第3回<後編> “にし阿波”に根付くご飯のお供 【前編】では、三好郡東みよし町を尋ねて“にし阿波”ならではの発酵食品「しょいのみ」をご紹介しました。後…
はじめに
“日本の原風景”を感じる風景や文化に出合うことができる場所として、近年、徳島県内で注目のエリアというのが“にし阿波”。県西部に位置する「三好市」、「美馬市」、「つるぎ町」、「東みよし町」の2市2町の総称で、吉野川を挟んで、北岸には標高1060メートルの竜王山を含む讃岐山脈、南岸には徳島県最高峰の標高1955メートルの剣山を含む四国山地という険しい山々が連なっています。海外でも知名度の高い三好市の祖谷地区をはじめ、山間部を中心に独自の食文化や伝統が色濃く残る、徳島の“桃源郷”です。
徳島市内から高速道路で西に向かって2時間弱。“にし阿波”を訪れ、その山や町の暮らしを知り、そこから見えてくる魅力をシリーズでご紹介します。
第3回は、にし阿波の食材を活かした加工品づくりを巡る旅。前編は“にし阿波”特有の発酵食品が作られている三好郡東みよし町へ。この地域に古くから伝わる食文化を探ります。
第3回<前編> “にし阿波”に根付くご飯のお供
東みよし町のパワースポット
「にし阿波」だけで食べられているご飯のお供があると聞いて向かったのは三好郡東みよし町。吉野川をまたいで北には讃岐山脈、南には四国山地と1000メートル級の山々がそびえています。国道沿いには住宅や商業地が密集し、小さいながらも利便性が高くにぎやかな町です。
東みよし町まで来たならと、「加茂の大クス」にちょっと寄り道。
樹齢1000年を超える巨大なクスノキです。その高さはというと、周辺の民家よりもはるかに高い26メートル。1956年(昭和31年)に国指定特別天然記念物に指定されました。
まるで森のような存在感の巨樹が、国道沿いから少し入った民家や畑の中にぽつんと現れます。
下から見上げると一層、この大クスが持つ力強さに圧倒されます。
「加茂の大クス」のエネルギーに力をもらって、再び車を走らせます。
にし阿波ならではの発酵食品
「加茂の大クス」から車で3分ほど走って到着したのは、木造駅舎がかわいいJR阿波加茂駅前。
「『しょいのみ』は美馬市脇町から西部、三好市池田町までの一帯でしか食べられていない発酵食品なんですよ」。
教えていただいたのはJR阿波加茂駅前で自宅兼工房を構える「麹屋 本家阿波おんな」の藤原有希さん。地域の伝統製法を守り麹づくりをしています。
「しょいのみ」とは、発酵させて麹にした大豆、小麦、米、そら豆を、醤油等の合わせ調味料に漬け込み、熟成させたもののこと。
「むかしから各家庭でしょいのみをつくっていたんです。麹づくりから家庭でしていたんですよ。家ごとに調味料の配合などが違うので、その家ならではの味がありました」。
地域の味を守る麹屋さん
現在では、しょいのみの麹づくりを「麹屋 本家阿波おんな」が担い、地域の食文化を守っています。
穀物ごとに異なる下処理や品温などを、ひとつひとつ丁寧に行い、温度管理された部屋で発酵を促していきます。
原料の大豆、小麦、米は徳島県産を中心に国内産を使用。そら豆にいたっては国内産を入手できなかったことから、なんと自家栽培をしているそうです。
また、そら豆を麹にすることは全国的にも他に例がないそうで、商品化しているのはここだけなのです。
家庭で楽しむ「しょいのみ」
出来上がったそれぞれの穀物の麹は、乾燥後にブレンドして「しょいのみの素」が出来上がります。
この「しょいのみの素」に、醤油やお酒などの合わせ調味料で漬け込み、夏は約1週間、冬は約3週間、熟成させれば「しょいのみ」の完成です。
あらかじめ調味液で熟成させた「しょいのみ」も販売しています。
調味液が濃厚に染み込んだ豆類はほろほろとした食感で、発酵食品ならではの旨味とほのかな酸味が混じった深い味わいがあります。醤油をかける代わりに使えばひと味もふた味も旨味が倍増するし、さまざまな料理の万能調味料としても使えそう。
藤原さんのおすすめは「ご飯のお供だけでなく、生野菜と和えてマリネにしたり、クリームチーズと混ぜたりしても美味しいですよ」と教えてくれました。
後編の舞台は美馬市美馬町。この町特産の青とうがらしを使った加工品「みまから」に迫ります。
麹屋 本家阿波おんな
徳島県三好郡東みよし町加茂1863-5
tel. 0883-76-1500
https://honke-awaonna.com/
麹屋 本家阿波おんなの商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
「しょいのみ」とは生麹と調味液をじっくり漬込んだ徳島の発酵食品「食べる醤油こうじ」です。お味は「プレーン」と「しょうが」の2種類。組み合わせ自由で2個お選びいただけます。