求めていた藍がここにある
感度の高い人たちが集う藍染専門店

求めていた藍がここにある<br>感度の高い人たちが集う藍染専門店

藍染がもたらす効果

藍を暮らしに取り入れてみませんか?
ふと目に映った藍色が心を落ち着けてくれることがあります。涼しげな色に見惚れたり、濃い色に一瞬心を奪われたりするような、あの感覚です。藍色が心や脳にもたらす化学的根拠を調べましたが曖昧だったので割愛します。でも、とくに目にする機会の多い徳島県民はもちろん、どことなくその効果を感じたことのある人も多いのではないでしょうか。

しかし、藍染製品はストールやバッグなど従来型のファッションアイテムが多く、取り入れづらい……、もう少し使いやすいアイテムを探したい、という声もよく耳にします。そんな人たちにおすすめしたいのが徳島県北東部、阿波藍の一大産地として栄えた藍住町の藍染専門セレクトショップ「藍屋敷おくむら」です。

カルチャーに敏感な若年層や外国人にも刺さる商品幅とクオリティは、これまでより深く藍染に魅了されている人が増えているようです。

▲美しいグラデーションの暖簾が印象的な「藍屋敷おくむら」の店内。


藍で栄えた徳島、「藍屋敷おくむら」の始まりは江戸時代

「藍屋敷おくむら」を運営する奥村商事は江戸時代、藍商人としてその歴史をスタートさせました。藍の栽培・生産から販売までを一貫して手掛け、それらの作業がおこなわれていた屋敷は規模・内容ともに、当時2000軒以上あったと言われている藍商の中でも県を代表する藍屋敷として存在していました。

「藍屋敷おくむら」はその藍屋敷の目前に1989年(平成元年)にオープン。幾度かの改装・増築を経て、ショップスペースとオリジナル商品の制作を行う工房を併設した現在の形となりました。


身近で取り入れやすいアイテム

淡い照明の店内には当時の屋敷で使用していたであろう什器が店全体に深みを与え、センス良く陳列された藍染作品たちの色が際立ちます。並んでいるのは徳島にゆかりのある年齢、性別、国籍も違う作家系作品と、藍染に魅せられたスタッフたちが中心となってアイデアを出したオリジナル製品。ウエアやインテリア類だけでなく、アートピースまで並びます。

▲阿波藍染工房・村上千晶氏によるサコッシュ。ストライプは日常的な装いにもハマってくれます。
▲藍小紋型染麻あし布・原田史郎氏によるアート作品。
▲バッグから取り出すのが楽しくなりそうなブックカバーは、作家・西千晶氏による作品。

数年前までは徳島での藍染観光といえば体験が主流でしたが、近頃はSNSでの宣伝効果もあり、商品を目当てに訪れる人も。中でもオリジナルのコースターセットは定番でありながら、藍染の魅力のひとつでもある色の変化(バリエーション)を楽しめる人気商品です。淡い色のコースターは涼やかに。濃紺色はシックに。小洒落たひと時を演出してくれます。

▲涼しげ。ビールを注ぎ、藍とのコントラストを楽しむのもお勧め。
▲寝る前のゆっくりとした時間には、深く濃紺の一枚を。

商品を手掛けるスタッフさんと、「藍屋敷おくむら」にてアドバイザーも務める作家・村上千晶さんたちは、生活の中に藍があることの魅力をこう語ります。

「藍色って飽きないですよね。ずっと見ていられる色です。これは私たちの言葉ではないのですが、私たちが藍色に惹かれる理由を『手に触れることのできる自然の色だから』と答えた人がいました。ここにある製品はすべて天然の藍を使用し、自然発酵させた染液で染め上げる昔ながらの手法を今も貫いています。自然の力のみで染めた製品はおのずと自然の色に似てくるんですよね。淡い色は夏の空の色。濃紺は夜の海のようにも見えます。手にとることのできない自然界の色だからこそ見飽きず、何百年も魅了され続けているのだと思います」。

ちなみに藍色には48色が存在し、植物や鉱石など自然物からつけられた名が多いようです(例:鉄紺、茄子紺、錆鼠など)。

▲作家でありながら「藍屋敷おくむら」で藍染を指導する立場でもある村上千晶さん。
▲スタッフの大西さん(左)と、武内さん(右)。
▲店舗前に植っている藍。葉先が少し青みがかっている。
▲乾燥させた藍の葉は香りも楽しめる。レジ横で販売中。
▲染色用の甕(かめ)の様子。毎朝状態をチェックし、攪拌(かくはん)作業を行っている。


直に触れてこそ伝わることがある

記憶に新しい五輪エンブレムやサッカー日本代表など、あらゆる場面で用いられている藍色。多くのメディアが「ジャパンブルー」と話題にし、盛り上がりを見せています。が、ほとんどの人が、天然の藍染に触れたことがないと思います。

これまで散々文字と写真で綴ってきた後で言うのもおかしな話ではありますが、藍染は印刷物や画面からでは伝わらない部分が多いです。伝えきれない魅力があります。素材と藍色の相性。自然染料ならではの独特のムラ。ショップに入った瞬間に鼻を突く発酵の香りも含めて、藍染はフィジカルで感じてこそ、魅力が入ってくるのです。

▲布類と木では同じ藍色の深さでも雰囲気や感じられる印象が違う。

「藍屋敷おくむら」入口右の暖簾奥には上板町を拠点とする藍染集団「BUAISOU」西本氏プロデュースによる、藍商を始めた六代目・嘉藏の名を受け継いだショップインショップ「藍屋嘉蔵(あいやかぞう)」が併設されています。

県内の木工作家とコラボした貴重な作品や藍染に関する書籍コーナーに当時の古布など、ネットには存在しない資料が揃うので、少しでも興味持ってしまったのであれば、それらと併せて店舗で直に藍染を感じることを強くお勧めしたい。きっとこれまで抱いていた藍に対する印象が覆されるはずです。

▲ショップインショップ「藍屋嘉蔵」。

最後に豆知識をひとつ。明治初期に日本を訪れたイギリス人の化学者、ロバート・ウィリアム・アトキンソンは、当時、町の多くの人々が身に纏っていた藍染の美しい青が印象に残ったことから、その藍色を「ジャパンブルー」と名付けたそうです。「ジャパンブルー」の由来は意外にも歴史があったんですね。

暮らしに藍を。そして、ぜひ直に触れることのできる藍の地にお越しください。

▲店舗の表にある大谷焼きの大きな甕が目印。

藍屋敷おくむら
徳島県板野郡藍住町徳命前須西179
tel.088-692-8723
https://www.aiyashikiokumura.com



藍屋敷おくむらの商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

本藍染5色コースター(箱入り)

「灰汁発酵建て」という伝統の染め方で染めた本藍染の5枚コースターです。淡い色から濃い色まで、1枚ずつ色の違いをお楽しみいただけます。