「神山まるごと高専」学生まるごと日記2026【第3回】神山まるごと高専生のAI活用事情

「神山まるごと高専」学生まるごと日記2026【第3回】神山まるごと高専生のAI活用事情
2023年4月、徳島県の山あいにある町、神山町に開校した「神山まるごと高専」。全国で20年ぶりに新設された、全寮制の高校専門学校として全国から注目を集めています。“テクノロジーとデザイン、起業家精神”を学べるユニークな学校には、いったいどんな学生が集まり、どのような勉強や寮生活を送っているのでしょうか。

神山まるごと高専生自らがライターとなって日常を綴る、人気連載も2年目を迎えました! 今年度は月1回のペースでお届けします。ご期待ください!
梅原さん

【第3回】神山まるごと高専生のAI活用事情

書き手:梅原琉(3年生・北海道出身)


まるごと日記第3回は、新メンバーの梅原琉(うめはらりゅう)が担当します。最近は、”第4次AIブーム”と呼ばれる、幾度目かの社会現象が巻き起こっていますね。圧倒的な計算量の多さによって、一つのツールで様々なこと(翻訳、要約等)ができるようになったのが、その理由です。

そもそもAIとは、Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス 人工知能)の略。人間のように文章を読んだり、画像を認識したり、音声を聞き取ったりしながら、何らかの判断や提案を行うコンピュータの仕組みのことです。以前から、写真アプリの顔認識や、動画サイトのおすすめ表示などにもAIは使われてきました。

その中でも最近よく話題になるのが、文章や画像、音声などを作り出せる「生成AI」です。たとえば、「ChatGPT」や、Googleが提供する「Gemini」などがその代表例です。Geminiは、無料で沢山使うことができるため、若者を中心に利用が広がっています。この記事では、そうしたAIが神山まるごと高専の学生たちの日常の中で、どのように使われているのかを紹介します。

業務に励む学生
▲インターンの業務に励む学生。AIを用いて開発をすすめている。

まず特筆すべきは、ChatGPTのPlusアカウントが学生全員に無償で提供されていることでしょう。Plusアカウントでは、無料版と比べて利用制限が少なく、より高度なAIツールを活用できます。AIツールの使用が制限されている学校もあるなか、有料プランを無料で使える、というのは恵まれているとひしひし感じます。

校内では実際に、発展的なプログラミングの授業、課外活動のアイデア出しなど、様々な場面で利用されています。ヘビーユーザーの1人、中本怜祐(なかもとりょうすけ)さんのお話を聞いてみました。

複数のタブでAIを開く学生
▲AIの使用は欠かせないと語る中本さん。常に複数のタブでAIを開いています。

中本さんが主にAIを使っているのは、自身が作成しているサービスの要件定義やコーディング(コンピューターへの命令文の作成)の場面だそうです。作りたいものの方向性を整理したり、実装の進め方を相談したりする相手として、日常的に活用していると話してくれました。

また、単に作業を代行させるだけではなく、「普段の疑問を、一旦聞くような相手」としてもAIを使っているそうです。わからないことや思い出せないことが出てきたとき、検索エンジンで調べるのではなく、Geminiの音声でやり取りできる機能を使うことで、会話するような感覚で疑問を解消しているとのことでした。

ほかにも、映像クリエイターを目指している学生は、「After Effects(アフターエフェクト)」という映像編集アプリの、字幕の生成に使っているそうです。映像制作に限らず、クリエイティブな活動には、地道で時間のかかる作業がたくさんあります。もちろん、そうした作業の中で学べることもありますが、すべてを手作業で行う必要があるわけではありません。AIに任せられる部分は任せ、その分、人間が考えるべき部分に集中する。そうした役割分担が、少しずつ学生の制作活動の中にも入り込んでいるように感じました。

私個人のお気に入りの使い方としては、メモをパソコンの中に書き溜めていき、「AIエージェント(自律的にパソコンを操作できる権限が付与されたAI)」によって、メモ同士の関連を見出させる、ということです。これによって、忘れていた昔のメモとの関連性に気づくことができます。

パソコンで作業中の梅原さん
▲パソコンで作業をするわたし。AIツールを使い分けています。

私の場合は、「Obsidian(オブシディアン)」というメモアプリを使っていますが、必ずしも特別なアプリである必要はありません。WordやGoogleドキュメント、標準のメモアプリでも、文章として残っていれば、AIに読み込ませて整理したり、共通点を探してもらったりすることができます。

AIエージェントを使ったことがない方だと、なかなか使い始めること自体難しいかもしれませんが、使えるようになると数倍は便利になるためおすすめです。

ちなみに私自身は、ChatGPTとGeminiを場面によって使い分けています。AIをまだあまり使ったことがない方にとって、まず触れやすい入口は、この二つかもしれません。

学校から配布されているChatGPTのPlusアカウントを使えることもあり、私の場合、複雑な相談や大きめのタスクではChatGPTを使うことが多いです。たとえば、何かの仕組みを設計したり、文章の構成を考えたりするときには、考えを整理する相手としてChatGPTに相談しています。

一方で、軽めの調べものや、すぐに返事がほしい場面ではGeminiを使うこともあります。Geminiは反応が速く、検索する前の下調べのような感覚で使いやすいからです。まずは身近な疑問を投げかけてみるだけでも、AIがどう役に立つのかを感じやすいと思います。AIと聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、最初から特別な使い方をする必要はありません。ChatGPTやGeminiのような身近なツールから触れてみることが、AIとの付き合い方を考える最初の一歩になるのではないでしょうか。

Obsidian画面
▲筆者のメモのつながり。AIをつなげるのに用いている。

一方で、AIへの依存は深刻な問題です。真っ先に取り入れた学校である以上、真っ先にその問題が表面化することは避けられません。

実際、課題をAIを使って、そのまま提出しているような学生も少数ですがいます。もちろん、AIでできる作業はAIに任せればよい、という考え方もあります。しかし、考え方の土台を身につけるためには、あえて自分の手で試行錯誤する過程が必要な場面もあるはずです。たとえば、文章を自分で組み立ててみることや、プログラムのエラーに向き合うこと、調べた内容を自分の言葉で整理することなどです。そうした経験をすべてAIに任せてしまうと、AIを使いこなすために必要な判断力自体を得られません。

功罪あるAIツール。それでも、いち早く時代を歩める、というのは私たちにとって大きなアドバンテージになると思います。学外で学ぶことと、学校での使用が想定されながらやることでは、触れる時間が圧倒的に変わってきてしまうからです。

今まで、人のあたたかさや情熱のような、内面の部分にフォーカスしてきた本連載ですが、道具の使い方の面から触れられたことを喜ばしく思います。

これからもさまざまな切り口から神山まるごと高専、そして神山町に触れていきますので、どうぞよろしくお願いします!