[連載コラム][第19回]
今日は、どこから見てみましょうか。

[連載コラム][第19回] 今日は、どこから見てみましょうか。

メリークリスマス! & よいお年を。


 なぜこんなにも、“コージーな(居心地が良い)”気持ちになるのだろう。薪ストーブに火を入れ、室内にいることが増えたから? 4年に一度のW杯で、友人たちと夜な夜な家で試合を観戦しているから?
 いや、これはクリスマスがやってくるからだ。


 手の込んだ料理を作ったり、キャンドルを焚いたり、古いジャズなんかも聴きたくなる。なんとも典型的な欧米的クリスマスへの憧れで、自分でも苦笑してしまうが、この時期だけはそんな特別な雰囲気に浸りたくなる。


 ラジオから流れるクリスマスソング。待ち望んでいた年末セール。ショッピングモールの大きなクリスマスツリー。豪華なお節が掲載されたチラシ。緑と赤、そしてイルミネーションで彩られる街。紅白歌合戦の歌手リストの発表。長靴型の容器に詰められた、溢れんばかりのお菓子の隣には、お正月飾りのしめ縄が大小さまざまなサイズで売られている。


 「クリスマス」と「お正月」。この二つのビッグイベントが混在している様子を、私は毎年とても不思議な気持ちで眺めている。欧米的カルチャーを感じながら、同時に日本の伝統行事の準備をするという、いかにも日本的なミックス。実に興味深い風景だ。


 ビジネスパートナーであり友人でもあるリンダやカナたちのクリスマスにかける想いは強い。以前に紹介した「サンクスギビング」(https://lacycle-mall.jp/magazine/serialization/3378/)と同じくらい、気合が入っている。このコラム記事を書いている私の後ろの席では、「もうすぐクリスマスよ!」「あー楽しみ!」というような、テンションの高い会話が繰り広げられている。

左からカナ、シル、リンダ、ミナ。

 昨年から、上勝町での子育て支援活動グループ「あえるば上勝」が、地域の子どもたちを集めてクリスマス会を開催している。リンダとカナ、そして新しく私たちのメンバーに加わったベルギー人のシルと、カナの妹でカナダからやってきたミナの4人が、「あえるば上勝」からオーダーを受け、英語で楽しむクリスマス会を企画し、カフェで実施している。

今年の子どもたちのクリスマス会。ミニサンタがたくさん!

 地元の工房に依頼して作ってもらった、木製のオーナメントが今年は用意されていた。木目の美しいオーナメントに、子どもたちが好きな絵を描いてツリーに飾る。その後はみんなで『ジングルベル』などを英語で歌い、サンタから手作りのクッキーとホットチョコレートを受け取って、みんなで一緒に食べる。


 幼い頃、地元のお母さんグループが、クリスマスケーキを作る会を開いていたことを思い出す。思い思いに果物をトッピングするのが、とても楽しかった。そんな私の記憶のように、子どもたちの特別な思い出になってくれたら嬉しい。この時期だけのイベントやコスチューム、食べ物などが、冒頭の“コージーさ”を醸成するためには必要なのだと思う。


 独特なミックスの中、私の気持ちは年末の献立リストを考えることに向いている。年末年始は、夫の実家がある大阪で過ごしているのだが、ここ数年、大晦日はお義母さんが用意してくれているお寿司や鍋ものなどの料理に加えて、私も料理をするようになった。家族からのリクエストはローストビーフ。あまり作った経験がないので不安だ。温かいポトフも作りたい。どうせなら、ナイフとフォークで食べたいな。でもなんだかこの組み合わせ、クリスマスディナーっぽくないか? そんなツッコミを自分で入れつつ、家族が集まり、食卓を囲めばお正月なのだと言いながら、作りたいものを作ろうと思う。

息子とクリスマス会にて。2022年もありがとうございました。

 大晦日にすき焼きを食べるのは、限られた地域だけだとSNSで話題になっていたが、きっと私が知らないだけで、クリスマスもお正月も多種多様な過ごし方があるのだろう。皆さんにとって、良い時間を過ごしてほしい。


 メリークリスマス! そして良いお年を。来年も良い年になりますように。



プロフィール
東 輝実 / Cafe polestarオーナー

1988年徳島県上勝町生まれ。関西学院大学総合政策学部在学中よりルーマニアの環境NGOや東京での地域のアンテナショップ企画のインターンを経験。

2012年大学卒業後、上勝町へ戻り仲間とともに「合同会社RDND(アール・デ・ナイデ)」を起業。2013年「五感で上勝町を感じられる場所」をコンセプトに「カフェ・ポールスター」をオープン。その後はカフェを拠点として「上勝的な暮らし」の発掘、情報発信、各種プログラムの開発などに取り組んでいる。2015年、男児を出産し1児の母。