減農薬・有機肥料で行う“食味値80点以上”の米作り

減農薬・有機肥料で行う“食味値80点以上”の米作り

古くから評価されてきた上質なお米

その昔、皇室の献上米にも選ばれていたという徳島県阿波市北方地域のお米。阿讃山脈の山すそで自然の恵みを享受したこの土地は、粘土質でミネラルが豊富。

かつては良質なお米が育つことで有名な場所でしたが、今ではそのことを知らない人がほとんど。

「お米の評価って、産地はあまり気にされないんです。品種や等級が同じならひとくくりにされて値段が決められてしまって。お米が育つ土地の自然環境や土そのものの性質などによって味は大きく変わるのに……。そのことを常々もどかしく思っていました」。

熱をこめてそう言葉を漏らすのは三木みずほさん。明治時代より米作りを行いながら、農肥料や農薬の販売、お米の集荷販売を行う三木肥料の三代目女将です。

「阿波市の山あいにある北方地域で作るお米だからこそ美味しいってことを知られていないのが本当にもったいないと思って。だから、自分の手でブランド米を作ることにしました」。

▲三代目の三木真一さん、みずほさんご夫婦。お二人は「お米マイスター」の資格を取得し、品種から美味しいごはんの炊き方までお米に関する幅広い知識を持っています。
▲築100年を超える三木肥料の母屋。「阿波ノ北方農園」の幕がかかっています。

地元ならではの特別栽培米ができるまで

2012年、三木さんは「阿波ノ北方農園」という屋号を掲げ、オリジナル商品の開発をスタート。同年に商品第1号として「阿波ノ北方米」が誕生しました。肥料店の知識と経験を生かし、北方地域の風土に合わせて肥料を厳選。

まず、90%が有機質からなる肥料を用い、自然の力で作物と大地に元気を与えています。有機質の肥料は土中の微生物の餌にもなるので、土壌そのものを豊かにする役割を果たします。加えて「カルゲン」と呼ばれる特殊肥料を施肥。主成分のカルシウムは米の栄養価を高めるだけでなく、甘さを凝縮させる働きがあります。

また、減農薬にも注力。阿波市が取り決めている農薬量に比べて量を半分以下に抑えています。

「1年目は田植えをしても苗が青々と伸びず、赤っぽくなって風変わりだったんです。先代からはみっともないから倒してしまえとも言われました。今になって分かったんですが、赤いのは根を張っている証拠らしいんですね。諦めずに育て続けたら、秋にはその苗が見事にきれいな黄金色の稲に実ったんです」。三木さんは当時の様子を昨日のことのように思い出しながらうれしそうな顔でゆっくりと話します。

▲初秋の美しい景色。収穫のときを待ち、風に揺れる「阿波ノ北方米」の稲。

そんなとき、奥からヒューヒューと蒸気の音が聞こえてきました。「そろそろかな」と三木さんは立ち上がり、炊きたての「阿波ノ北方米」を運んできてくれました。土鍋のふたが開かれた瞬間、立ち上る湯気と甘い匂い。口に運ぶと、一粒一粒に粘りがあり、噛むほどに甘さがふわっと広がります。

▲炊き立ての「阿波ノ北方米」をうれしそうによそってくれる三木さん。
▲三木さんいわく、「うまみが際立つ土鍋炊きがおすすめ」。一粒一粒に存在感があり、つやめいています。
 

「阿波ノ北方米」は減農薬・有機肥料栽培をして終わりではありません。“食味値80点以上”を達成しないことには「阿波ノ北方米」と名乗らない、と自ら課しているのだとか。 

「食味値」とは、お米の美味しさを100点満点で表した値。お米に含まれるアミロース、たんぱく質、水分、脂肪酸化度の成分量で判定されます。「2020年の検査では89点でした」と三木さんは胸を張ります。これは日本一の米どころ、新潟県魚沼産のお米に負けず劣らずの数値だそうです。

▲「阿波ノ北方米」は三木肥料の敷地内にあるショップで販売。お試しにぴったりな450グラム(3合)サイズから置いています。

いい米は「ぬか」まで甘い

また、「阿波ノ北方米」を精米するときに出るぬかを用いて作った「米ぬかふりかけ」も好評です。「北方米を精米したときに出るぬかをなめてみたんです。そうしたらきな粉のように甘くて。

本来なら、ぬかは捨てるものだけれども、これは何かにしないともったいない!と思って」。 玄米の表面が削られてできるぬかを、時間をかけてゆっくりと焙煎。かつお節やごまなどと合わせて香ばしいふりかけに仕上げています。

▲米ぬかは食物繊維が豊富。食べやすいようにふるいにかけてサラサラの粉末状に。

しかも、米ぬかふりかけの材料は半分がぬか。いつものごはんに振りかけるだけで、美味しさはもちろんのこと、手軽に玄米の栄養を取ることができます。

▲塩分控えめで体に優しい「米ぬかふりかけ」。かつお節ベースの<プレーン>、<ちりめんじゃこと干しえび>、<梅としそ>の3種類。

すべては「もったいない」の気持ちから

「阿波ノ北方農園」のオリジナル商品は、三木さんの“もったいない”という気持ちから生まれたものばかり。なかでも、「とくしまあわでつくったむてんかジャム」はお米やふりかけに並ぶ、代表作です。

傷ものの野菜や完熟したフルーツなど売りに出せなくなった阿波市産の青果を買い取ってジャムを手作りしています。「素材そのものが美味しいから」と味付けはてんさい糖とレモン果汁だけ。保存料も使っていません。

▲ジャムを作るときに愛用している熱伝導のいい銅製の鍋。やや強火で炊きあげるのが三木さん流。

野菜とフルーツの宝庫である阿波市らしく、ジャムのラインアップは10種類以上。この地域の特産であるひすい色のナス「美~ナス」のジャムは、マスカットのような爽やかな甘さで、ナスの新たな美味しさを発見できます。

ほかにも、「ニンジン×リンゴ」「紅芋×鳴門金時」など異なる素材を重ねた「2色じゃむ」など、見た目にも華やかな商品が季節ごとに入れ替わり並びます。

▲色とりどりの「とくしまあわでつくったむてんかジャム」。種類は季節ごとに変わります。

「頑張っている農家さんを応援したいし、本当に美味しくて安全なものを消費者に届けたいんです。ホンマに食って大事だから」とパワフルな笑顔をみせる三木さん。

美味しいものを食べると幸せになる。誰かの幸せを想うと力になる。その気持ちがぐるぐると回ってエネルギーの源となっています。

▲仕事でも家庭でもよきパートナーの二人。8年来、オリジナル商品を育てています。

阿波ノ北方農園
徳島県阿波市阿波町下喜来南202(三木肥料)
https://www.awanokitagata.com/


阿波ノ北方米 5kg(特別栽培コシヒカリ)

冷めても甘くもっちりとした「阿波ノ北方米」はお弁当やおにぎりに最適です。