「竹のまち」阿南産のメンマ
手づくりの味が里山を守る

「竹のまち」阿南産のメンマ 手づくりの味が里山を守る


「純国産メンマプロジェクト」との出会い

太平洋や紀伊水道に面する徳島県第二の都市、阿南市。LED発祥の地であることから「光のまち」と呼ばれていますが、実は里山のあちらこちらに竹林が広がる「竹のまち」でもあるんです。古くから竹人形などの民芸品や竹製品が製造されてきた歴史があり、現在も県内有数のタケノコの産地。毎年、竹にまつわる出店者が集う「阿南市活竹祭(かっちくさい)」も開催されるほど、竹でにぎわっています。

▲徳島県阿南市羽ノ浦町周辺の風景。山の黄緑色がかったところが竹林です。

ただその竹が現在、実はある問題になっているというのです。
その問題とは放置竹林。竹製品の需要の減少や山の管理者の高齢化など、さまざまな要因から放置されたままの竹林が増えてしまっています。

「竹林の管理が行き届かなくなると、土砂崩れの原因になってしまう可能性があるんです。竹はものすごい成長力で繁殖していくので被害はますます広がってしまいます」

“竹害”の深刻さを教えてくれた仁尾修治さん。阿南市羽ノ浦町で、新聞販売とミルク宅配の事業を行いながら、放置竹林問題にも取り組んでいます。

「新聞の折り込みとして配布する地域誌を自分たちで発行していた頃、地域の山を掃除している方たちを取材したことがありました。そこで竹林を整備することの大変さを知って、まずは自分のできる範囲で竹林整備に取り組んでみようと思ったことがきっかけです」

▲地域誌「ViVA羽ノ浦」。竹林整備を取材したのは2021年3月号。

整備のために刈り取った竹をチップに加工して何かに活用できないかと、燃料にしたり肥料にしたりと試行錯誤している最中の仁尾さんが、運命的に出会ったのが「国産メンマプロジェクト」。「美味しく食べて竹林整備」を合言葉に国産メンマの製造販売と竹林整備を行う、全国的なプロジェクトです。

海外の品種「麻竹」が原料であるメンマは国内で流通しているうち9割以上が輸入品なのですが、日本に生育する孟宗竹(モウソウチク)や真竹(マダケ)でもクセのない美味しいメンマができるんだとか。美味しいうえに、竹林問題も解決できるとあって、名誉代表の日高榮治(ひたか えいじ)さんを中心にそのプロジェクトは全国各地に広がっています。

日高さんのもとでメンマの下処理方法などを習得した仁尾さんは、その後、独自にメンマの味付けを研究し、2022年、阿南市の放置された孟宗竹の竹林から生まれたメンマを製造販売する「におメンマ」を立ち上げました。

▲「におメンマ」が製造販売する、阿南市竹100パーセントの「ひのまるメンマ」。

ひと晩で50センチ以上も成長する幼竹

4月中旬、「におメンマ」が一年でもっとも忙しい季節になりました。
メンマづくりのシーズンです。加工場を訪れるとすでに山のように積み上げられた何十本もの孟宗竹の幼竹が! たくさんのスタッフたちがせわしなく加工作業をしています。

▲加工場で黙々と作業を進めるスタッフさんたち。

仁尾さんに付いて加工場から車で3分ほどの山へと向かうと、竹林の至る所で勝手気ままに飛び出している幼竹が見つかります。膝くらいの高さのもの、腰くらいの高さのもの、さまざまです。

▲画像左側は仁尾さんが整備している竹林。右側は敷地外のため整備していない竹林。「傘を差して歩けるほどの間隔」で竹林整備をするのが基本だそう。

メンマづくりに最適なのは背丈ほどの高さの幼竹。見定めた幼竹の上部と下部をそれぞれ20センチメートル程度切り落とし、約150センチメートルの長さにして運び出します。幼竹はとても柔らかく、小型のノコギリを使って片手で難なく切れてしまうほど。

