目次 “ご褒美卵”はコレ! 健康な鶏から産まれる健康な卵 菌の力に出会って薬剤いらず 鶏卵からお惣菜までまるごとおすすめ “フン”から生まれ…
すだち産業発祥の地で若手が挑む
お盆を過ぎた頃から徳島県民の食卓を彩りはじめる、あおあおとしたすだち。さわやかな香りとキリッとした酸味が特徴のすだちは徳島県原産の香酸柑橘(こうさんかんきつ)で、言わずもがな徳島を代表する名産品です。
徳島の郊外には畑の脇に1、2本ほどのすだちの木を持つ家も多く、旬の時期には家庭で使いきれないほどのすだちが採れます。そのため、親族や近所の人から“お裾分け”としていただくこともしばしば。すだちに“高級品”というイメージを持つ都市部の方にとっては驚くような話かもしれません。

「じつは、すだちの商業生産は1956年からはじまりました。もともと各家の庭先に自生していたすだちに着目した神山町の“鬼籠野(おろの)地区果樹研究同志会”の方々が、栽培技術や冷蔵・貯蔵技術を確立させ、すだちの産業化を本格的に始動させたんです」
教えてくれたのは「里山みらい」代表の永野裕介さん。
2015年に当時の地域おこし協力隊のメンバーを中心に設立した里山みらいは、ここ“すだち営利栽培発祥の地”である神山町鬼籠野地区を拠点に活動するNPO法人です。

すだちの生産・販売を行う農業従事者でありながら、三者協定を締結した神山町・JA徳島県と連携して、次世代すだち農家の育成や、東京高円寺阿波おどりでの出店をはじめとする都市部などでのPR活動など、すだち産業発展のために幅広く活動。その名が示すとおり、「里山を未来へ繋ぐ」ことが里山みらいのミッションだと話します。
耕作放棄地を有機すだちの園地へ
「町内に、すだちの黄色い実が成っている園地が増えているんです。『この園地をどうにかできないか』と声が掛かることも多くなってきました」と永野さん。
“黄色い実”とは、旬が過ぎて熟した実のこと。高齢化や担い手不足などにより収穫の人手が行き届かず、放置せざるを得ない状況なのです。
日本一のすだちの生産地でありながら人口約4500人の山あいのまち、神山町では、高齢化や人口流出などの課題を抱えており、すだち農家も年々減少しています。

そこで、「できる限り地域の耕作放棄地を借り受けたい」と園地を広げてきた里山みらいの自社農園は、現在、9反ほど。鶏糞を発酵させた有機肥料や鳴門わかめの根を発酵培養させた液体肥料などを取り入れた有機すだちの園地へと再生させました。

農場長の佐藤強志さんと共に作業をするのは、新規就農を目指し研修中という香川県出身の高木康史さん。町が行う新規就農支援事業の研修生の受け入れを行っている里山みらいでは、これまで6名の研修生を輩出しました。
「生産者として自立するための実践的な技術指導や支援だけでなく、この町の一員として地域の生活や環境に馴染んでもらうことも重要。そのためのサポートも行っています」と佐藤さん。

里山みらいは、すだちを“つくって売る”だけではありません。地域の園地を受け継ぎ、担い手を育てる、そんな次世代への“架け橋”的な存在となっています。
“全方よし”の仕組みをつくる
目指すのは「生産者も、買い手も、町も、企業も、すだちに関わるすべての人たちが豊かになる、三方良しならぬ“全方良し”」と永野さんは話します。
そこで、2025年から開始したのが「企業・飲食店版すだちワーキングホリデー」。もっとも農家が人手を必要とする収穫時期に全国の企業・飲食店から参加団体を募り、収穫や里山での交流を行う体験プログラムです。すだち農家にとっては収穫の人手不足を補えるうえに、参加団体にとってはチームづくりや新人研修などに役立つという、相互利益を生む新しい取り組みです。

その援農拠点にもなる「里山ビルヂング」が2026年夏に完成。収穫アルバイトや研修生が住み込みで利用できる宿泊設備を備えた施設です。コワーキングスペースもあるため、仕事をしながらワーキングホリデーへ参加することがより一層容易になりました。

