木のプロが生む循環。
”木材×藍”が山を、世界を変える

木のプロが生む循環。<br>”木材×藍”が山を、世界を変える

木を知り尽くすプロが考えたこと

「ヨーロッパ、アメリカ、シンガポール、台湾……。商品の販売先は海外が8割ですね」と、教えてくれたのは「AOLA」代表の小濱利郎(こはまとしろう)さん。

「AOLA」は、藍を活用した木製品の開発と製造を手がける会社です。1959年創業の建築建材メーカー、ダイリFPC(旧:大利木材)内において、藍関連の部門が急成長を遂げ、2016年にグループ会社として独立しました。

代表の小濱さん。晩酌は酒器セットがお決まり。

「この事業を始めたきっかけは環境問題でした。もとは材木屋です。山を管理し、木を伐採するところから始まり、建築用建材や木工品などの製造、そして販売までを一貫して行ってきました。しかし、日本の山はすでに壮年期を迎えていて二酸化炭素を吸わない山になっています。だからといってむやみに伐採するだけではダメ。木の使い道が必要です。伐採した木を使い、再び木を植えて、二酸化炭素を吸う山に変えていかなければなりません。この一連の流れがうまく循環するサイクルを生み出していかなければ、という環境に対する想いが根底にありました。加えて、市場を拡大するために、徳島に古くからある藍を合わせたら今までにないモノづくりができそうだと考え、2010年頃から木材と藍を合わせた新たな事業の開発に取り組み始めました」。

当初、藍染の染料「すくも」に着目。木材に塗ってみたところ、青緑色になるだけで理想とする藍色が出なかったといいます。しかも、すくもではコストがとんでもなくかかってしまうことがわかり、いわゆる藍染の手法は断念。その後、過去の文献を調べていくうちに1860年代頃には藍が塗料として使われていた歴史に出合います。その事実をヒントに試行錯誤を重ね、「AOLA」オリジナルの藍塗料及び、 “天然藍塗装”という独自技術を開発するに至りました。


県南の清流から生まれる藍色

「納得のいく藍塗料を作るために契約農家とともに自社で藍の畑を管理しています。藍の葉からきれいな色素を引き出すためには水が肝心。上流に5軒ほどしか人家がない県南の清流沿いで藍を育て、藍塗料を作っています。メダカが群がるほどの透明度ですが、台風や長雨が続くと水が濁るため作業ができません。作業は水次第。すべてが美しい藍色を作るためのこだわりです」。

休耕田だったところを藍の畑として利用。
県南は清流に恵まれ、水量も豊か。

藍塗料を作る工程は、すくもづくりのそれとは大きく異なります。 刈り取った藍の葉も枝も一緒に水の中に入れて色素を引き出したら、ろ過を何度も繰り返します。その後、蒸留して煮詰まった液が藍塗料の素。使用するときに水で溶解したあと、素材に吹き付けたり、塗り込んだりすると、木目を生かしつつ美しい藍色をまとった製品に仕上がるのです。もちろん、塗装はベテランの職人によるもの。ひとつひとつ丁寧な手仕事から生まれます。

木と藍の良さを最大限に活かす手法を編み出しました。


オンリーワンという特別感

「木目がひとつひとつ違うので同じものがありません。そこが木の良さですよね」と、小濱さん。

カップを始め、酒器、皿、コースターなど、リクエストに応えるうちに商品のラインナップは増えていったそう。しかも、素材はすべて国産。ヒノキやトチ、スギ、カエデと、用途の適性を踏まえて選んでいます。さすが木のプロ!

軽さも魅力のひとつ。使う人を選びません。
スイーツとも相性抜群。食卓のアクセントに。
小物入れとしても。どう使っても藍色は美しく映えます。

もちろん、食器としての衛生面、安全面にも配慮。

「世界基準で一番厳しいと言われているイタリアの食品接触製品検査に合格しています。イギリス、アメリカの検査もクリアしているので、輸出の際も問題ありません。安心して使っていただけます」。

世界有数の第三者検査機関「TUVRheinland」の認定証。

ほかの木製品同様、食洗機は使わずに熱にさえ気をつければ、一般的な食器と同じように扱うことができるのです。 見た目のみならず実用的でもあるため、プレゼントとして人気があるのも納得。


徳島から世界へ、そしてコラボも

国内にとどまらず、海外で人気を集める「AOLA」の商品。そのきっかけとなったのは、2019年8月15日からおよそ1か月間、羽田空港国際線ターミナルで行われたテストマーケティングに参加したことでした。

全国公募約180社から選ばれた15社が日本の工芸品や日用品を出品。期間中、インバウンド客を中心におよそ1万人が来場し、15か国154人が購入した中で、「AOLA」の商品は販売個数及び、目を留められた時間ともにナンバー1という結果に。

「私たちのモノづくりが認められてうれしかったですね。日本の職人技に海外の方は驚いていました。この結果を踏まえて、2020年1月に“雑貨のパリコレ”と呼ばれる『メゾンドオブジェ』にも参加したのですが、そこでも評価されて、某有名ブランドからコラボの相談やアメリカのセレクトショップから大口発注などがありました」。 詳しくはYouTube内、「世界は今 JETRO Grobal Eye」チャンネルの「【JETRO】羽田空港で調べてみた!外国人に売れる商品とは?」でご覧いただけます。

羽田空港でのテストマーケティングが海外展開のきっかけ。

また、天然藍塗装の技術は木製小物にとどまらず、建築物や内装デザインなどにも光っています。

公共施設や店舗などの内装も広く手がけています。

「AOLAの名前の由来は『青い奴ら』。藍を使ったことわざに、“青は藍より出でて藍より青し”がありますよね。つまり、伝統を追い越す、じゃないですが、保守的にならずに成長していくよ、というコンセプトのもとに立ち上げた会社です。だから、求められれば試してみてできるかぎり応えたい。そんな気持ちでやってきました。モノづくりは楽しいですよ」。

山の環境問題を発端にスタートした取り組みから10年を越えて、木のプロが生み出したもの。それは、美も機能も兼ね備えた、“木×藍”の新しいカタチです。


合同会社AOLA
徳島県徳島市津田海岸町3-77
tel.088-662-5505
https://aola.themedia.jp



AOLAの商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

藍染檜 酒器セット

これら檜製品は樹齢100年前後の天然ヒノキを用いています。表面は藍をグラデーションにデザインし、ジャパンブルーと称される藍ならではの色合いをお楽しみ頂けます。