老舗がつくる、阿波名物「御膳みそ」
伝統の味わいを現代風にアレンジ

老舗がつくる、阿波名物「御膳みそ」<br>伝統の味わいを現代風にアレンジ

藍の栽培と並んで発展した徳島の味噌産業

徳島県北部に位置する藍住町の閑静な住宅街に連なる白壁の倉庫。ほんのり甘く、懐かしい香りに誘われて奥に進むと大きな看板が見えてきます。ここは、1932年(昭和7年)からこの地で味噌づくりを行っている「かねこみそ」。創業者である田中庫太郎(くらたろう)さんから代々タスキを受け継ぎ、現代表の田中英太郎さんは四代目。当初、「かねこ」という屋号を名乗っていたことから「かねこみそ」と社名がつけられたといいます。

▲四代目代表の田中英太郎さん。曾祖父にあたる創業者・田中庫太郎さんの像と一緒に。

阿波の地で栄えたものといえば、藍。暴れ川である吉野川は氾濫するたびに栄養たっぷりの土壌を運び、吉野川の下流域では肥沃な土を活かして藍の栽培が盛んに行われていました。当時、その間作で育てられていたのが阿波白大豆。粒の大きい良質な大豆は味噌の原料にぴったり! やがて味噌づくりは盛んになり、藍と並ぶ徳島の特産品として広まっていったといわれています。

▲4階建てのかねこみそ本社。社屋の奥が味噌の製造現場となっています。

米、大豆、塩と原料がシンプルな分、作り方によって大きく味が変化してしまうのが味噌づくりの難しいところ。大豆の炊き具合、麹のでき具合、仕込んだ味噌の熟成具合……年間を通して何回も仕込みがあるため外気温に合わせて調整が必要です。麹の様子とにらめっこしながら、昔と変わらない味噌を作り続けています。
「味噌づくりは機械では測れない感覚に頼る仕事ですね。測れたとしても最後は感触や匂いで人が判断すると思います」と、現代表の田中さん。

▲原料の米に麹菌を振りかけて米麹を作っているところ。菌が米に根づくと塊になるので、それを手作業でほぐしています。

初心に立ち返って生まれた、新御膳みそ

徳島の郷土の味ともいえるのが、徳島藩主の蜂須賀家政公に親しまれた「御膳みそ」。米をふんだんに使用し、素材のうまみを引きだした甘口の味噌を指します。徳島県味噌工業協同組合の登録商標になっており、“御膳みそ”と名乗れるのは組合員事業者のみ。県内には、蔵それぞれのこだわりがつまった御膳みそが存在しています。

「かねこみそ」では2022年に創業90周年を迎えた際、従来の御膳みそをベースとした「甘熟(かんじゅく)みそ」を新たに開発。田中さんは開発時のことをこう振り返ります。

「90周年に向けて、かねこみその原点である御膳みそで新商品を作りたいとみんなで話し合っていました。生活習慣病に悩む方や健康志向の方が増えつつある今、機能性の高い発酵食品である味噌をもっと多くの人に食してもらいたい……そんな思いから現代の食卓に求められている減塩かつ、なるべく添加物を使わずに素材の甘みを存分に引きだした味噌を作ろうということになったんです。“甘熟みそ”という商品の名前から決まって、味噌の味や製法を形にしていきました」。

▲創業90周年記念に発売した「甘熟みそ」。古くからのお客さん、新しい世代のお客さん、幅広い世代から喜ばれる商品に。
▲パッケージの天面は、創業時使われていた「前かけ」をデザインに取り入れています。

目指したのは、従来の御膳みそよりもさらに米の甘みを際立たせた味わい。米の量を大豆の2倍にボリュームアップし、製法も工夫を凝らしました。40年以上味噌づくりに携わってきたベテランの職人たちでアイデアを出し合い、「高温二段熟成」という製法を編みだしたのです。通常、味噌を寝かせる際に一定の温度で熟成させるところを、二段階に分けるやり方です。

