「神山まるごと高専」学生まるごと日記2026【第2回】「学生と本」「学生と学生」がつながる場、図書館

「神山まるごと高専」学生まるごと日記2026【第2回】「学生と本」「学生と学生」がつながる場、図書館
2023年4月、徳島県の山あいにある町、神山町に開校した「神山まるごと高専」。全国で20年ぶりに新設された、全寮制の高校専門学校として全国から注目を集めています。“テクノロジーとデザイン、起業家精神”を学べるユニークな学校には、いったいどんな学生が集まり、どのような勉強や寮生活を送っているのでしょうか。

神山まるごと高専生自らがライターとなって日常を綴る、人気連載も2年目を迎えました! 今年度は月1回のペースでお届けします。ご期待ください!
下島夏さん

【第2回】「学生と本」「学生と学生」がつながる場、図書館

書き手:下島夏さん(3年生・長野県出身)

第2回を担当するのは、3年生の下島夏(しもじまなつ)です。1年生の入学から2ヶ月が経ち、半分くらいの顔と名前はわかるようになりました。1年生の緊張もほぐれてきた中、最近さらに盛り上がりを見せている(?)学生の人気スポットが、今回紹介する「まるごとライブラリー」という名前の図書館! 私の大好きな場所です。

まるごとライブラリーの様子
▲まるごとライブラリーの様子。このような空間がもう1つあり、学生は気分や読みたい本に応じて過ごす場所を選んでいます。

図書館は、私たちが暮らす寮「HOME」の1階、エントランスを入ってすぐのところにあります。蔵書数は約5000冊。週に1度、地域の方にも開放しており、公共図書館のない神山町では数少ない、本が借りられる場所です。

起業家講師のみなさんの本
▲定期的に学校に来て講演などをしてくださる起業家講師のみなさんの本。立派な本を書いている人も、実際に会ってみるととても身近に感じられます。

神山まるごと高専で学ぶ「テクノロジー」や「デザイン」、「起業」についての本から、小説、漫画、英語の本まで、さまざまな種類の本が並ぶ図書館。プログラミングやweb上の便利ツール、デザインなどはインターネットでも解説を見ることができますが、専門家によって体系的にまとめられた本はやっぱりわかりやすいなと思います。雑誌も購読しているため、読んでいると印刷物のデザインの勉強にもなります。

よく図書館にいる友人は、「After Effects(アフターエフェクト ※アニメーション編集ツール)」や「GitHub(ギットハブ ※制作物を共有できるWebサービス)」の本を読んで学んでいるそうです。私も見てみたのですが、パソコンで見るよりも集中して内容を理解することができました。

起業家講師のみなさんの本
▲起業家講師のみなさんの本。一口にデザインといっても、ロゴ、印刷物、アプリ、アニメ、空間設計など種類はさまざま。

今は授業のほか、さまざまなことに使えている図書館ですが、開校に向けた図書館の整備は大仕事だっただろうなと思います。町内の有志の方が「図書館のないまちで学生を学ばせるわけにはいかない」と蔵書登録などの手伝いに来てくださったと、スタッフさんから聞きました。バーコードを読み込んで、管理システムに入力し、カバーをかける。大変な作業をしてくださる方がいたおかげで、私たちは今、本を楽しめています。

蔵書にカバーをかけてくださっている町民の方々
▲蔵書にカバーをかけてくださっている町民の方々。細かくて集中力のいる作業です。

今は、学生有志の団体「図書館コアメンバー」が蔵書登録、新刊の配架などの活動を行っています。実は私もその1人。本が大好きで、図書館をもっとよくしたい、楽しい場所にしたいと思い、立ち上げから関わっています。

きっかけは、私と友人が、寮で新聞が読めず世の中に置いていかれてしまうと嘆いていたこと。ちょうど近くにいた司書のふじやんが「新聞を取ることを提案してみたら?」と言ってくれ、学生へのアンケートやお試し購読などを経て、今では毎日「徳島新聞」が読めるようになりました。図書館と自分の距離が縮まっただけでなく、この学校ではすでにあるものを受け入れるだけでなく自分たちで変えていくことができるんだ、と実感した出来事でした。

