[連載コラム][第4回]
今日は、どこから見てみましょうか。

[連載コラム][第4回] 今日は、どこから見てみましょうか。

自分の取扱説明書

初回の記事で自分探しの旅に出ていると書いた。

今回はそのことについて、面と向かって考えてみる回にしたい。

じゃあ何から始めたら良いだろうか?考えていると、ふとどこかで同じようなことを考えたことがあるなと思い出した。そう、それは父と母の葬儀の時だ。

私は24・25歳の時、両親を亡くしている。父が他界した1年後に母が他界した。立て続けに両親を「無くす」ことは、私を悲しませるよりも先に強くした。対処することが多すぎて、涙よりto doリストが必要だった。だから端々に覚えていないことも多い。そんな中で印象的だったのは、葬儀を準備する際に故人の好きだった色、場所、服、趣味など事細かに聞かれたり、書かされたりしたことだ。「お父様、お母様の好きだった食べ物はなんですか?」などから始まり、細かな質問が続く。その一連の作業は父と母を両親ではなく「個人」として捉えた場面でもあった。

私には年子の妹と弟がいるが、同じ環境で同じ時間を過ごしてきたはずの彼らと話し合うものの、皆が皆、違うことを言う。「母さんはステーキが一番好きだった」「いや、うまい棒の納豆味やろ」「めっちゃむずい」なんて具合だ。自分が出した答えも、自分がそうだと思っているだけで、果たして母が本当に好きなものだったのか、もう確認しようもない。

この経験から、もし私が死んだ時に、自分が好きなもの・ことを他人に理解されていないまま死んでしまうことは悲しいと感じた。私はピンクがあまり好きな色ではないのだけれど、「女の子だから」という理由で、もしピンクの花が飾られたら、私は正直(手向けてくれた人には感謝しつつも)苦い顔をしてしまいそうだ。そう友人に話したら、「じゃあ輝実の葬式はピンクのお花をいっぱいに飾ってあげるね」と言う。よほど私のことが嫌いなのだろう(笑)。

父と母の葬儀の後、私は時折遺書を書いていた。遺書と聞くとゾッとするけれど、要は自分の「取扱説明書」である。価値観は変化していくものだから、取扱説明書は随時更新されなくてはならない。思い出した今、更新すべき時がきたかな。

自分探しの第一歩は好き嫌いを表す素朴な問いへの回答から始めてみようと思う。


プロフィール
東 輝実 / Cafe polestarオーナー

1988年徳島県上勝町生まれ。関西学院大学総合政策学部在学中よりルーマニアの環境NGOや東京での地域のアンテナショップ企画のインターンを経験。

2012年大学卒業後、上勝町へ戻り仲間とともに「合同会社RDND(アール・デ・ナイデ)」を起業。2013年「五感で上勝町を感じられる場所」をコンセプトに「カフェ・ポールスター」をオープン。その後はカフェを拠点として「上勝的な暮らし」の発掘、情報発信、各種プログラムの開発などに取り組んでいる。2015年、男児を出産し1児の母。