はじめに高温で寝かせて味噌の糖化を促し、甘みを引きだします。それから常温に戻し、再び熟成。3カ月以上寝かせると「甘熟みそ」ができあがります。初めて試した製法でしたが、「甘みにコクと旨味がしっかりと加わり、びっくりするぐらいピタッと味がハマった」と、田中さん自身も驚いてしまうほどスムーズに新商品が完成したといいます。

▲原料は米と大豆と塩のみ。米の比重が増えるほど味噌の甘さは濃密になります。七訂日本食品標準成分表の「淡色辛みそ」と比較すると塩分は25%カット。

米麹の力が生きる昔ながらの甘酒

1999年、三代目であり現会長の田中一郎さんが取り組んだのが、甘酒づくり。甘酒は一般的に米麹を糖化させる方法と、酒粕を溶かして砂糖を加える2種類の製法があります。「かねこみそ」では前者の方法を用い、味噌づくりで鍛えた米の発酵技術を活かして「あま酒」を誕生させました。口に含むと広がる柔らかな甘さ、ゴクゴク飲めるクリアな余韻。米と麹から引きだした自然な甘さが魅力です。

「商品を作るたびに甘み、苦み、香り、のどごし、コクを入念にチェックしています。麹の出来が甘酒の仕上がりを左右するので、味のバロメーターになる香りは特に気にします。麹の匂いはお米を蒸したときに近いんですが、蒸れすぎると湿った香りになって発酵臭が強くなってしまいます。そうならないように細かく確認しています」。

▲味噌にも甘酒にも欠かせない米麹。

市場では常温保存可能な濃縮タイプの甘酒が増えているなか、そのままのおいしさを味わってもらうために、あえて冷蔵保存が必要なストレートタイプを製造。アルコールゼロなので子どもから大人まで家族みんなで楽しめます。

▲ストレートタイプの「あま酒」1000ml。希釈の必要はなく、冷蔵庫から出してそのまま飲めます。

かねこみその商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
あま酒 1L 2本セット


地元に愛される味、広まるふるさとの味

現在、「かねこみそ」の商品は200種類にも及びます。ここで働く職人たちは味噌づくりを行う製造現場と、古くから「研究室」と呼んでいる場所を行き来し、思いついたアイデアを試しているそう。定番人気の「無添加御膳みそ」「無添加合わせみそ」や、麹をふんだんに使った「阿波伝承こうじみそ」などの味噌商品はもちろん、酒の肴にぴったりな“食べる味噌”である「にんにくみそ」「いりこみそ」、鍋の味つけに活用できる「とり鍋のみそ」など、毎日のおかず作りに重宝する“調理みそ”の開発に力を入れています。

▲バラエティ豊かな「かねこみそ」の商品の一部。

地元・藍住町の学校給食では「かねこみそ」の御膳みそが使われています。「近所の小学生が『かねこみそのCMソングを歌えるよ』と話しかけてきてくれます。地域に根づいた味噌屋さんになれているんだな……と実感できる嬉しい瞬間ですね」。

創業時から代々大切にしていることは美味しさへの追求。「受け継いできた味を守りながら、2032年に迎える100周年に向けてよりよい商品作りに一日一日励んでいきたい」と力を込める田中さん。これからも米、大豆、塩が持つうまみを紡いで、目覚めの一杯に欠かせないふるさとの味を追求し続けていきます。

▲味噌を立てるとき、湯気と共に舞いあがる芳醇な香りがたまらない。
▲「甘熟みそ」で作ったお味噌汁。味噌が持つまろやかな甘さとコクはどの具材にもマッチ。

かねこみそ
徳島県板野郡藍住町奥野字乾81-2
Tel.088-692-2611
https://kanekomiso.co.jp/



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甘熟みそ(650g×6個入り)

減塩・保存料無添加・生みその糀をたっぷり20割と多く使用した御膳みそ。高温で熟成して甘みを促したあと、常温でじっくり熟成させて旨みを引き出した甘口タイプのお味噌です。