図書館コアメンバーは現在、21人。参加できるメンバーで週に1度、作業を進めています。

司書のふじやん(右)と夏さん
▲司書のふじやん(左)と私。
蔵書登録のため、帯を外してバーコードのシールを貼っている夏さん
▲蔵書登録のため、帯を外してバーコードのシールを貼っている私。本の話をしながら作業ができる、とても楽しい時間です。

活動の中でも私が特に好きなのが、本棚の整理です。まるごとライブラリーは日本十進分類法という本の分類を用いながらも、細かい本の並べ方はコアメンバーで考えているため、かなり自由なレイアウトになっています。その中でも特に目立つのが、本のカバーの色ごとに分かれた本棚。

カバーの色順に揃えられた本棚
▲黄色、オレンジ、緑、青の本棚。眺めているだけでなんだか楽しくなってきます。

化学の本の横に世界史の本が置いてあるなど、一般的な並び方ではないのですが、その分自分が読まないジャンルの本に触れられるというよさもあります。分類ごとに並んでいる本の中で、カラフルでばらばらな本が見られるのは、この図書館ならではの面白さです。

エントランスの脇には「SP LIBRARY」というスカラーシップパートナー(SP)の企業さんから寄贈された本も。私の所属するSPである「富士通」は、社内の投票を通じて本を選んでくださったそうです。それぞれの企業の雰囲気が出ていて、眺めているだけでも楽しい本棚です。

富士通さんから寄贈していただいた本
▲富士通さんから寄贈していただいた本。昨年の入学式、今年の入学式と、少しずつ本を増やしてくださっています。

そして、図書館の魅力は本が借りられることだけではありません。毎日、放課後や夜に、図書館は学生で賑わっています。しかも、良識の範囲内で飲食もOK。給食を図書館で食べる学生もいます。

学生の過ごし方は本を読む、勉強をする、作業をする、友達と話す、ボードゲームをするなどさまざま。学生が寮エリアにいなければならない夜の時間以外は図書館を使えるため、常に誰かしらが図書館にいる状態です。とはいえ、10人も入れば狭く感じるような空間なので、人が多すぎないのも落ち着いて過ごせるポイントなのかもしれません。

2人部屋の1年生と2年生は、あえて他人の目がある環境で勉強に集中するために図書館に来ることも。私自身も、苦手な教科の勉強など1人ではなかなか進まなさそうな時は、図書館に行って課題をやっていました。

図書館に集まってゲームをする学生
▲図書館に集まってゲームをする学生。休日でも図書館に行けば誰かと会えるのが、図書館のいいところ。

私はこの春から1人部屋になり、部屋でも1人で集中できるようになったのですが、図書館に向かう機会はむしろ多くなった気がします。ただ何かをすることは自分の部屋でもできますが、それ以上に誰かと話したい。課題をやっているだけでも、誰かといれば、部屋に閉じこもっているのと違って予想もつかない化学反応が起きることがある。盛り上がりすぎて作業が全く進まないこともありますが、それ以上にとにかく楽しいです。

顔を寄せ合ってパソコンを見つめる学生
▲顔を寄せ合ってパソコンを見つめる学生。何かのビジネスについて話しているようでした。

図書館は友達との関係を深めてくれるだけでなく、新しい出会いの場でもあります。よく図書館で過ごしている学生に話を聞いてみたところ、今仲のいい友達とは図書館で話したことをきっかけに関係が深まった、と教えてくれました。

私も、4月に入ってすぐに図書館で本を読んでいたところ、近くでピアノを弾いていた1年生と「中学生のころ合唱部に所属していた」という共通点があることが分かって意気投合し、その後一緒に歌を歌うようになりました。他にもそんな経験をしている学生はたくさんいると思います。もしかしたら恋も(!)始まっているのかもしれません。

ボードゲームたち
▲図書館での時間をより楽しいものにしてくれるボードゲームたち。寮エリアから持ってきた麻雀をプレイしているのも見かけることがあります。

1学年40人程度と小規模な神山まるごと高専ですが、興味のある分野が違う人、ましてや寮エリアが違う異性ともなれば、なかなか顔を合わせることがありません。そんな中、図書館は学年や活動の枠組みを超えて、学生同士が繋がっていける場所だと思うし、だからこそ私は図書館が大好きです。

この場所を通して、また新たなコトや出会いが生まれていったらいいし、そのきっかけをもっともっと積極的に作っていけたらいいなと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!