鉢など鉢底の排水穴が大きい場合は生産革命が流出しないようメッシュネットなどを敷いてください。
3.ある程度詰めたところで苗に付いた土を少し落とし(土を落としきってしまうといきなり環境が変わることになり育ちにくくなる一因に)、植えこみます。
4.苗の周りと上に、再び生産革命を押さえながら詰めます。
5.最後に粒状の緩効性肥料を苗の周りに適量加えます。
青山さん曰く、一番のコツは“詰め方”。しっかりと詰めることで繊維同士が密着し、水分が四方に広がります。根も張りやすくなるため、植物が強く育つのだそう。反対にふんわり詰めてしまうと、繊維の隙間が大きくなり、水がそのまま下に抜けてしまうことでうまく育たない場合もあるのだとか。
というわけで、以前、何度か枯らしたことのあったミニバラにチャレンジ。娘はミニトマトを選び一緒に植え付けを楽しみました。玄関先に並べていたところ、「これは何?」と話しかけてきたご近所さんに得意げに説明。トマトに実がつき始めて会話も弾みます。
今、まさに植物を育てやすい季節。使い勝手も環境にもいい、“古着生まれの土”を使って、植物のある生活を始めてみませんか?
アースコンシャス株式会社
徳島市北沖洲2-9-39
tel.088-602-7126
https://earth-con.co.jp/
アースコンシャスの商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
【ラシクルモール限定の10ℓ】リサイクル資源のポリエステル繊維を主体にした人工培土(容積10ℓ)。家庭栽培での重い、汚れる、後の処理が大変、などの課題を克服しました。