[今日は、どこから見てみましょうか。]
第33回:冬のカフェの一日。

[今日は、どこから見てみましょうか。] 第33回:冬のカフェの一日。

先日、この連載の打ち合わせがあって、その際に担当者の方から「カフェの一日って、どう過ごしているのか気になる」という話があった。そうだなー。何か特別なことはあるかな? わからないけれど、せっかくなのでカフェのとある一日を書いてみることにした。冬の上勝の暮らしをイメージしながら、読んでもらえれば。

9:30

カフェに出勤。この日は霜が降りるほど冷え込んだので、到着と同時に薪ストーブに火を入れる。前日、常連さんから薪ストーブの焚き付けにと、木材をたくさんいただいたばかり。ノコギリで適度な大きさに切り、いくつか切れたら、杉葉を着火剤にして火をつける。

歩いて3分ほどの道沿いには、杉葉がたくさん落ちていて、無くなれば拾いに行く。車の運転手達からは邪魔者扱いされる杉葉だが、薪ストーブを使う時はこれがなきゃ、というほど優秀。杉の油ですぐさま火が立ち上がり、木材に火を移していく。

▲ノコギリを使うと息が切れる…。エクササイズにも良い。冬は篭りがちだから……。

薪ストーブの準備に目処がつけば、ランチの仕込みの確認や店内の清掃に取り掛かる。

10:15

一旦準備が落ち着いたら、コーヒーを淹れる。カフェでは、繰り返し使えるセラミック製のコーヒーフィルターを使っている。スタッフみんなでコーヒーを飲んで予約の確認など。

ちなみに、私はホットコーヒー派だが、なぜだか当店の常連さんはこの時期、アイスコーヒーを飲む人が多い。なぜ? と不思議に思うけれど、聞いても返ってくる返答には「気持ちが燃えているから」だとかよく分からないものが多いので、放置している笑(常連さん達とは仲良しです)。

▲お店のブレンドコーヒーを飲む日が多いが、時にはスタッフが買ってきてくれたコーヒー豆を淹れたりすることも。

11:00

BGMや電気をつけ「OPEN」の看板を出し、開店。この日はオープンと同時にランチのお客様やカフェ利用のお客様がご来店。忙しさは日による。冬は静かな日も多い。

空いた時間に、上勝町民向けのSNSを使って、今週のランチについてお知らせする。

▲現在、週替わりでランチメニューを用意していて、この週は肉豆腐ランチ。箸置きは白梅。

13:30

ランチも落ち着き、常連のお客様のご来店。なんと、チョコレートブラウニーをスタッフの人数分、手作りして持ってきてくれた(なんていい子!)。みんなでたわいも無い話をしながら過ごす。

朝、点けた薪ストーブが十分に温まり、店内はちょうど良い温度に。途中、暑くなりすぎたら玄関や裏口などのドアを開けて温度を調整。この時期の温度管理は敏感に。

▲炎を見ているだけでも暖かくなる。

14:15

お昼ご飯を食べる。この日はちゃんと食べられた。バタバタしていたら、16時頃に食べることもあるし、食べられないこともある。忙しさ次第。

私が昼食を食べる傍ら、スタッフのSil(シル)くんが、ひたすら木材を切ってくれていた。木を切る時の独特のフォルムがかわいいね、と他のスタッフと話しながら、ありがとうと伝える(結構長い間、頑張って切ってくれていたから)。

▲両足で木材を掴んで、背中を丸め、切り株の上でノコギリを引くSilくん。その必死さがかわいらしく映る。

15:00

この日は町内の「ゼロ・ウェイストアクションホテルHOTEL WHY」(https://why-kamikatsu.jp/)からお弁当の注文が入っていたので準備。惣菜を詰めていく。自家製ハンバーグがメインのお弁当。夜の上勝町はご飯を食べられるお店が限られているので、この日のように夜ご飯用に宿泊者の方から注文を受けることがある。美味しく食べてもらえますように!

この時間になると、薪ストーブに薪をくべるのをやめて、空気を取り込むレバーを締め、ゆっくりと燃焼するように調整する。17時の閉店時間には燃え尽きるように。

▲町内の団体がリユース弁当箱の貸し出しをしてくれているので、いつもそれを借りてお弁当を提供している。お箸やコップ、スプーン、お皿なども借りられる。

16:00

お弁当を冷ましている間に、オンラインのミーティングに参加。上勝町のごみ分別数の見直しについて、廃棄物処理業者さんや役場と意見交換をする。

16:50

ミーティング終了。お弁当の最終確認をして配達の準備。お店の看板を「CLOSE」に裏返し、閉店作業を済ませる。

17:15

「お疲れ様です!」残っているスタッフ達に声をかけ、店を出る。「HOTEL WHY」に弁当を配達してカフェ業務は終了。この日は息子のサッカーの練習日だったので、そのまま学童保育に迎えに行き、隣町の練習場まで送り届ける。

とある一日はこんな感じ。書いてみたけれど、冬のこの時期は、薪ストーブの管理と、カフェの仕事の同時進行が基本である。心地よい空間を作るために、皆で火の見守りをする。

お客様も薪ストーブが点いていると喜んでくれる。

カフェが10年経って、オープン当時よりも来てくださるお客様の“第二の家”になりたいという想いが増している気がする。


*2021年7月から始まった本連載は今月で終了です。これまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!4月からは、また新しい形でリスタートします。お楽しみに!


今月の草花〜上勝だより〜

町内の至る所で、梅の花が咲いている。いろんな色があるが、白梅が最も青空に映えると思っている。料理のつまものである「いろどり」を生産している上勝町。いろどり農家さんは、この写真の種類の梅を「青ガク」と呼ぶらしい。ガクが緑色のタイプのもの。品種名ではなく、農家さん独自の言葉らしい。私も今回初めて知った。きっと、いろどり農家さんしか知らない言葉、スラングがあるのだろう。




プロフィール
東 輝実 / Cafe polestarオーナー

1988年徳島県上勝町生まれ。関西学院大学総合政策学部在学中よりルーマニアの環境NGOや東京での地域のアンテナショップ企画のインターンを経験。

2012年大学卒業後、上勝町へ戻り仲間とともに「合同会社RDND(アール・デ・ナイデ)」を起業。2013年「五感で上勝町を感じられる場所」をコンセプトに「カフェ・ポールスター」をオープン。その後はカフェを拠点として「上勝的な暮らし」の発掘、情報発信、各種プログラムの開発などに取り組んでいる。2015年、男児を出産し1児の母。