また、「企業版ふるさと納税」を活用し、新規就農をするうえで負担となる苗木代をゼロにする「すだちリファームプロジェクト」も立ち上げました。

「現在(2026年9月)、有機加工の環境整備も進めています。日本の柑橘や有機商品に関心の高い海外で有機すだちの販売がうまくいけば、自分たちがモデルケースとなって、町の産業の継続と発展に役立てられるかもしれません」
“里山を未来へ繋ぐ”ための仕組みづくりが着々と進んでいます。
規格外B玉すだちがメイン商品
そんな里山みらいで生産している有機すだちのほとんどが“B玉すだち”と呼ばれるもの。収穫時にすだちのトゲでひっかけてできた傷などがありますが、香りや味は料亭などで使われるA品すだちとまったく変わりがありません。



また、7軒の契約農家からB玉すだちや加工用すだちを市場より少しでも高くなるよう買い取っているそうです。


里山みらいのすだちは全国の飲食店からの受注対応が中心。個人には「ラシクルモール」や「神山すだち農家組合」のオンラインストアのみで販売しています。
全国に広がる“神山すだちの輪”
すだちの使い方と言えば、焼き魚や刺身、冷奴にギュッと搾って楽しむのが定番ですが、他にもいろんな楽しみ方があるのを知っていますか?
“シェフとすだち農家の美味しい出会い”をコンセプトに、毎年、旬の時期に企画される「すだち遍路」は、全国の飲食店約200店舗が参加。ジェラードなどのスイーツをはじめ、ラーメン、パスタ、エスニック料理など、シェフが趣向を凝らした多種多様なすだちの創作メニューを全国各地で味わうことができます。

「すだちになじみがない県外の方々にすだちの美味しさや魅力に触れてもらいたい」と永野さん。
ハッシュタグ(#神山すだち) を付けて、すだちを使った料理をインスタグラムに投稿してもらうキャンペーン企画「KAMIYAMA SUDACHI AWARDS」では、唐揚げに、寿司に、うどんに、そうめんに……と、SNS上でさまざまなすだちの楽しみ方を知ることができます。眺めているだけでも楽しく、すだちの使い方も広がりそう!
ちなみに、ビールにすだちを搾った“すだちビール”も人気ですが、永野さんは黒糖焼酎にすだちを搾って炭酸水で割った“すだちサワー”を飲むのが日課だそうです。

手軽にすだち果汁を楽しみたい方におすすめなのが、規格外の有機すだちを搾った果汁100%の「“生”搾りすだち果汁」。一年中、すだちのさわやかな風味を料理に加えることができます。

このすだち果汁でつくる“すだちシロップ”のつくり方を料理好きの永野さんが教えてくれました。
1.消毒した保存ビンにすだち果汁と砂糖(てんさい糖など)を1対1の割合で入れてかき混ぜる。
2.常温で2、3日置いて、砂糖が溶けていれば出来上がり。
炭酸水で割って飲むだけでも十分美味しいですが、永野さんイチオシの抹茶すだちソーダもぜひお試しを。すだちシロップと抹茶パウダー(または緑茶パウダー)をよく混ぜ、炭酸水を注いで完成。さっぱりとした酸味にほのかな苦味が加わったさわやかでちょっと大人な炭酸ドリンクです。

これまですだちになじみがなかった方も、ぜひすだちを楽しんでみませんか?
神山すだちが全国の食卓にすだちが広がっていくこと。それが、美しい里山を未来へとつないでいきます。
里山みらい
徳島県名西郡神山町鬼籠野字東分3-1
TEL 088-676-0310
https://satoyama-mirai.jp

里山みらいの商品は、Lacycle mallでお買い求めになれます。
栽培期間中、化学肥料や除草剤を使用せずに育てた、露地栽培の有機JAS認定神山すだちです。収穫時にすだちのトゲでひっかいてできた傷、ハサミ傷、虫食いなどで見た目にちょっとした個性があります。
|




