無農薬・無肥料の「自然農法」野菜。
オーガニック農園の恵み

無農薬・無肥料の「自然農法」野菜。<br>オーガニック農園の恵み

これが、ほんものの味

土に余計な手を加えず、農薬も肥料も使わない「自然農法」を実践している農園があります。徳島県石井町にある「若葉農園」です。
約15ヘクタールもの広大な畑では大根、ニンジン、小松菜、チンゲンサイ、カブ……季節ごとの野菜を年間で50~60種類を栽培しています。それらは一切、市場には出回りません。週3日のペースで「野菜定期便」として全国に待つ500人の会員のもとへ届けられています。

▲旬の8品目を詰め合わせた「野菜定期便」。1か月の発送数はおよそ1000パック。

農薬と化学肥料を用いて作物を効率よく生育する「慣行農法」に比べて、「自然農法」を取り入れているところはまだまだ少数派。
日本の市場で流通している野菜は「慣行農法」によって作られたものがほとんどで、「有機農法」の割合は0.5%、さらに「自然農法」となると、その割合はたったの0.01%以下なのです。

「自然農法」で作られる野菜は、「慣行農法」で作られる野菜と比べてゆっくりと成長します。そのため収穫するまでに、時間と手間がかかってしまいます。

それでも「若葉農園」代表の横田光弘さんが「自然農法」にこだわるのは、農薬や肥料の力を借りて育てた野菜との圧倒的なおいしさの違いを確信しているから。

無農薬・無肥料で育てると、野菜は土の養分を吸収しようと自分の力で根を伸ばし、体に養分を豊富に蓄えます。甘やかされず育つほど本来の味が濃くなるというわけです。実際に、畑で手渡されたホウレンソウの葉は驚くほどに甘く、えぐみもありません。

▲代表の横田光弘さん。1994年頃に趣味でお米作りを始めたことをきっかけに、農業の世界へ入りました。
▲甘みがギュッと詰まったホウレンソウ。平均糖度が8.2%に対し、「若葉農園」のものは13.2%を誇ります。

農薬にも肥料にも頼らない農業

「無農薬・無肥料は虫がわきにくい。病気にもなりにくいんです」。横田さんが口にしたのは予想と異なる言葉でした。というのも農薬は害虫の駆除や病気の予防のために散布するもので、肥料は作物の成長を促すためのものだと思っていたから。

「同業者の方が見学にいらっしゃると、開口一番に『ほんまに無農薬か?』とよく言われます。そのくらい“野菜がきれい”ということなんですよね。農薬を使ってないと普通、菜っ葉類は虫にボロボロにされちゃいますから。野菜を生でかじると、甘みの強さや味の濃さが明らかにほかと違うと感じるようで、ようやく無農薬だと納得してもらえます。そもそも、なんで虫がわくかというと土にいろんなものを入れすぎるからなんです。かえって土のバランスが崩れてしまって土が病気になっちゃう。すると、そこで育つ野菜も病気になってしまうというわけです」。

▲石井町にあるホウレンソウ畑。虫食いの被害を受けやすい葉もきれいなまま大きく育っています。

また、肥料の養分にも虫は寄ってくるのだそう。だから、肥料は入れず、その代わりにこまめな除草を行って畑の通気性をよくすることで、害虫予防をしています。

できるだけ土の地力に任せる。そして、人間は野菜がのびのびと、そして美しく育つような環境を整える。それが「若葉農園」の農業に対するスタンスなのです。

▲土壌改良に役立つ大麦を植えている畑。「作物を作り続けることが僕らにとっての土づくり」と横田さん。肥料を与えるのではなく、連作することで土が野菜になじんでいく。

生命力に満ちた“自家採種の種”

