幻のアスパラガス農家がつくる
徳島育ちの野菜&果物のジェラート

幻のアスパラガス農家がつくる 徳島育ちの野菜&果物のジェラート


阿南生まれのアスパラガス「せいくらべ」

「暑い時期はね、朝5時台からビニールハウスにいます。夜は6、7時くらいから8時すぎまで。朝晩1日2回の収穫です。アスパラガスの収穫期は一般的に3月から10月くらいまでなんですけどね、昨年は猛暑で生育が悪くなり8月末くらいまででした。今年はどうなるかなあ」

徳島県南部に位置する、緑豊かな阿南市福井町でアスパラガス農園「アントファーム」を営むのは、野村祐佳さん。朝8時、すでにコンテナ5杯分もの立派なアスパラガスの収穫が終わっていました。

▲7棟連なるビニールハウスでアスパラガスを栽培しています。

「私たちがつくっているアスパラガスを『せいくらべ』と名付けています。ぐんぐん育っていく様子は子どもたちの成長のようです。大きく成長してほしいという願いも込めて」

▲背丈を超えるほどに育ったアスパラガスの親木。この下に子が育つ。
▲「アントファーム」のアスパラガス「せいくらべ」。

「アントファーム」のこだわりは、できるだけ環境にやさしい農業をすること。たとえば、雑味やえぐみの元となる化学肥料は栽培期間中使わず、有機肥料だけ。収穫のないオフシーズンもビニールハウスに通い、草を抜いたり土づくりをしたりと、まさに我が子のように手間をかけ、愛情を注ぐことで栄養豊富で食感もよく、自然な甘さが自慢の「せいくらべ」に育つのだそう。

その品質の良さから「とくしま特選ブランド」としても認定され、今ではほぼすべてが関東に出荷されています。いわば、幻のアスパラガス。


子育てから未経験の農業へ

ベテラン農家さんだとばかり思いきや、農業歴は今年(2025年)で9年目。なんと農業経験ゼロから2017年にアスパラガス農園を立ち上げました。野村さんはもともとお隣、高知県南国市の御免(ごめん)町出身。大学進学を機に徳島へ、さらに結婚して阿南市へ移り住みました。市役所の臨時職員として働いた後は子育てに専念。その後、子育てを終えて、いざ市の臨時職員に戻ろうと思ったら周りは平成生まれの子ばかり。若い子たちに席を譲らなければ……と思ったと言います。

「これから私は何をしようかと迷っていたときに、たまたまテレビ番組『満天☆青空レストラン』(日本各地の生産者さんを訪ねてその食材を使った料理を紹介する番組)を観ていたら、農業は私が思っていたよりも近代化しているな、これなら楽しく楽にできるかも!と思ったんです。周りには反対されましたが、すぐに飛びつく性格なので(笑)、これからは農業だ!と、まずは農協へ相談に行きました」と、茶目っ気たっぷりに語る野村さん。

▲アスパラガスの親木を手入れする野村祐佳さん。

農協職員のアドバイスのもと、1年間はトマトの水耕栽培をしている農家でパートとして働きながら月に1度、阿南市内にあるアスパラガスやブロッコリー、葉ワザビ、ブドウなどを育てている農家を訪問。何を育てようかと考えていたところ、「アスパラガスは1回定植したら10年間は何もしなくていい」という言葉を耳にしました。「単純なのでその言葉を鵜呑みにして、じゃあアスパラガスにしよう!って、飛びついたんです(笑)」と、顔をほころばせながら続けます。

「でも“何もしなくていい”じゃなかったんですね。一年を通じて何らかの作業はありますし、楽ではありませんでした(笑)。でも、アスパラガスは重たくないし、作業時間もほぼ決まっているので子育てが終わった主婦が戦力になります。同じように子育てを終えた同世代の友人たちに手伝ってもらいながら、なかなか教科書どおりにはいきませんが、少しずつ自分たちが目指すアスパラガスをつくれるようになりました」

