ずっと懐かしい。ずっと新しい。
みんなが知っている、たぬきのお菓子。

ずっと懐かしい。ずっと新しい。 みんなが知っている、たぬきのお菓子。

徳島県民の人生に「金長まんじゅう」あり

「徳島の銘菓は?」と聞かれると、多くの人が名前を挙げる「金長まんじゅう」。徳島県民にとってはおやつに手土産にと馴染み深い、ふるさとのお菓子です。

「月に浮かれて ぽんぽこぽん 甘いリズムが とろりと溶けて ほ~らね♪」。
このCMソングを最後まで歌い切れる県民も多くいます。CMが始まったのは1987年ごろと記録にあるものの、子どものころから見ていたと言う50~60代の方もチラホラ。真偽のほどはわかりませんが、とにかく、「金長まんじゅう」を手にすると、「おばあちゃんちでよく食べていた」「給食に出てきた」「お土産にもらった」など、それぞれの懐かしい記憶が紐解かれ、“金長まんじゅうと私”話に花が咲くのです。

▲満月の下で踊るたぬきたち。「金長まんじゅう」のCMより。

徳島の民話「阿波狸合戦」から生まれた

「金長まんじゅう」は1937年に誕生しました。なんと、今年(2022年)で85歳! つまり、第2次世界大戦時の徳島大空襲も昭和南海地震も乗り越えてきたということになります……すごいお菓子。これを生み出したのは、徳島市の南に隣接する小松島市で1930年に創業した菓子店「ハレルヤ」でした。

▲1933年(昭和8年)ごろの「ハレルヤ」。

「金長まんじゅう」という名前は、“金長だぬき”に由来しています。

もともと阿波・徳島はたぬきにまつわる民話や伝説が多いところ。『県別ふるさとの民話32 徳島県の民話』(日本児童文学者協会編/株式会社偕成社、1982年)にも県内各地に伝わるたぬきの民話のひとつに、小松島市に伝わる「タヌキ合戦」が紹介されています。

天保のころ(江戸末期)、小松島市・日開野に住んでいた金長というたぬきが子どもたちにいじめられていたところを染物屋「大和屋」の主人が助けました。金長はその恩に報いるためにその主人のところで一生懸命働くと、店は大繁盛しました。やがて修行をしていた津田(徳島市)の六右衛門(当時の四国だぬきの総大将)との間で阿波だぬきの総大将を決める戦いとなり、金長が勝利しました。

この小松島にゆかりのある金長だぬきの徳、そして栄誉をたたえて、当時の店主が「金長まんじゅう」を発案したと伝えられているのです。

▲「阿波狸合戦」が描かれた絵画(ハレルヤ所蔵)より一部抜粋。

昭和初期としてはハイカラなチョコレートをもちいて、体(外側)は茶色に、お腹(内側)は自家製白あんで、たぬきのお腹をイメージした丸い形に仕上げました。もちろん、見た目だけではありません。味に妥協があるはずもなく、ほろ苦いチョコレート風味の皮に徳島が誇る上質な阿波和三盆糖を使い、自社製餡したほどよい甘さの白あんとの相性は抜群。あっという間にペロリ。

▲手のひらサイズのまんまるな形。甘すぎないからお茶にもコーヒーにも合います。

1939年にはちょうど映画『阿波狸合戦』が公開され、そのヒットとともに「金長まんじゅう」も一躍人気のお菓子に。また、当時の小松島は徳島県の海の玄関口として栄えた港町だったこともあり、船で出入りする県外の人々にも小松島の、そして阿波・徳島のおいしい土産菓子としてすっかり定着しました。

驚くべきことに、その形も味も85年前当時のまま。あえて変えることなく大切に受け継がれています。だから年配の方々にとってはずっと懐かしく、子どもたちにはとってはいつも新鮮。周りを見渡しても、世代を問わずに誰もが一緒に味わえるお菓子はありそうでないものです。

地元の恵みをお菓子に詰め込んで

「ハレルヤ」ではほかにも数多くのお菓子を作っています。「生金長」や「桜金長まんじゅう」など季節限定商品なども含めて、その数なんと50~60種類。営業開発部店舗企画課の象潟奈央(きさかた なお)さんによると、「この辺りの地元農家さんや徳島県内の契約農家さんからも農作物を積極的に仕入れています。例えば、さつまいもは形や大きさが不ぞろいで市場に出回らない規格外のなると金時。新鮮な生芋の状態で仕入れ、自社でペースト状に加工して『なると金時スイートポテト』などのあらゆるお菓子に使っています。また、那賀町の木頭ゆずは香りが強く、加工してもその爽やかな香りが残るのでお菓子と相性がいいんです。ほかにもやまももやいちご、桃など、その季節ごとに県内各地の生産者さんから仕入れた旬の恵みを生菓子などに使っています」。

