目次 ファッション業界から藍染めの世界へ 伝統的な“正藍染め(しょうあいぞめ)”でウールを染める “藍が藍を呼ぶ”感覚 「天然素材」×「藍染め…
お日さまの恵みを受けて
「この新野の谷口地区には吉永っていう苗字が2軒あって。うちは西にあったから西地と呼ばれていたそうなんです」と、社名の由来を説明してくれたのは「西地食品」代表の吉永真由美さん。
吉永家は江戸時代後期の文政6年(1823年)からおよそ200年続く、かんきつ農家。東京ドーム4個分はあるという広大な畑で、ゆず、すだち、ゆこう、だいだいなどすべてを露地栽培しています。
露地栽培とはビニールハウスなどによる保護、管理された環境ではなく、野外の自然な環境で栽培する方法のこと。収穫物は青果として販売するものもありますが、果汁や果皮を使った加工品にするものがほとんどです。
「天気の影響を直に受ける露地栽培は、ハウス栽培に比べると、不揃いな形になったり、傷がついたりしやすいんです。でも、加工する分、見た目にこだわる必要がないから露地でいい。せっかくなら太陽の光をたっぷり浴びられる環境で育てたくて」と吉永さんは頬をゆるめます。
防腐剤ゼロの無添加勝負
果汁の加工を手がけるようになったのは明治の頃。吉永さんのひいおばあさんの代に、魚の行商がゆずの果汁を買い求めたことをきっかけに作り始めました。
現在、果汁は料亭やポン酢メーカーに卸す業務用から一般向けまでを製造。「自然のものは自然のままが美味しいでしょう」という吉永さんの言葉通り、防腐剤は一切使っていません。体に優しいものを作りたい想いから、無添加を貫いています。
本来の風味のまま果汁に
加工場は、夏が暮れる頃から急に慌ただしくなります。9月のすだちを皮切りに、10月はゆこう、11月・12月はゆず、1月はだいだいとめまぐるしいスピードで収穫、加工、出荷が順次行われます。
すだちのシャープな酸味と清涼感、幻の果実ともいわれるゆこうのマイルドな爽やかさ、ゆずのふわっと広がる優しい風味、だいだいの苦みを抑えた豊かな香り。それぞれの果実が持つ天然の香りと味を引き出すために、搾汁は細心の注意を払います。
「圧をかけすぎると皮の苦みが出てしまうし、一方でゆるめすぎると香りが少なくなってしまうんです」。吉永さん自らが現場に立って、搾り具合を確認し微調整しています。搾った果汁はその日のうちに瓶詰めし、冷蔵庫へ直行。保存料を入れなくても、すぐに低温保存することで鮮度を長持ちさせることができます。
原材料はとにかくシンプル
2016年には果汁を原料にしたシロップを考案。もちろん、こちらも防腐剤は不使用。 「かんきつ類はもともと酸が強いから、ある程度は日持ちするんです。ただ、防腐剤なしだと色落ちしやすくなるので、それを防ぐために自然のもので代用しています。企業秘密だから何かは言えないんだけどね」と、吉永さんは茶目っ気たっぷりに笑います。
また、かんきつ類のシロップの甘さは体に優しいてんさい糖で。余計なものを加えず、シンプルな製法だからこそ、素材本来の味が生きています。
最後は土に還って次の果実を育む
製造の現場で感じるのは環境への心遣い。この日の加工場では果汁を搾り終えた後に冷凍保存されていたゆずの皮が加工されていました。細くスライスされた皮は漬物メーカーやラーメン店に卸すのだといいます。
ある一角では瓶が熱湯に浸かっています。酒瓶を買い取って洗浄・消毒を行ったのちに、果汁を入れる容器として再利用。他に再生ガラスのボトルも活用しています。
敷地の奥で見つけたのはもみ殻の山。さらに、その向こうには搾り終わった果実の皮がどっさり。「搾りかすは廃棄せずに置いておいて発酵させます。もみ殻と混ぜ合わせたら堆肥になるんです。畑の土づくりのときにまいています」。果実が収穫されてから再び土に還るまで、ひとつの加工場で循環する仕組みができあがっています。
「収穫物を無駄にしないように工夫しています。今はゆずの種を使って新しい商品を開発しているところ。そしたら本当に捨てるところがなくなるんです」。
かんきつ類の栽培から商品の加工・製造まで一貫している西地食品だからこそ、最後まで実りを生かす努力を怠りません。実りひとつひとつに注がれる愛情によって新たな商品が生みだされています。
西地食品
阿南市新野町谷口121
https://www.nishiji-foods.com/
西地食品の商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
ゆずシロップ500ml
自社で搾汁した、濃厚な香り漂うゆず果汁のシロップです。容量の約半分がゆず果汁です。日本はもちろん、海外でも人気の弊社のロングセラー商品です。