▲ママ友も頼りになる戦力。選別から出荷までの作業を任せています。


規格外を大好きなジェラートに

順調に収穫できる一方、どうしても出てしまうのが規格外のアスパラガス。もったいないからと、お茶にしたりふりかけにしたりしてみたもののしっくりこず、もともと自分が好きで食べ歩きをしていたジェラートにしたらどうかと思いつきました。そこで、2020年に地元の女性農業者3人と、農作物の6次化(生産だけでなく、加工、販売にも取り組むこと)を手がける農業女子グループを結成。アスパラガスを始めとする、おもに規格外の農作物をふんだんに用いたジェラートづくりをスタート。素材の味や香りを存分に活かすことにこだわりました。

「牛乳は淡路島、砂糖は北海道のてんさい糖、そして水あめを使っています。フレーバーは地元阿南市や阿波市など徳島のもの、そして私の地元である高知の野菜、果物が中心です。すべて繋がりのある仲間や生産者さんから直接仕入れています。鮮度のいいうちにシロップ漬けにしたり、ピューレ状にしたりと、下ごしらえが一番大変ですね」

▲新鮮なアスパラガスがたっぷり。「作り方はヒミツです(笑)」

コロナ禍を経て、構想から2年ほど遅れた2022年7月、ビニールハウスにほど近い場所に農家直営の自然派ジェラート店「l’orto(ロルト)」をオープンさせました。


四季のフレーバーは100種類以上!

「l’orto(ロルト)」とは、イタリア語で“野菜畑”“菜園”という意味。

「野菜がこの店に集まってジェラートになっていく、というイメージです。私にはネーミングセンスがないので娘が考えてくれました(笑)」

▲野村さんの一番のお気に入りはやっぱり「アスパラガス」。

フレーバーは定番のアスパラガス、ミルク以外は四季とともに移り変わります。これからの季節は地元産のブルーベリーやトマト、オクラ、ゴーヤ、きゅうり×すだち、グリーンレモンなどなど。同じフレーバーでもクリーミーなタイプ、さっぱりとしたソルベ(シャーベットに似た食感のもの)タイプなど、味わい、食感ともにさまざま。ほかではなかなか見ない独自のラインナップはおいしさにこだわる探究心と遊び心の表れです。

「お店の料理長と一緒に試作をして、今では100種類以上のフレーバーが生まれました。試していない野菜もありますし、まだまだ新しい味を見つけるのが楽しみです」

▲手前中央がアスパラガス。とうもろこし、すだち×きゅうり、ラズベリーなど。
▲調理場には阿南光高校で育てられたトマトと、地元産のヤマモモが。
▲店頭も持ち帰り用も四季を感じられるフレーバーが並びます。

ちなみに、日本のトップシェフが日本各地の美味を発掘し、評価、審査する「食べるJAPAN 美味アワード」で昨年(2024年)、アスパラガスのジェラートが「歌舞伎座サービス賞」を受賞。受賞後半年間、東京の歌舞伎座で販売されました。その際、東京のイタリアンレストランシェフからアスパラガスそのものを購入したいと声がかかったのだとか。

「ジェラートにすることで自社農園のアスパラガスの販路が増えたり、地元産食材のおいしさを知ってもらう機会が増えたりするとうれしいですね。ますます忙しくはなりますが、もっと県外に出ていきたいと思っています(出店情報はインスタグラムで確認することができます)」


四国最東端の地へ、ドライブがてらに

お店は徳島市からだと車でおよそ1時間。店から車で30分ほど走ると四国最東端の岬、蒲生田(かもだ)岬やかもだ岬温泉、古い漁師町の椿泊(つばきどまり)漁港などもあり、一年を通してシーサイドドライブを楽しむことができます。

▲紀伊水道に面した蒲生田岬。この先には灯台も。
▲岬までのルートから見渡せる椿泊の港と、のどかな町並み。

「ドライブがてらに立ち寄られる方も多いですね」と野村さん。
緑の中を走り、海辺の風を感じ、そして季節のジェラートをいただく……。最高じゃないでしょうか。いつかはぜひ、この土地の空気と絶品ジェラートを味わいに来てください。


l’orto(ロルト)
阿南市福井町古津137-4
tel.0884-21-4717
https://www.lorto.net/top/
Instagram @lorto_lorto_4717



l’orto(ロルト)の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

農家の手づくりジェラート詰め合わせ(6個)

農家直営ジェラート店が手作りした、徳島の食材を楽しむ自然派ジェラート。自社農園で栽培したアスパラガスをはじめ、地元の旬野菜・果物を活かしたフレーバーの、店長おすすめを詰め合わせています。