「同業者の方にここまで話すと一旦はうなずいてくれます。でも、すぐに我に返って、『肥料やらんのになんでこんなに育つん?』って聞かれるんです」。

 その秘密は「種」。 一般的には、専門店から仕入れた種や苗を使って野菜を育てていますが、「若葉農園」では自家採種の種を使っています。「販売されている種は改良に改良が重ねられて、肥料や農薬を前提に成長するようになっています。うちで使用するのは、あまり改良されていない昔ながらの在来の種子。“育つ力”が強く備わっているんです」。

▲小松菜の種。天日干しして乾燥させています。
▲種は湿気から守るため冷蔵庫で保管しています。

在来種の種から芽を出し、根を伸ばす野菜は、野生の草花のようなたくましい生命力を生まれながらに持っています。在来種には土の記憶が残っており、自家採種を繰り返すことでその土地や気候に順応していくからです。「若葉農園」では育てた野菜から20年近く種を取り続けているため、畑になじみ、すくすくと立派な野菜が育ちます。

「野菜定期便」が、北は北海道から南は沖縄まで多くの人に選ばれているのは、おいしさと品質の高さの証。「ついつい生で食べたくなってしまう」という声もたくさん寄せられています。

▲自家採種用に栽培しているチンゲンサイ。花が咲いた後、種が採れます。

ニンジンの味が輝く無添加のジュース

2018年から作り始めたジュースや甘酒、ソース類など農園の野菜を原料にしたオリジナルの加工品。こちらにも「若葉農園」のこだわりがギュッと詰まっています。

きっかけは愛情こめて作った野菜を無駄にしたくないという思いから。

「過不足なく需要に見合った量の野菜を作ることって難しいんですね。たくさん収穫しても余ってしまえば捨てることになってしまう。そこで、加工してジュースやソースに変えれば野菜のロスを減らせると思ったんです」と横田さん。「はじまりはそうやったんやけど、加工品を作ったことで改めてうちの野菜のおいしさを実感しました。どれも素材の味が際立っているんです」と太鼓判を押します。

 トマトや玉ねぎ、ニンニクなどをミックスした「中濃ソース」や「ウスターソース」は、野菜の濃厚なうま味が生きる商品。フルーティーでいて、完熟果実のようなコクが料理の味を引き立てます。

 鮮やかなオレンジ色が美しい「プレミアム人参ジュース」は、収穫したニンジンをすりおろした無添加のジュース。変色の防止や品質保持のために用いられる食品添加物を使わずに、「自然農法」で育てられた県内産のスダチで代用しています。「ジュースをきっかけに子どもがニンジンを食べられるようになった」という人もいるそう。手軽に野菜の栄養をとれることもあり、人気商品へと成長しています。

 大地のエネルギーを吸い上げ、力強く成長を遂げる「若葉農園」の野菜。小さな種から立派な野菜へとたくましく育っています。

▲「プレミアム人参ジュース」。すりおろしニンジンのトロッとした口あたり。砂糖不使用だから野菜だけの甘さを堪能できます。


<番外編>研修生インタビュー

徳島に集う新世代のファーマー

「若葉農園」では、より多くの人に「自然農法」を知ってもらうため2011年から研修制度を導入。宿泊施設を整え、全国各地から研修生を受け入れています。

▲関東から九州まで日本各地からやってきた研修生たち。

 1998年に若葉農園を創立して以来、横田さんが20年近く蓄積してきたデータに基づいて組み立てられているスケジュールが研修生にとっての教科書。研修期間の約3年、決められたカリキュラムはありません。毎日日の出から日没まで畑に出て、土に触れ、作物と向き合う。実践を通して「自然農法」のいろはを学んでいます。

 これまで送り出した卒業生は約30人。「自然農法」の農家として独立する人、野菜の知識を生かしてオーガニックレストランを開く人……皆それぞれの夢を胸に巣立っていきました。現在は研修生として10代~40代の約10人が働いています。
 そこで、研修生の桜井優喜さん(40歳・大阪府出身)、松本大輝さん(19歳・栃木県出身)、野村美里さん(29歳・長野県出身)の3人に、「若葉農園」を選んだ理由や研修生活について伺いました。