▲規格外でも味はまったく変わりません。無駄にせずお菓子に。
▲上品な甘さで定番人気の『なると金時スイートポテト』。
▲徳島県の木でもある、やまもも。甘酸っぱい味わいを生かして。

さつまいも農家での苗植えや収穫などの研修もあり、素材への知識を深めつつ、地元農家とのつながりも大切にしています。さらに、お菓子作りで使用した水を微生物の力を使って浄化する「活性汚泥法」の仕組みを整備。水をきれいにして川に流しています。このように、昨今のSDGsという言葉への関心が高まる以前から地元密着をベースに、地域や自然環境に配慮した取り組みも行っています。

▲毎年さつまいも農家へ研修に。生産者から学ぶことも多いそう。

「SNSでハレルヤのお菓子の写真をあげてくれているのを見つけると、励みになります。それに農家さんが自分たちの農作物がお菓子になっているのを見て喜んでくださるとやりがいにも繋がります。お客さんからも地域からも必要とされ、愛される会社でありたいと思っています」。

▲「金長まんじゅうは学校の給食にも出ていた身近なお菓子です」と、象潟奈央さん。

“食べて、見て、作って”を体験!

2011年には「ハレルヤスイーツキッチン」をオープン。「金長まんじゅう」などのお菓子の製造工程をガラス越しに見学できる工場や店内出来立てのケーキやシュークリームなどが食べられるカフェ、ハレルヤのお菓子がほぼすべて揃うショップ、さらにはお菓子作り体験コーナーまでを併設した、いわば“お菓子の館”です。

▲ショップやカフェなどが併設された広~い店内。

▲生菓子のショーケースに“たぬきケーキファミリー”を発見!

もちろん、工場見学は無料です。見学通路にはお菓子の製造過程を映し出したモニターを設置、歴史を感じる貴重な資料なども展示されていて見ごたえ十分。学校の社会科見学などにも利用され、ここで「金長まんじゅう」ファンになる子どもたちも。年配の方も家族連れも、気がつけばみな夢中で見入っています。

▲製造工程を見られるのは大人も子どももワクワクするもの。
▲県内外のお客さんによる「ハレルヤ愛」が綴られています。

お菓子で思い出を紡いで

そして、ここで密かに人気を集めているのが、お菓子作り体験。小学生以上なら誰でも参加することができ(要予約)、スタッフの指導のもと、自分だけの“たぬきケーキ”を作ることができます。一工程ずつ手ほどきを受けながらクリームを絞ったり、チョコレートをかけたり、ナッツを飾ったり……。

▲スタッフのサポートもあるので安心して体験できます。

みるみるうちに愛らしいたぬきの姿へと変身し、約40分で完成! 最後に、“たぬきケーキマイスター認定証”をもらって体験は終了します。作ったたぬきケーキは箱に入れてお持ち帰り(認定証のお渡しは個人の体験受付のみ)。

▲昨今話題のたぬきケーキ。どの子も愛らしい表情に出来上がり!

「このハレルヤスイーツキッチンもご家族やお友だちとの思い出づくりの場になれたらと思っています。ハレルヤのお菓子と同じように、普段から気軽にご利用いただければうれしいです」と、象潟さん。

▲敷地内にある金長たぬきを祀った「金長大明神」。お店の守り神です

おいしいお菓子や老舗のお菓子は世の中にたくさんあります。でも、「ハレルヤの金長まんじゅう」のように、その名前を聞いただけでCMソングが頭の中に流れてきたり、たぬきのイラストを思い浮かべたり、みんなが同じほっこりと温かなイメージを共有できるお菓子はそうそうありません。

だから時折ふと食べたくなる。愛しい人に届けたくなる。人生の中の、暮らしの中のあらゆるシーンでさりげなく寄り添ってくれるハレルヤのお菓子はまぎれもなく、徳島の銘菓なのです。


株式会社ハレルヤ
徳島県板野郡松茂町広島字北川向四ノ越30
tel.088-699-7611
http://www.hallelujah.co.jp/
https://www.hallelujah-sweets.com/


 

ハレルヤの商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

金長まんじゅう 10個入り

チョコ風味の生地で、手芒豆を使用した自社製の白あんを包みました。 ほろ苦くコクのある皮と、あっさりした白あんの調和の取れた徳島銘菓「金長まんじゅう」です。