▲背丈ほどの高さに伸びた幼竹。まずは頭部分を切り落とします。
▲続いて根元部分を切ります。小型のノコギリで切り落とせるほど柔らかい。

「この時期になると毎日のように新しいタケノコが土から顔を出し、あっという間に背丈ほどの高さまで幼竹が成長するので、刈り取りも追いつきません」

この成長力と繁殖力が竹林の管理を難しくさせる要因のようです。


竹林整備の輪を広げたい

「におメンマ」では、近所の方から幼竹の買い取りもしています。私有林として持て余している竹林は豊富な資源。取材日も、「朝から山へ行って刈ってきた」という地元の方が軽トラックいっぱいに幼竹を積んでやって来ていました。

▲持ち込まれた幼竹は、その場で計量され、重さに応じて換金されます。

「自分とこの山を整備して欲しいという声も地域の方からたくさんいただいて、管理を請け負っている竹林もあるんですが、幼竹の買い取りもしてあげたいので、自分たちが管理する竹林の伐採にまでなかなか手がまわらないのが現場です」と、もどかしい表情の仁尾さん。

「もっと竹の活用と竹林整備の循環が地域に広がっていけば」と話します。

▲幼竹の太さが違うのは生まれ持った個性。みんな同じ生まれて一年目の竹です。

地域の人たちが集う手仕事の加工場

刈り取り後の幼竹は、新鮮なその日のうちに塩漬け加工まですべて手作業で行います。
毎年この時期になると手伝いに来てくれるスタッフたちと皮はぎ、カットから茹で作業、塩漬けまでスピーディーに工程を進めていきます。

「高校生のときに近所のすだち農家さんの選果作業を手伝いに行ったことがあるんです。そこで地域の人たちが集い、和気あいあいと働く場所への憧れを持ちはじめて、こういうおじさんになりたいと思っていました」と話してくれた仁尾さん。

その言葉どおりの光景が加工場に広がっていました。

▲幼竹の皮をむくために、まずは縦にまっすぐ包丁を入れます。
▲皮との隙間に挟み込ませるように手を滑らせながら皮をはぎます。
▲包丁で節の部分を切り分けながら小さくカットします。
▲包丁ですっと切れる柔らかさ。
▲カットした幼竹を40分湯がきます。
▲湯がきたて熱々の幼竹。表面が光ってきれいです。
▲茹で上げてすぐの熱々のうちに塩をまんべんなくまぶします。ヤケドをしないよう手袋は2枚重ねです。

およそ1ヶ月間塩蔵熟成したあと味付けをして「ひのまるメンマ」が完成です。


卵焼きや野菜炒めもおすすめ

2022年の「阿南市活竹祭」で初お披露目して以来、より美味しく安心して食べてもらえる商品を目指して、常に改良をし続けているという「ひのまるメンマ」。

「自分が美味しいと思う味付けを追求しているんですが、全国の他のメンマの味付けよりも少し甘辛めの味になっていますね」と仁尾さんは話します。

▲「ひのまるメンマ」プレーン(左)とピリ辛(右)の2種類。

ラーメンのトッピングとして馴染み深いメンマですが、ごはんのお供やおつまみとしてそのまま食べても相性良し!

「タマゴ4個を溶いたボウルにこのプレーン味を加えて厚焼き玉子にしたら美味しいですよ」と、おすすめの食べ方を教えていただきました。

さらに、唐辛子が効いたピリ辛味を大葉でくるっと巻いて食べるだけでさっぱりとした風味に変身! ほかにも野菜炒めにしたりぺぺロンチーノにしたりもおすすめだそうで、意外にもたくさんメンマのアレンジメニューを楽しめそうです。

▲「ひのまるメンマ(ピリ辛)」を大葉と一緒に。

食べたくてもなかなか食べられない、安心安全な美味しい国産メンマ。しかも食べるだけで、放置竹林の問題解決に繋がるかもしれないなんて素敵ですよね。つくり手の熱意と味に対するこだわりの詰まった徳島県阿南産メンマをぜひお試しください。


におメンマ
徳島県阿南市羽ノ浦町岩脇阿千田66-5
tel. 0884-21-8410
https://r.goope.jp/niomenma/



におメンマの商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。

ひのまるメンマ4個セット

JAPAN100% 純国産メンマ。幼竹の切り出しから、熟成、調理まで徳島県阿南市の里山で生産。純国産の竹なのでスッキリおいしく、シャキッとした食感が楽しめます。プレーンとピリ辛の2種類からお選びください。