▲左から、桜井優喜さん、松本大輝さん、野村美里さん。会話の和気あいあいとしたムードから仲のよさが伝わってきます。

―全国の数ある農園から「若葉農園」を選んだ理由を教えてください。

桜井
以前は高知で7年ほど漁業をしていましたが、「農業で食べていきたい」と思い立ち、大阪で開催していた農業の求人フェアに出向きました。そこで「若葉農園」と出会いました。
「自然農法」に惹かれたのはもちろん、農園の規模の大きさも魅力でした。年中、野菜を作っているので農閑期がないのがいいなぁと。

松本
僕は栃木の高校を卒業後、徳島に来ました。高校時代、通っていたジムのトレーナーさんに食の大事さを教えてもらっていて、無農薬・無肥料の野菜がいいと聞いたんです。
それでトレーナーさんに自然農法のキャベツをもらったことがあって食べてみたらすごく美味しくて! 自分でも作ってみたいと思うようになり、知人の紹介で「若葉農園」で働くことになりました。

野村
実家が農家なので前々から農業には携わっていたのですが、環境に負荷をかける農法に違和感を持ち、「自然農法」を学びたいと思うようになりました。
長野の冬は雪深いので、冬でも野菜が栽培できる暖かい中四国で農園を探していたところ、見つけたのが「若葉農園」でした。

▲研修生のメンバーは仕事仲間であり、家族のような存在。

―研修生は1日をどのように過ごしているんでしょうか。

桜井
朝6時に集合し、その日何をするのかミーティングして確認します。午前中は収穫、出荷の準備、午後は畑の手入れなどをすることが多いですね。

―実際に「自然農法」での野菜作りに携わってみて感じたことは何でしょうか?

野村
「自然農法」は農薬をまかないので除草が大変だと思っていたんですが、そうではありませんでした。
除草や水やりなどのタイムスケジュールが野菜ごとにしっかり管理されているから、スムーズに作業を進められます。
それに、肥料を使わずに野菜が大きくなることに半信半疑だったんですけど……しっかりと立派な野菜になることを実感できて、改めて驚きました。

桜井
「自然農法」と聞くと、自然のままに、のんびり気ままに野菜を世話するイメージがなんとなくありますよね?
でも実際はきっちりとスケジュール通りに動かないといけません。たとえば、除草が後回しになると雑草が大きくなってかえって除草作業に時間がかかってしまううえに、野菜の育ちも悪くなる。だから、効率よく計画通りに作業を進めることを大切にしています。
ここは、過去のデータがきちんと蓄積されているので、いつどんなことをすればいいのか、勘や経験がなくても分かるようになっているんです。
それは横田さんが「自然農法」をより多くの人たちに広めたいという気持ちがあるからだと思います。

松本
野村さんと桜井さんが言ったように、僕も「自然農法」は草がボーボーに生える想像をしていたし、気ままにゆっくり作業しているイメージがありました。
農薬を使わない分、除草を徹底しているところにも驚きました。雑草が生えている部分は土の表面を削り取って何もないきれいな状態にするんです。ここならではの除草対策も学べて勉強になります。

▲「野菜定期便」などを発送する際には野菜の種類やレシピなどを紹介したお手紙を添えています。
この作業も研修生の仕事。

 研修期間を終えた3名は「若葉農園」での学びを糧にどのような道に進むのでしょうか。
 彼らの選択が楽しみです。


若葉農園
徳島県名西郡石井町浦庄下浦326-6
https://www.wakaba.jpn.com



若葉農園の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

プレミアム人参ジュース350ml
自然農法の人参を使った、飲み切りやすい小さめサイズのジュースです。防腐の為のPH調整には自然栽培のすだちを使用。ほぼ人参だけのジュースなのにしっかりと甘みがあり、「ほんとに人参だけ?」と驚かれます。